彩をひとさし
最近いただいた梅の花が可愛くてたまらない。
観葉植物(エアプランツ3つ)しか置かないつもりだったので、急遽使用していないシャンパングラスに水を入れ、生けてみた。吸い上げを良くしようと根元の方の枝を普通のハサミでカットしようとしたら、想像以上に硬く、その日は断念し翌日家から植物用のカットバサミを持ってきてカットした。
サロン内は昼でも夜のように暗いので、なるべく光が当たるように置く場所を選んだ。
最初は蕾だけだったのが、毎日、ぽわ…ぽわ…と開いていく。
可愛い。嬉しい。今日もまた開いた。明日はこっちが開くかな。
ロボットもどきの私にも、一応人間の血が通っているようだ。
「お店暗いし、色のついたお花でも飾ったら」
と渡され、“色のない空間”を良しとして貫いてきたけれど、すぐにこの梅がサロンにも私の凝り固まった思考にも馴染んだ。
梅の花言葉を調べたら「上品・高潔・忍耐・忠実」だった。
ピンク寄りの梅は「清らかさ」。
忍耐。まさに耐える時期だったのかもしれない。
清らかさ。確かに浄化が必要な気がする。
謎の体調不良が続き、考えることも生産的ではない方向に向かいがちで、困ったものだな…と途方にくれる日々が結構長く続いた。営業もままならず、しかし完全に休業するのも恐くて出来ず、中途半端な毎日に焦燥感を抱えてなんとかやり過ごしてきた。
そんな中、そんなどうしようもない私を、生き生きとした元の世界に連れ戻してくれるかのように、様々な形で、いろんな人や、ものや、環境が明るい未来への兆しを示していたことに、今更ながら気付き感謝する。
他愛のない会話や挨拶ができる人が程よい距離感にいること。
新しい仕事の依頼と引っ張っていってくれる人のいる安心感。
心配してくれる家族や友人がいること。
ごはんを食べて美味しいと思えること。
音楽を聴いて心が弾むこと。
春の花の香りを思い切り吸い込むこと。
砂が少し冷たくて気持ち良いこと。
心のライフライン、とでもいうのだろうか。
これだけでじゅうぶん新鮮で幸せな気分になれるのだ。
毎日、何かがちょっとずつ変わっていっている。
目まぐるしく画面が切り替わるテレビやSNSの情報よりも、梅の花が1日に1つずつ開いていくことに喜びを感じられることが自分を幸せにしてくれる。
相変わらず頑丈で健康な身体も持ち合わせている。
厳しい冬も生き抜いてこれたのだから、これからだってなんとかやっていけるのだ。
春が待ってくれている。
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