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【中国ドラマ感想】大明皇妃/大明风华

総製作費百億円。
史実を元にした本作を無事完走したので、個人的な感想を書き留めておく。


※以下ネタバレあり。



お勧め度 ☆
良く言えば丁寧、悪く言えばくどい。


本作は先にも言った通り史実を元に作られている為、登場人物の功績や死ぬ時期などは動かせない。
些細な変動はあれども結果歴史通りになると言う、史実系の時代劇にはありがちな部分がとても厄介だった。

まずタイトルからして本作の主人公であろう若微の活躍までかなり長い。
と言うか正直途中で何度も「このドラマの主人公は誰なんだ?」と思った。
何なら最後まで見ても「若微が主人公で良いんだよな?」と思った。
まあ若微で間違いないのだろうが、それにしては若微以外の人間を軸に話が進む。
そもそも若微の活躍はまず瞻基と結婚し、皇族とならねば始まらない。
つまり瞻基が皇帝にならねば始まらないと言っても過言ではない。
むしろ瞻基が死んでからが本番なのでお前が皇帝になったとて感がある。
なのに話は瞻基の祖父である朱棣が靖難の役で帝位簒奪をしたところから始まるのだ。
なっげぇなあ!おい!!!

ただここでこの長さの理由が先述の「良く言えば丁寧」の部分だ。
若微が靖難の役の遺児であり、朱棣がそれに対して思うところがあったりと、若微が有能な女である事の証明と周りの人物の立場や心理描写・キャラ付けはかなり丁寧だと思う。
どうして若微が信頼されるのかが丁寧に描かれていて、そこはとても良い部分だと思える。
だがその分「周りに無能しかいねぇな!」となるので「こいつら早く死なねぇかな」と繋がってしまう。

いやマジで無能しかいねぇよ。
有能なのは若微・于謙・徐浜・朱高熾・楊老閣含む三人集くらいしかいねぇ。
あとは朱棣含めて全員無能。
なのに死ぬ時期までは死なないから見ていてイライラしてしまう。
これが「良く言えば丁寧、悪く言えばくどい」の理由だ。

見ていて何度「頼むから胡善祥死んでくれ~!」と思った事か。
立場は正妻だが実質側室の分際で野心とプライドだけ高くてウザいの何の。
分を弁えない愛人って感じで非常に苛立たせてくる。
なので胡善祥が朱高煦に犯されたり、瞻基に冷たく接せられたり、階段から突き落とされて流産したり、出家させられたり、息子と離れ離れになったりと酷い目に遭っているととてもスカッとする。
しかも大体自業自得なので非常にスカッとする。
スカッとチャイナ。

また胡善祥は最初は宮女スタートで、出世し若微と感動の再会を果たすまでは若微パートと胡善祥パートがあるのだが、この胡善祥パートがまた厄介だ。
場面が宮中になる為、話がなかなか進まないのだ。
なので正直胡善祥パートはもう少しやり方はなかったのかなと思うし、何なら若微との再会までは胡善祥パートを減らしても問題なかったと思う。
大体幼稚な胡善祥が駄々を捏ねているシーンが多いしね。
このドラマを見ていて胡善祥を好きになる人って稀有な存在なのではないだろうか。

更に異民族との戦になると、まあ話が進まない。
中国の長編時代劇特有の「細かい部分では進んでいるけど大筋が進んでいない」が今作ではかなり存在している。
戦が始まるとそれが顕著に表れるので正直、普通に倍速か飛ばし飛ばしでも良いと思う。
私は倍速視聴で耐えた。

このように良く言えば丁寧、悪く言えばくどいので好き嫌いが分かれるタイプのドラマだと思う。
人物の深掘りや細かい描写が好きな人はドストライクだろう。
ただ私個人としてはこのドラマの見どころは若微と徐浜の関係だけだと思っている。
逆賊時代からずっと想い合いながらも結ばれる事がなかった二人。
しかしそこに存在する信頼関係と絆は確固たるもので揺らぐ事がない。
その最たるシーンが、徐浜が異民族の捕虜になった若微の息子・祁鎮が死のうとした時にそれを止めようと話しかけるシーンだ。

「そうか死ぬなら最期に聞いておけ!私はお前のひいおじいちゃんに九族皆殺しにされたからくっそ恨んでるし殺そうとしてたし、お前の母親も私と同じく家族を殺された身だし、それがありながらも国に尽くしたのにお前の父親が死ぬ時に殉葬されそうにもなった!そしてお前の母親はお前の父親なんか愛してない!お前の母親が愛してるのは私だ!

エモい。
何がエモいって何ひとつ嘘がない上に、これを祁鎮を生かす為に言っているのがとてもエモい。
結局最後まで若微は瞻基を異性として愛してはいなかった。
多分、人としては好きだし尊敬出来る部分もあるし馬が合う的な感じの好きしかなくて、瞻基自身もそれを自覚しているから徐浜を若微から離す事にした。
でも結局は物理的に離したところで二人の心が離れる事はなかった。
お互い想い合っていた過去を捨てて国の為に働いて、最後の最後でその重荷から解放されて一緒に海に出る。

うん、このドラマは若微と徐浜の愛の物語だわ。
色々起きる出来事は全てその為のスパイスでしかない。
そう思って見ると楽だし、かなりエモいと思う。
いややっぱりそれにしても長いわ。

あと基本的に朱一族が恩知らず恥知らずで見ていてイライラする事間違いなしなので、本当に耐えながら視聴する事を覚悟で見るのが良い。
マジで朱棣が本当にクソ。
どうしようもないクソ。
朱一族皆クソ。

ただ朱棣と高煦が揉めに揉めた時のお互いの意地の張り方が「うっわ嫌なとこだけちゃんと親子じゃん」となるので面白くて唯一好き。
「もう終わったわ!どうせ死ねって言うんだろ!先に葬式やっといてやるわ!」と嫁や子供達皆に喪服を着させ、葬式をする朱高煦。
「そんなに死にてぇなら棺を埋めてやるわ!」と勅旨を出す朱棣。
馬鹿なのかな?こいつら。もう一周回って面白いわ。
ちなみにだが揉めている理由は気にしなくても良い。
この一族は仲良くなったと思ったら次の瞬間には揉めるを繰り返すので、最早見ているこちらも「もう何で揉めてんのか分かんねぇよ」となる為気にしなくても良い。


余談だが胡尚儀が胡善祥を叱っているシーンの日本語字幕が気になった。
字幕では「出世欲に駆り立てられている」となっていたが音声では「疯了」と言っていた。
「疯了」は直訳すると「頭がイカレてやがる」みたいな感じなるので「駆り立てられている」はたいぶとオブラートと言うか綺麗過ぎると言うか。
胡尚儀のキャラを守ったとしても「出世した過ぎて頭おかしくなったんじゃないの!」くらいで良かったのではなかろうか。
胡尚儀もキレると結構キツイタイプだし。


・総評
面白いとは思う。
何度も言うが非常に丁寧に作られていて、登場人物の言動にご都合主義を感じさせないように出来ている。
ただその代償として非常にくどく感じるし、話の展開がカタツムリくらい遅い。
また「主人公が複数なのか?」と思う程若微抜きで進むシーンも多々ある為、「こいつが主人公だ!」と分かりやすい演出を好む人には向かないだろう。
本作を見る場合は「若微と徐浜のラブストーリー(とその他)だが、その他部分が大半を占める」と思いながら見る事をお勧めする。

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