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【映画】ヘブンズ・ドア

概要

 アマゾンプライムでレンタルしてまでこの映画を見ようと思ったきっかけが何だったのかは忘れてしまったのだが、数週間前にウォッチリストに入れてあって、昨夜ふと思い出して鑑賞。
 HDで観る必要は感じなかったので通常画質で。

ヘブンズ・ドア

 基本的にはロードムービーで、ドイツ映画のリメイク作品らしい。

knockin' on heaven's door

 オリジナルは未視聴だが予告を見る限り、このリメイク版も近いストーリーにはなっているようだ。
 オリジナルはディランの「knockin' on heaven's door」からインスピレーションを受けて制作された作品らしく、やはり本作でもテーマとしては生きている。

Bob Dylan / knockin' on heaven's door

 この曲たしか、ディランも出演したビリーザキッドの映画で使われていた曲だと記憶しているし、たしかサントラに入っていたような気がする。
 ずいぶん古い映画だけど。

あらすじ

 長瀬智也演じる男の方は巨大な脳腫瘍を抱え、かなり緊急性が高い状態で薬で抑えなければ昏倒してしまう状況。
 対して福田麻由子の演じる少女は、幼い頃から宣告されている緩慢な死を不本意ながら受け入れて生きている。
 最初は反発し合いながらも、この二人が海まで旅をする中で心を寄せ合い、やがて惹かれ合うというシンプルなストーリーなのだが、旅の始まりが病院で盗んだ車、次はパトカー、そして危機を救ってくれたメキシコ料理屋のワゴン車と乗り継ぎながら海を目指す。
 途中で数件の強盗事件を起こしたりして警察にも追われるのだが、一番厄介なのは最初に盗んだ車の持ち主である闇企業?のトップと思わしき人物で、車内に残されていた拳銃と大金を車ごと盗んでしまったことから、こちらにも追われることになる。

感想

 ある意味、こうしてやむを得ず死を受け入れなければならない人々がやけっぱちになってしまった時に、もしかしたらこんなふるまいをするのではないか?という想像が膨らむ。
 もちろん現実的にこんな乱暴な事をする人たちというのは殆どいないのだけれど、基本的に死を避けられないとすれば、最後にしたいことをする、そのためには法を犯すかもしれないし、暴力に訴えることも厭わないという心情は理解できるように思う。だってもう未来はないのだから、法の裁きを受ける頃にはもう生きていないのだから。

 映像的にはすごくスタイリッシュで、あまり泥臭さはないし、難病モノにありがちなジメジメした空気もない。とにかく海に向かう旅に主眼を置いて、しかし、彼らが最終的に到達しなければならないのは「死」という現実であるということからも逃げない視点を持っている。

 かなり大きく年の離れたこのカップルの旅は逃避行でありながら、残り少ない人生を生き切るための目標にもなっている。
 内容もテーマも全く違う映画では有るのだが、どこかに「レオン」の雰囲気を私は感じた。

主題歌

 大きなアレンジを加えられてはいたが、ラストシーンからエンドロールに流れるアンジェラ・アキの歌う「knockin' on heaven's door」も良かった。

アンジェラ・アキ/knockin' on heaven's door

 このシンプルな楽曲をカバーする人はすごく多いし、わりとどんなアレンジをしても、誰が歌ってもそれぞれに成立してしまう。歌詞も「死」という絶対普遍の題材をテーマにしていて、重要なのはその一点であるからこそ、どんな言語でも、どれほど拡大解釈した意訳であったとしても、そこに「Knock,knock,knockin' on heaven's door...」という歌詞が残されていれば、この曲の言わんとする事は全て繋がってしまうのだ。

 ディランが歌ってこそ生きるという曲ではなく、誰が歌っても、あたかもその人の曲で有るかのように聴こえる。
 しかし、だからこそ。
 こういう曲こそが名曲というのだろうと私は思っている。

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