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万画一探偵シリーズ

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迷探偵 万画一道寸が活躍するコメディミステリー作品
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#ミステリー小説が好き

八ツ橋村 全文

八ツ橋村 全文

【辰也】
 Y県M村からひと山越えた辺りに、通称『八ツ橋村』と呼ばれる村があった。大きさは東京ドーム36個分と聞いていたが、私にはどう見ても両国国技館48個分位にしか思えなかった。
 私は普段、東京都六丈島という大都会に住んでいるので、こんな田舎を訪ねるのは随分と久しぶりの事であった。
「えー、コンビニもないのかよ」
私がその村に一歩足を踏み入れた時の第一声がそれであった。

 今回私がこの村にや

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八ツ橋村 6/6

八ツ橋村 6/6

【解決編】
 ホームスの働きもあり、幸にして原賀減太と飯尾来栖は一命を取り留めた。
 そして、その翌日の晩、再び原賀家の広間に事件関係者達が集められた。
 広間に顔を揃えたのは、原賀減太、原賀辰也、屋良世手代、飯尾九央、飯尾久枝、飯尾来栖、薮医師、口部田弁護士、そして、万画一道寸の9名、勿論この中に犯人がいる。

 病み上がりのうえ、ヘルニアを抱える減太は奥に布団を敷いて横たわった状態。来栖は両親

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八ツ橋村 5/6

八ツ橋村 5/6

【万画一】
 さて、時間を少し巻き戻すとしよう。
 小泥木警部と万画一探偵は飯尾家のリビングに腰を据えて、飯尾九央が受け取ったという怪文書を前にして腕組みしていた。
「しかし、一体だれが、こんな……」
 警部は今日何度目かの同じ言葉を繰り返した。
「九央さん、ここに書かれている事は本当ですか?」
「いや、滅相もない、万画一さん、そんな事言わんで下さいよ。根も歯もない出鱈目です」
 怪文書は次の様に

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八ツ橋村 4/6

八ツ橋村 4/6

【万画一】
 さてさて、ここで再び、カメラは万画一探偵に切り替えて話を進めて参りましょう。
 原賀家の一室を借りて捜査本部が置かれ、事件の状況を細密に改められ、葡萄酒に毒物を仕込んだ可能性のある者のリストを作成した。
 しかし、それは厳密に考えると、昨夜、あの部屋、または調理場にいた全ての人間に可能性があると言わざるを得ない。しかも、外部の犯行であっても不思議ではない。それほど、多勢の人が行き来し

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八ツ橋村 3/6

八ツ橋村 3/6

【辰也】
 さて、ここで再び、私、辰也が語り手を引き継ぐことにしよう。
 八ツ橋村にやって来てそうそう大変な事ばかりが起きている。
 相続分だけ貰ってちゃっちゃと六丈島へ帰ろうと思っていたのに、双子の兄がとんでもないデブでヘルニアで死にそうだからと、いきなり当主にされてしまった。
 ただちょっと屋良世手代というお姉さんは色っぽいので、ここにいる間になんとかならないかなとは思っている。ちよっとやらせ

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八ツ橋村 2/6

八ツ橋村 2/6

 さてさて、このままこの調子で書いていると万画一探偵の出番が無くなってしまいそうなので、ここらでカメラを万画一探偵側に切り替えてお伝えしたいと思いまーす。

【万画一】
 万画一道寸が相棒の白猫ホームスと共に八ツ橋村を訪れたのは、口部田弁護士からの依頼である。
 依頼内容は八ツ橋村で起こる原賀家の遺産相続を巡る連続殺人事件を解決し、辰也の身柄を無事に六丈島に送り返す事とされていた。
「なあ、ホーム

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八ツ橋村 1/6

八ツ橋村 1/6

【辰也】
 Y県M村からひと山越えた辺りに、通称『八ツ橋村』と呼ばれる村があった。大きさは東京ドーム36個分と聞いていたが、私にはどう見ても両国国技館48個分位にしか思えなかった。
 私は普段、東京都六丈島という大都会に住んでいるので、こんな田舎を訪ねるのは随分と久しぶりの事であった。
「えー、コンビニもないのかよ」
私がその村に一歩足を踏み入れた時の第一声がそれであった。

 今回私がこの村にや

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