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PowerPointで作った授業を「Kocri」に置き換えるメリットとデメリット

授業の質を追求する先生と株式会社サカワがタッグを組み、授業の在り方を模索する「♯Kocriで授業共創プロジェクト」。今回は、大阪府の公立小学校で教員をされている江川先生に協力して頂きました。
コロナ禍の休校を経て、今まで以上に効率化が求められるようになった教育現場。鮮度の高い実践事例を詳しくご紹介したいと思います。

iOS版のKocriは、ありがたいことに先生発信で口コミが広がり続けたこともあり、11万ダウンロードを突破しています。今回のKocriの実践でもキーになる「ガイド線」に関連して、こんな呟きも。

(開発メーカー冥利に尽きます。。。)

さて、今回の企画で登場するのはWindows版のKocriです。

江川先生担当コースの課題と、ICT活用の狙い

担当コースの課題
●小学5年生 復習がメインのゆっくりコース
前学年までの既習事項のおさらいもしながら、教科書の内容を中心とした学習に取り組むコースです。児童は、文章問題で状況を掴んだり、そこからの立式が難しかったりする場合が多いそうです。江川先生は「勉強に苦手意識を持つ児童に対し、興味を持ってもらえるような工夫がしたい」との思いを持って授業を考えられています。

今回は、授業中にプロジェクターから投影している資料について、PowerPointで作成していたものをKocriに置き換えてみます。

ICT活用の狙い
授業進行におけるICT活用の狙いは、主に3つ。

1. 既知事項の復習を短時間で行う
2. 板書時間の削減
3. マス目を黒板に投影し、筆算で位をそろえることを意識させる

基本的にKocriは、PowerPointに似た構造です。「シーン」(パワポで言う「スライド」)を1枚ずつ作成し、テキスト・画像・動画などを配置します。しかし、Kocriは黒板との相性を徹底的に考えられたツールで、白黒反転や持ち歩ける書画カメラとして使うなど、特有の機能もあります。
既にPowerPointで教材作成や授業を行っている場合、Kocriへの移行は現実的なのか?使い勝手はどうなのか?という所を、実際にやりながら試してみます。

Kocriへの置き換え メリットとデメリット

結論を先に書きたいと思います。
Kocriには「適材適所」があります。ICTを活用することそもそもがそうだと思いますが、手段の一つとしてのKocriを活かせる場面を選ぶ必要があります。

今回の実践を通して分かったメリット
「マスを黒板に投影し、位をそろえることを意識させる」狙いにおいて、児童から見たとき、ガイドがあるために見やすくなりさらに分かりやすくなったこと・位を縦にそろえることをより意識することができたことは、ICT活用のねらいだけではなく、算数科の授業のねらいにもせまることができ、Kocriを使ってよかった部分。
また、Kocriでマスを表示したことによって「黒板に書きたい!」と児童から声が上がったのは予想外の嬉しい反応。Kocriがあったことで、「学習意欲の向上」にも繋ぐこともできました。

デメリット
以前からPowerPointで作成した資料を使って授業をされていた江川先生にとっては、提示資料をKocriで置き換える作業分がそのまま手間に直結し、時間がかかってしまいました。

江川先生の声:
今回の実践を通して、「黒板にチョークで板書をすると、指導者が書き終わってからでないと書き始められない…」ということがなく、指導者と同じタイミングで児童も書けるのが良かったです。また、指導者が児童を見ながら授業を進められるので、児童の反応がより見えるというメリットを新たに感じることができました。
しかし、従来ならワークシートのPowerPointを少しいじるだけで提示資料まで作ることができましたが、この提示資料をKocriに置き換えるとなると、単純な罫線を引いたり長方形のサイズを自由に変えたりが現状のバージョンではできないため、二度手間になってしまいました。

児童にとって、ガイド線が表示された板書は視覚的にとらえやすく好評でした。先生は、児童に背中を向ける時間が減り、児童の反応を確かめながら進行できたようです。

しかし、先生の授業準備に課題が残りました。既にPowerPointのデータを作っている場合、全てをKocriで作り直すのではなく、「PDF化→白黒反転させて使う」など可能な限りの時短を追求したり、Kocriだけではなく複数のツールのそれぞれのお気に入りの機能をピックアップしたりする等の取捨選択も必要だと分かりました。
「板書の手間を減らす」「ICT活用により浮いた時間で子どもたちの学習密度を高める」といったICT活用の本来の目的からずれてしまわぬよう、ツールの適材適所、取捨選択が、先生一人ひとりの授業スタイルによって必要だと思います。

教材作成の流れ

ここからは、江川先生の実践の詳細を記します。まずは、教材作成の流れから。

①本時のめあてとまとめを考える
②デジタル教科書等を確認し、ワークシートで使用する教材資料を決める
③ワークシートをつくる(PowerPoint)
④板書計画を考える
⑤プロジェクター投影用資料をつくる。←普段PowerPointで作成しているものを、Kocriでの作成に変更してみた

学習進度のゆっくりなクラスを担当していることもあり、ほぼ毎回ワークシートを作成されています。「友達と協力して主体的に学習を進めている」という実感を児童にもたせるため、めあて・まとめ共に児童の言葉で書けるよう、指示や発問で誘導することを心掛けているとのこと。
「君たちはコピー機じゃない。自分が考えたことを自分の言葉でノートにまとめ、先生の話でなるほどと思ったことがあれば書き加えてください。」が口癖だと言う江川先生。頼もしいです。

