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インドの貧困地域の女性と生理の問題

先日、ラジャスタン州・ニムラナのスラム街で、生理についての啓蒙活動を行った。

映像を使いながら、月経のメカニズムや対策について説明し、女性たち自身にカラダの理解を深めてもらう機会になった。

10代の女の子やお子さんを持つ母親など、約10名の女性が参加した


この話を何人かにしていたら、「まだ生理ナプキンが行き届いていない地域があるんですね、驚きました」と感想をいただいた。


今回はインドの女性と生理の問題について、データと現場の状況を簡単に紹介したいと思う。

NFHS-5報告書(2019-21)によると、インドの15-24歳の50%の女性が、生理用ナプキンではなく、布を使っていることが分かった。

一般的に、インドでは生理用ナプキン、タンポン、月経カップなどが衛生的な生理の保護方法と考えられている。

しかし、多くの貧困地域の女性は、生理用品の代替品として、古い布のはぎれを使うことが多い。
また不衛生な布を使い続けると、婦人科系疾患の原因になる
とも言われている。

ウッタルプラデーシュ州、アッサム州、ビハール州など、農村地域の女性の多くが、生理用ナプキンではなく、布を使用する傾向にある。

一方で、12年以上の学校教育を受けている女性は、学校教育を受けていない女性の2倍以上(90%対44%)衛生的な生理の保護方法をとっている。(NFHS-5, 2019-21)

貧困家庭の多くの子供たちは、公立学校(Government school)に通うが、基礎教育の質に課題を抱えていることはもちろん、生理含む性教育については、ほとんど行われていないため、上記のような差がみられるのだと思う。

なぜ衛生的な生理用品にアクセスできないのか?

実際に農村・都市部のスラム街の女性に話を聞くと、衛生的な生理用品にアクセスできない理由はいくつかあるが、主な理由は下記の通り。

  • 教育リテラシーの低さゆえに、月経のメカニズムや衛生的な対策方法を知らない

私が直接聞いた地域では、公立の学校教育で生理について触れられることはほとんどなく、初潮を迎えたら、基本的には生理について母親から娘に伝えることになる。ただ、母親も教育を受けていないケースが多いため、しっかり月経について説明することができず、最低限の説明に留まってしまっている。

  • 生理に対するタブー

生理の際に、発疹、かゆみなどの症状を抱え、それを周囲に相談することが恥ずかしい、そもそもどの病院に行けばいいのか分からない・恥ずかしいなどで、放置してきたと話す女性たちにも会った。生理について、オープンにすることに抵抗をもつ人も多い。

  • 経済的に購入することが困難

50Rs(=約87円)もあれば、生理用ナプキンを購入することはできる。ただ、貧困家庭の人々にとっての50Rsは、大きな意味を持つ。50Rsあれば、1日分の食料や子供のミルクなどを買うことができる。ただでさえ、毎月の生活がギリギリなので、毎月生理用ナプキンを購入し続ける優先度はどうしても下がってしまう。実際に、余裕のある月のみ生理用ナプキンを購入し、収入が低い月は古い布で代用する人や、娘のためには生理用ナプキンを購入するけれども、母親自身は古い布を使うという人もいる。

  • 安全に生理用ナプキンを交換したり、捨てる場所がない

トイレがない地域だと、安全に生理用ナプキンを交換、捨てることが難しいというのも、生理用ナプキンが普及しない理由の一つである。


このような状況から、まずは女性自身が月経のメカニズムや衛生的に保つ方法を理解し、対策していくことが大事だと考え、こういった活動を行っている。

今回の勉強会を行った結果、参加してくれた母親たち、女の子たちから多くの質問が寄せられ、彼女たちにとってとても関心の高いトピックであったということを改めて実感させられた。

ただし、「生理用ナプキンは高くて、毎月買う余裕がない」という声もあった。

今後は今回の勉強会のような活動を続けつつも、同時に生活に余裕がない彼女たちでも持続的に、衛生的に使い続けられるような生理用品を模索していきたいと思う。

生理の問題は、病気の原因に繋がってしまうことはもちろん、女性が学校や仕事を休む原因にもなるため、女性のエンパワーメントにも大きく関わる。

また、生理は、女性だけの問題ではなく、家族やパートナーの男性、クラスメイトの男の子も理解していくことが重要である。ゆくゆくは、男女ともに生理含む性教育の普及をしていけたらと思う。


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