見出し画像

#猫と暮らした数日間

「猫と過ごした数日間」

この数日間をことばにする為に
noteと睨めっこをしながらああでもない、こうでもないと書いては消してを繰り返しているうちに

今日という日が来てしまった。

だから今日は、いちど白紙にして、取り止めのないままに書き始めようと思う。


「猫と暮らした数日間」

わたしは


猫が苦手だった。


小学生の頃、友達の家の猫に引っ掻かれたことがある。

漁港で魚を見ようと手をついた場所が、猫のおしっこスポットで
一日中臭い手で半べそをかいたトラウマがある。

親世代から農家の野良猫被害の話を耳が痛くなるほど聞いたことがある。

うんこを踏んだことが何度もある。新品の靴の時も踏んだ。滑って転んだこともある。(いや何回踏んでるんだよって話。)


そうだ、わたしは猫が
苦手だったんだ。

そんな私の前に
君が初めて現れたのは、
確か1カ月くらい前だったかな。

季節は変わり目、秋から冬に変わるにおいがし始めた頃だったね。
君は、近所の空き地の農具の下に
兄弟7匹くらいで移動をしていたのを見た。

「うわぁ、この辺こんなに沢山野良猫いるんだ、、」

その時は何もしてあげられなかったんだよね。

空き地で見つけた子猫達、1枚目の手前がハリー


それから数日たったあの日、気持ちの良い秋晴れのあの日

君達はうちの庭で、3匹の兄弟で身を寄せ合って日向ぼっこをしていたね。

庭で身を寄せ合う兄弟



まるで自分達の家かのように、のんびり眠っている姿にびっくりしたんだよ、
猫って、わたしの中での猫ってさ、
近づいたらピュンってすぐに逃げちゃうイメージだったから。

カメラ引っ張り出して来た


「にゃあ、にゃあ」ってお話しをしながら
私の肩や足に乗ってきて眠る君達を見ていたらすぐにわかったよ、

「ああ、きっとこの子達は人間に触れたことがある、
愛情を注いでもらった記憶があるんだ」と

どうしてずっと外にいるのかな、他の兄弟はどこに行ったのかな、お母さんはどこにいるのかな。

もうすぐ日が暮れる、夜は寒いけれど
この子達が眠る場所はあるのかな、
どこからきて、
どんな生活をしてきたのかな、

何一つわからない。

すぐに区長さんや役所などに確認をしたけれど、
この近くでこの子達の所有者はいなかった。

だけれどうちは借家、一応家の中は"大きい動物禁止"

(あ、そうそう、
コーギーの小麦は実家に住んでいるんです。)

どうしてあげることも出来なくて
急遽、軒下に段ボールを置いて、
暖かい毛布と
家にあったありったけのふわふわした物
(私のストールとか)を敷き詰めて
お水を置いといたんだよね。

今思えば、あの時3匹とも家の中に入れてあげたらよかったな、って本当に今でも悔やまれるよ。


翌朝、窓を開けたら
冬の始まりの朝で
とてつもなく冷え切っていて
「どうしよう」と早朝から顔面蒼白になったことを覚えてる。

恐る恐る 軒下の段ボールを覗き込んでみたら

その中でキュッと身を寄せ合っている兄弟がいたんだ。

わたしは、

「ああよかった、使ってくれてる」
という自己肯定と、
「生きててよかった」という安心感と、
「まさかこの場所から動かなかったとは」という不安が
ごちゃごちゃになっていた。

そして、この日は朝から仕事。この子達を見てあげることが出来ない。

「いい、君達。わたしは今からお仕事に出かけてくるから、この暖かい箱の中にいるんだよ。
危ないところには出ちゃダメだよ。いい?」

猫にそんなこと言って聞かせたって
わかるわけが無いのに、
念を押して出かけたその日の1日は、本当に生きた心地がしなかったよ。

それでね、
いつもやるべきことを全て明日に回して
猛ダッシュして帰路についたわたしは
段ボールの中を覗き込んで絶望したんだ。




「猫がいない、、、、」

当たり前だ。
何を期待してたんだ。

野良猫なんだから、自由に生きているんだからどこかに行ってしまうでしょ。

それでも不安で、近所中を歩いて探し回ってみたけど姿はなかった。

人間ってのは悪い方に悪い方に考えがちなもので、
勝手にわたしは
「車に轢かれたらどうしよう」
「変なやつに捕まえられてたらどうしよう」
「猫嫌いの多い田舎だから、叩かれたり、、もっと酷いことをされたりしてたらどうしよう」