実践 1日目

めあて・展開(太字部分が、Kocriを使った場面)

「今までと同じ方法で筆算はできるか考えよう」

①既習事項の復習として、1.8+3.4を筆算で解き、筆算の仕方を説明する(Kocri登場)
②1.82+3.45の計算の仕方について考え、説明をする
③1.82+3.45の筆算の仕方について自分の言葉でまとめる
➃練習問題を解く(Kocri登場)
⑤本時のまとめを書く
⑥振り返りをおこなう

板書計画(ICT活用のポイント・授業の流れ)

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実際の板書

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とても忠実に板書計画を再現できていることに驚きます。美しい板書ですね。
左手に投影されているのがKocriのシーンです。テキスト機能や複写機能を使い作成しています。

Kocriのシーン

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Kocriを使った場面(1) 既知事項の復習

板書時間の省略・短時間の復習、本時の手立てが目的。PowerPointから置き換えた部分です。
最初は穴あき問題の状態で、進行に合わせ、答えを埋めていきます。

Kocriを使った場面(2) 練習問題を解く

練習問題時に児童が黒板へチョークで書く際に使用。
Kocriのシーンにガイド「マス」を表示。筆算で位をそろえることを意識させることが目的です。

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児童が使用していたワークシート(作:江川先生)

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オリジナルのワークシートにも、気遣いが散りばめられていますね。作成の心得を聞きました。

児童の悩み①:書くのが遅い、板書を写すことが勉強だと考えている。
→児童が書く内容は、考えさせたいことのみに絞るようにする

児童の悩み②:どのように考えれば良いのかわからない
→ワークシートを見ればどのような流れで考えればいいかが分かるように

児童の悩み③:ノートのまとめ方が見にくい
→ワークシートが今後のノートのまとめ方の参考になる存在になるように

…でも、ワークシートを使うと授業の流れが予定調和のものになりすぎたり、児童によっては書きたいことが書きにくかったりするため、児童がノートづくりになれてきたら、極力減らしていきたいと考えています。

実践 2日目

めあて・展開(太字部分が、Kocriを使った場面)

「まちがいを見つけて正しく説明しよう」

➀前時の復習(Kocri登場)
②小数位の0を斜め線で消すことを学習する
③小数点を意識し、位をそろえて計算をする
➃練習問題を解く(Kocri登場)
⑤振り返りをおこなう

板書計画(ICT活用のポイント・授業の流れ)

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実際の板書

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Kocriを使った場面(1) 前時の復習

板書時間の省略・短時間の復習、本時の手立てが目的。
Kocriのシーンに前時の授業内容のまとめ(画像)を貼り付け。全く同じものを使って復習ができました。

Kocriを使った場面(2) 練習問題を解く

練習問題時に児童が黒板へチョークで書く際に使用。
Kocriのシーンにガイド「マス」を表示。バーでマスの大きさを調整します。マス目の線間隔が自由に調整できる点はKocriならではで、昔からあるマス目黒板には無い融通性があります。

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児童の反応(ワークシートの感想欄より)

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狙いが児童にも伝わりました!

実践を終え、改めてICT活用の狙いを振り返る

1. 既知事項の復習を短時間で行う
2. 板書時間の削減
3. マス目を黒板に投影し、筆算で位をそろえることを意識させる

普段からICTを取り入れた授業をされている江川先生が、今回の実践を通して改めて振り返るとどうだったのかインタビューしてみました。

1. 既知事項の復習を短時間で行う
→ 復習を短時間でおこなうことができました。
・映像が映ったら「学習するぞ」と児童が気持ちを切り替えられる
・前時の板書を使うから、前時に学習したとおりに思い出せる
・板書がいらないので、板書を書く・消す時間が不要
これらが特に良かった点です。
2. 板書時間の削減
→ これも成功しました。
板書時間の削減により、「児童と会話する時間」や「児童の考える時間」を増やすことに繋がりました。
授業づくりでは、「児童が学習している時間」をいかに最大化できるかが重要だと考えています。その中で、指導者が板書をする時間は多くの児童にとって待ち時間となるため、流れを見せる必要がない板書はICT機器のボタン1つでポンと映せばよいと考えています。
3. マス目を黒板に投影し、筆算で位をそろえることを意識させる
→ 児童の感想を見ても、私の主観としても良かったです。
・児童から見て、ガイドがあると見やすくてわかりやすい
・児童がより位をたてにそろえることが大事だと理解できた 
・(マス目があることで)「黒板に書きたい!」と、学習意欲の向上につながっていた
・ガイドによって書く場所を指定できるため、板書が見やすくまとまった

今日はここまでになります!最後までご覧いただきありがとうございました。

おすすめの動画

これを見ればKocriの使い方をマスターできます(Kocri for Windows)

本プロジェクト員の猪狩による、Kocri for Windowsの先生向けレクチャー動画です。「授業でどう使えばいいの?」という疑問を解消できます。また、「あの単元で使えそう」と授業の活用イメージが浮かんでくるかもしれません。

タブレットやPCをお持ちの方はKocri for Windowsをお試しいただけます。
無料でKocri for Windowsを体験したい方はこちら:
http://kocri.com/demo/

サカワのWebサイト:
https://www.sakawa.net


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