見出し画像

冥土の土産屋『まほろば堂』~私のアウトロー感想文~

どーも、どーも。あなたの隣の闇作家、紫藤咲です。過去二回やらせていただきました感想文がとても好評でしたので、今回、第三弾を開催することにいたしましたー! 

今回は冥土の土産屋『まほろば堂』です! こちらの本の著者様である光明寺祭人さんとはTwitterで知り合いました! というか、私がこの書籍を気になっていて、祭人さんの周りをうろちょろしていたのがきっかけだと思います←半分ストーカー

で、家中に未読の積本がごそっとありながらも、誘惑に耐え切れず購入。読んでみたところ「アカンやんっ、これ!」ってなったのです。

では、なにがどうアカンかったのか、いつもの通り、闇属性ならではのアウトローな読書感想文にて解説していきたいと思います。なお、これまで同様「え? こんなお話だったっけ?」「え? ちょっとそれ本当!?」と思われたとしても、一個人の勝手なダーク感想なので、それはそれ……ということでとらえていただけるとありがたいと思います。

しかしながら、これもこれまで同様、超絶おススメ本であるという点は変わりません。私の感想を聞いてみて、興味を持っていただければさいわいです。

なお、今回は感想の最後に著者である光明寺祭人さんから読者様へのメッセージもいただきました。楽しみに最後までお付き合いいただけますよう、よろしくお願いいたします!

では、さっそくこの本の魅力をひも解いていきましょう!

★和テイストに酔いしれる

この物語、岡山県倉敷市美観地区を舞台にしています。この美観地区! 白壁の蔵屋敷や柳並木の風景といった情緒豊かな町並みが楽しめる地区らしいんですよねえ。そんなレトロモダンな雰囲気を味わえる地区にある老舗のお土産屋さんを中心にして物語が進んでいきます。そこの店主が高身長のイケメン!なのは、物語として定番だと思いますが、装いが着物なんですよ、着物! さらに出てくる小物も和がベース! 備前焼の器ってだけでもくすぐられるのに、その器を使って出される和菓子、さらに和菓子をのせた和紙! というように、和テイストが好きな人はもうぐっとくるシチュエーションが満載なんです!

で、ここで出てくる備前焼。みなさんはどんな焼き物か知っていらっしゃいますか?

備前焼は岡山県が代表的な産地の陶器です。その特徴は『うわぐすり(釉薬)』も使わない、絵付けもいっさいしないというところ。実にシンプルな焼き物なですよねえ。しかしその分、土の成分や焼き方などによって模様が生み出されるので、ひとつとして同じものができないという奥深い器でもあるのです。ここが私的着目ポイント

備前焼という温かみのある土色の焼き物を登場させることで『人の心の温かさ』を表現していて、じんわりと心にしみてくる効果を生み出しているんですよねえ。もっと深く読み込むと、先ほど備前焼はひとつとして同じものができないと説明したとおり、唯一無二の器に『あなた自身もひとり、ひとり特別なんだよ』という暗示を潜ませているんですよねえ。ここが作者様の憎い演出であり、この物語がじわじわくるポイントだと私は断言してもいいです!

備前焼の前知識があるだけで、物語がぐっと深みを増してくる――そんな印象を持ったのではないでしょうか?

さらに、さらに! この物語、備前焼の他にもじわじわ来る小物など、作者様の憎い演出が目白押しなんです。では他にはどんなものがあるのか、じっくり見ていきましょう!

★猫好きの心を掴んで離さない!

この物語のキーパーソンというかキーアニマルになるんですかね。猫が登場します。しかも黒猫様です! 黒猫と言えば、中世のヨーロッパでは魔女といっしょに狩られる対象となりましたし、日本においても前を横切ると不幸が起きる――なんて言われるほど、不吉の象徴として認識されていることも多いのではないでしょうか? とはいえ、猫好きにとってはむしろ幸運だったり、甘えん坊で愛らしかったりと、黒毛という見た目と違ったチャーミングさにぐいぐい惹かれてしまう猫様でもありますよねー! そんな黒猫様がこの物語には登場して、主人公をあっちこっちへと誘導してくれちゃうわけです。

黒猫『マホくん』がねえ。いたずら好きで、憎めなくってねえ。生意気なガキンチョってかわいいじゃないですか? 彼はまさにそれ! 世の猫好きさんをキュンキュンさせるんですよ! で、決めるときはかっこよく決めてくれる! そんなマホくんの活躍から目と心が離せなくなるんですよねえ!

★倉敷に行ってみたくなる!

この記事の最初にもお伝えしていますが、この物語は倉敷市を舞台にしています。そのため、地元の銘菓やら特産物がいろいろ出てくるんですよー!

