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老若男女に必要な家事能力【有賀薫著:帰り遅くてもこんなスープなら作れそう】【佐光紀子著:「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす】

有賀薫さんのnoteや書籍(帰り遅くてもこんなスープなら作れそう)、積ん読になっていた佐光紀子さんの「『家事のしすぎ」が日本を滅ぼす」を読んで思ったこと。

これからの日本人に必要な「家事能力」のナンバーワンは、料理でも洗濯でも掃除でもなく、「献立を立てる能力」なのではないかな。

ひと昔前(肌感覚としては15年以上前くらい)は、冷凍食品やコンビニごはん、スーパーなどで買うお惣菜は、あまりおいしくないし、塩分や脂質や添加物が気になるし、割高だし、それでも買っちゃうのは「主婦の手抜き」というイメージだったのではないだろうか。

でも、最近は全然そんなことない。

下手な飲食店よりおいしい冷凍ハンバーク、天候に左右されない値段設定がうれしい冷凍野菜たち、糖質や脂質の制限がある人でも食べられるレトルト食品はもはや珍しくない。コンビニのお弁当やサラダだって、作られてから半日以上過ぎたものは売られてすらないんじゃないかな。夏場なんかは、素人が衛生的な配慮をせずに作ったお弁当より、よっぽど食中毒のリスクも低いだろう。一人暮らしや大人ふたり、お年寄りだけのおうちなら、一から材料を買って作るより、材料費燃料費作業にかかる時間諸々を考慮すると安上がりかもしれない。

毎日、毎食料理をすることが苦じゃないなら(私は割と好き)、別に好きに料理をすればいいと思う。でも、忙しくて自炊できない人、料理が得意でない人、買ったものの方が好きな人なんかは、大手を振って買ったもので食事をすればいいと思うし、そこに罪悪感を感じる必要はないと思うし、なにより他人がそれを「手抜き」と責めるのはお門違いだ。いいじゃん、おいしく楽しくごはんの時間ができるなら、それで。

ただ、どんなにコンビニごはんが優秀になっても、お店で買うものを選ぶのは自分な訳で、そこで必要なのが、先に挙げた家事能力「献立を立てる能力」だと思うのだ。

必要なカロリー、栄養素、量をまかなうものを選ぶこと。飲み会の予定なども考慮して、1日単位、週単位でバランスをとること。別に自炊をしなくたって、そういうことを考えながら食べるものを選ぶことは「献立を立てる能力」だと思う。

出典は忘れてしまったが、働く女性の中には栄養失調の人がそれなりの割合でいるのだそうだ。食事を抜いてしまったり、食べたとしても量が少なすぎたり、「おにぎりとサラダ」のように栄養的に偏りがあったり…太りたくない、カロリーは悪、みたいな気持ちもあるのだろうが、生きているだけでカロリーは消費する。補給しなければ足りなくなるのは当たり前だ。

その一方で、焼肉弁当とフライドチキンとカップ麺、みたいな献立が日常の人もいる。欲望のままに好きなものを食べるのが悪いとは言わないけれど、毎日それはあかんじゃろう…

さらに、毎日同じものを食べちゃう人も多い。わかる、面倒臭いのは。食事を選ぶのに頭使いたくないんだよね。私も身をもって知っている。でも、焼肉に行った次の日は野菜多めにしたり、お魚メインにしてみたりするのは、コンビニごはんでもできる。ケーキバイキングの次の日は、お菓子をやめてスムージーやヨーグルトドリンクにしてみるとか。そうやってバランスを取れたら、それは自分で献立を立てられたってことじゃないかな。

自炊をしていたって、毎日同じものじゃ栄養不足になることがある。祖母が認知症を発症し始めた頃、毎日おなじおみそ汁とごはんしか作らなくなって栄養失調になったが、これは献立を立てる能力が落ちてしまったからだと思う。自炊をしていればOKとは限らないのだ。

「コンビニごはんは手抜き、自炊はきちんとしている」っていうのは、すでに過去のものなのではないだろうか。食生活が手抜きかどうかは、コンビニか自炊かではなくて、「自分で献立を立てられたかどうか」なんじゃないかな。コンビニごはんが続いて罪悪感を抱えるのではなく、自炊してるから大丈夫と安心するのではなく、ちゃんと自分に必要なごはんを組み立てられてるかどうかを考えた方がいいんじゃないかな。

たとえ誰かに食事を作ってもらえる立場の人だって、1日に食べるもの全部を用意してもらうことは少ないだろう。昨日の晩ごはんは好きなメニューで食べ過ぎたから、今日のお昼は軽くしよう、というのも、自分で献立を立てること。お昼にもたせてもらったお弁当にお肉のおかずが多いから、コンビニのサラダつけちゃおう、も自分で献立を立てること。

コンビニごはんや冷食も含めて、誰かが料理してくれたものを食べられる機会が多くなってきたからこそ、ごはんを食べる全ての人に「献立を立てる能力」が必要なんじゃないかと思うのだ。

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