「助けられなかった」

こんなことをぐるぐる考えて
ものすごい喪失感と悔しさで
一日中泣いてたよね。

きっといい人に見つけてもらったんだ、

そうやって仕方ないと割り切るには、自分が出来てないことが多すぎて
泣きながら、保護猫の動画を見漁っていたその日の深夜。

動画内の猫の鳴き声の間に、微かに違う鳴き声が交じる。

動画「にゃー!」
「......ンニャー」
動画「にゃー!」
「.......ニャーオン」
動画「んにゃー!」
「ニャオーン」


!!!

外だ!!!!
これ、動画じゃない!
外から聞こえる!!!

微かな呼ぶ声に気づいて急いでガレージのほうの窓を開けると

小さな声で
「ここを開けて欲しい、入れてくれ」
と鳴く小さな子猫が1匹。

驚いた。餌付けとかはしちゃいけない、と思ってしていなかったのに、
この子はわざわざ、うちを選んでやって来た。これは放っておくわけにはいかない。
ここまで来たらきっと運命だ、

3匹のうちの2匹の行方はわからなかったが、どうかその2匹も無事であってくれと願いながら

そうして
里親が決まるまで保護することになった。

それが、
今日まで数日間一緒に過ごした
このキジトラ柄の男の子だった。
後に「ハリー」という立派な名前をつけてもらう、生後4か月くらいの小さな男の子。

よく眠る子、キジトラ柄の男の子



とはいえ
ここから今日までの数日間は本当にてんてこ舞いで、
猫の子供の育て方なんてわからなすぎて、
ましてや子猫だから甘えたくて甘えたくて鳴くわ飛ぶわ、爪をたてるわ。
元々予定していたことも全てキャンセルして、
猫を育てる為に、猫の手も借りたいくらいの日々だった。

保護猫のことや町の制度を知りたくて役所にも通ったし、病院に連れて行ったり、
保護猫の活動をされている方のもとを訪ねたりなんかもした。

わかったことといえば。
この子はとーっても甘え子だということ、
人の膝の上が大好きだということ、
お腹が太陽のにおいがするということ。


天気が良い日に日向に出すと、漫画みたいにコロコロ転がって、のびをして眠るところとか
ネズミの形のおもちゃを嘘みたいに喜んだりとかするシーンは
「すごい、猫って猫だなあ」等の小泉構文が炸裂したりなどした。

顔がイケメンなんですよね、ええ



今回、この子をきっかけに
沢山のことを学んで、現実を知った。

この町だけでも、年間でどれだけの猫が事故に遭い命を落としているのかや

山間部や町のどこかに、わざわざ捨てにくる人がいること

担当の方が知ってる範囲でも多頭飼育崩壊寸前の家がいくつもあるということ、
その中で保護猫や地域猫に出来る取り組みが、なかなか出来ていないこと

まだまだ地域猫への周知や理解がされていないこと。
地域猫の去勢手術への補助金はあるけれど、ほんの僅かで
まだまだ、個人で活動している人も少ない現実。

友人の紹介で
今まで沢山の猫の保護活動をされて来た方にお会いして話を聞いた時には
話をしていて涙がとまらず、帰り道に立ち寄ったコンビニで
レジをしてくれたお姉さんにそっと

「よかったら、どうぞ使ってやってください。」
とポケットティッシュを渡されるほど
目を腫らしてしまったりしたぐらいだ。

(ちなみに、コンビニのお姉さんのさりげないお気遣いに感動して倍ほど泣いてティッシュを秒で使い切ったことは言うまでもない)

よっぽど酷い顔をしていたのかもしれない



冒頭でも話したように、私が住む地域のみならず
田舎の地域っていうのは昔からの農家が多く、田畑や庭を荒らしたり、糞尿の被害などで猫を毛嫌いしているご年配の方も多い。