その中でも私が気になったのが『倉敷ガラス』です。物語の初期から出てくるんですけども、これ、実際にググりました(笑) これはリンク貼ったので実際に見てほしい。すっごく美しいです。知っている状態で読むと「ああ、この器にハナミズキが活けてあるのかあ、ふむふむ」ってなります。物語を百倍くらい楽しめます(笑) 

実際に私自身、まほろば堂を読み進めながら倉敷ガラスをはじめとした特産物をググりながら読み進めました。倉敷帆布を使ったバッグでどんなやねんっと思って、スマホ片手に調べましたもん(笑)

あと食べ物も本当によく出てきます。宗家源吉兆庵(そうけみなもときっちょうあん)の陸乃宝珠(りくのほうじゅ)、 大手饅頭伊部屋(おおてまんじゅういんべや)の大手まんぢゅう、橘香堂(きっこうどう)のむらすゞめ……

っていうか、和菓子テロやんけっ!!!!(笑)

読んでいると和菓子が食べたくなるという罠がこれでもかというくらい仕掛けられていて、甘いものを食べずにはいられなくなります(笑) ですから、この本を読むときには温かいお飲み物と和菓子を用意されることをお勧めいたします! (物語に出てくる和菓子はこちらをチェックしてみてください)

ちなみに倉敷ガラスは3000円くらいで体験ができるそうです。体験ができるのは倉敷美観地区ではないそうですが、倉敷へ行くときにはぜひ、やってみたいですよね! それから、ある情報筋によりますと、美観地区にあるガラスのお店はトンボ玉を選んでアクセサリーを作ることができるようですよ!

これはもうワクワクがとまりませんね!

本当に岡山の魅力が全開で詰まっている作品で、旅行に行ってないけれど行けた気分になれたし、一生のうちに一度は訪れたいなと思えたのは間違いありません。この本を読んでなかったら、たぶん私、倉敷を旅行の選択肢に入れてなかったと思います。その意識が変わったくらい、魅力があふれておりました。

まほろば1

★最後に著者光明寺祭人さんの思いをみなさまへ

倉敷美観地区を舞台に新作を書こう。
そう思い立ったものの、何のお店にするかで悩みました。

「観光地だけに、お土産屋さんだろうか。でもそれだけじゃあ捻りがないよな……」

そんな中、ふと頭に浮かんだのが冥土の土産屋というフレーズ。

「いかん言葉遊び(ダジャレだろ?)をしている場合じゃない!」

もっと真剣に考えねばと頭を絞った挙句、次に思い付いたのがメイドの土産屋……。
そんな調子で始まった今回の創作。地元を舞台にした新たな取り組みも「冥土」という言の葉の響きに引き寄せられ、人の生死を取り扱う深めのテーマとなりました。
その分、暗く重苦しくならないよう、旅情あふれる懐かしくも美しい風景で彩りながら、地元の銘菓やご当地グルメでおもてなし。読んだ後で、じんわりと暖かい気持ちになれるような物語をと心掛けました。
現在『小説家になろう』『カクヨム』にてシーズン2まで公開中。3で完結予定です。

店長と望美の淡い恋の行方はどうなるのか?

あっと驚く展開と涙と奇跡と結末を、地元のお茶やお菓子と共にご用意しています。
マホと真幌の祖父との涙の出会いと別れを描いた「エピソード・ゼロ」もファイナルシーズンに収録予定です。
もしよかったら、ふらりと藍染帆布の暖簾を潜ってみてくださいね。


【ここからは書き手さんへちょっと本音をぽろり】

小説家になろうというサイトを主軸に展開されている異世界転生チートや悪役令嬢ものといった物語。
ライトノベルだと妹系や学園ハーレムや同居もの。
ライト文芸だとお店屋さん、グルメ、ご当地観光、あやかしなどなど。
たまにミステリーとか見掛けても、イケメンキャラミスでトリックは二の次。
トレンド(テンプレ)を前面に打ち出さないと、ネット小説からの書籍化は難しいのが現実です。

今回、そんな鉄板要素を自分なりに盛り込んでみました。
だけど本来の自分が書きたいのはミステリーとヒューマンドラマ。ネット小説では斜陽のジャンルです。

だけど、そこは曲げたくなかった。
読者をあっと言わせるトリック~どんでん返し~伏線回収からの涙の結末。そんな自分のこだわりと前述のテンプレ要素をミックスしてみたのが、まほろば堂です。

いくら流行だからといって興味がないものは書けないし、みなさんにも書いて欲しくない。自分のカラーとレーベルカラーがマッチして、はじめて良い結果に繋がるのかも知れません。そういった意味では自分は運が良かったです。


祭人さんの思い! めっちゃ同感! 斜陽のジャンルに光が当たるようにと願ってやみません! 私はめちゃくちゃ楽しみました! マホのお話、楽しみに待っています!

【最後にアウトじゃない感想を】

「冥土の土産にひとつだけ、あなたの望みを叶えます」 

私がこの本を手に取ったのは、このフレーズにどうしようもないほど惹かれたからです。実際に自分が言われたとしたら、いったいなにを願うだろう。考えて、考えて、考え抜いた先にあるたったひとつの本当の願いとはなんだろう。

誰かのしあわせを願うのか。誰かに恨みをぶつけるのか。最後に会いたい人に会いに行くのか。いろんな思いがぐちゃぐちゃになって、たったひとつに絞るのがすごく苦しくてたいへんなことだと感じました。

また、この物語の中心となるねじれた人間関係は現代の誰もが抱える問題でもあると思いました。誰の中にもある闇とどうやって向き合っていくのか。それを考えさせられた物語でもあります。

今が苦しい人。死にたいと思うくらいつらい人に、ぜひ手にとっていただきたい。

――あなたは人生の最期で、後悔しない選択ができますか?

この物語があなたの人生の光明となりますことを願ってやみません。

ご購入はAmazonでも→冥土の土産屋 『まほろば堂』

では次回もお楽しみに~!




この記事が参加している募集

推薦図書

読書感想文

面白かったらぜひサポートを! 10円~で構いません。みなさんのよかったを教えてくださると次の励みになります! よろしくお願いいたしますm(__)m