その為、猫がいたら脅して追い払ったり
酷い時は手を出したり、最悪の場合
処分しようとする人もいる。

少しずつ理解のある世の中に変わりつつあるとはいえ、まだまだ無くならないのが現実。

大切に育てて手をかけて来たものが一瞬にしてやられるのは悲しいし、
対策をしていてもまたやってくることへの辛さは、農家の娘なのでとてもよく分かる。

ただ、罪なのはその猫ではなく
その子をそうせざるを得ない生き方にさせてしまっている元飼い主、もとい人間の責任であると
常に私は思っている。

だからどうか、無闇に猫を叩かないで。

わたしは、まずは自分の住む地域だけでも、少しずつ変えていける立場になれたらと考えている。
この活動はこれからも続けていきたいし、
今度はちゃんと迎え入れる為に、家も引越しを視野に入れている。

この、ちいさな小さな手



さて、色々と話してきたけれど
そろそろさよならの時間が近づいて来た。

なんだかんだ言って、この話しを書き上げるのには数日かかって
まもなくお別れをするこの時になってしまった。

実はあれから、
探す間もなくこの子の里親さんが決まった。

ミリーちゃんっていう、美人な先輩猫のお姉さんがいるおうち。

運命だなあと思うところが
私がその方のインスタグラムに猫の動画が投稿された時、
「可愛いですねぇ、猫とは縁がない人生だけれど、こんなんいたら仕事休むなぁ」

なーーんてことを話した翌日に、我が家に猫が訪れた、ということ。
(仕事は休まなかった✌️)

これから家族になる人と、たくさん話した。

猫のことをすごく考えてくれて、
保護しているあいだにも沢山気にかけて会いに来てくれて。
この子に「ハリー」という名前をくれた、ミリーちゃんに似てとても美人な優しいお姉さんだ。
お仕事の合間にもずっとやり取りをしてくれた。ハリーは幸せもんだ。

また、
今回の保護を知らせた時には
沢山の方が連絡をくれた。

遠く離れた東京から、地元で保護猫の活動をしているご親戚を紹介してくれた子や、
近くで動物保護をしている団体を調べて連絡をしてくれた人、
猫を飼っている知り合いに聞いてみようか、と言ってくれた人、
猫は元気か?大丈夫か?と気にかけて声をかけ続けて来てくれた人。

気づいたらこんなにも、周りには優しい人達がいるんだと知らされた。
縁は繋がるもんなんだな、とつくづく思う。

本当に本当に皆様、ありがとうございました。

-----------

最後に、子猫へ。

君は、最初に出会った頃は兄弟の中では一番臆病で
私に寄ってくるのも
兄弟2人が寄ってきたのを見てからだったし、
木登りだって、兄弟2人が勢いよく登って行った後、僕も僕も!って1人で登って、降りれなくなって鳴いていたよね。

登って後悔している猫


そんな君が、たった1人でうちを訪ねて来たのにはとても驚いたんだよ。
鳴き声の正体を知った時、君だったのか!って思った。意外だったからさ。

私を信頼して訪ねて来てくれて、ありがとうね。


頑なにゲージで寝てくれなくって、寝る時は常に人の隣にいた君、
大人になったらそうはいかないから、自分のベッドで眠る練習をしようね。

でも、お姉さんはきっと一緒に寝てくれるから、
時々は甘えていいからね。

あと!爪研ぎはちゃんと爪研ぎですること!
冷蔵庫の上や神棚には登らないこと!
人の足で遊ばないこと!


あとは、、、


この先もずっと!
元気いっぱいで生きること!!!!!!!!
たーくさんの愛情を受けて暮らすこと!!!



私からは以上!!


数日間だったけど、あなたと一緒に過ごすことが出来て楽しかったよ。
来てくれてありがとう。また会おうね。



-----------------

わたしは
猫が苦手だった。


沢山泣かせてくるから。

数日で足が切り傷だらけになったから。

お仕事をしようとすると真上に乗って妨害してくるから。

だけど

本当に可愛くて、可愛くて可愛くて愛おしくて
こんなに可愛い生き物っているんだな、って思った、
小さな体で精一杯に鳴いて生きる猫を見て
笑っているわたしは、
そのわたし自身が好きだ。

猫を保護して変わったのは猫の未来だけじゃなくて、わたし自身もだ。


だから、わたしは猫が苦手だけど
ちょっと好きになったよ。
いや、大好きだ。


このこと、教えてくれてありがとね。
じゃあね。



全ての猫に幸あれ。

伸びた猫よりTシャツを突っ込まれた写真
いたずらだいすき


2022.11.15

この記事が参加している募集

#猫のいるしあわせ

22,438件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?