『中学校の給食の今。京都市。名古屋市。栄養素不足の仙台市も緊急取材。』
文科省によると『中学校給食は努力目標。』
よって、地域によって全く違う。
①京都市の給食
京都市は平成15年度から選択制の給食制度を導入している。
中学校の給食は大きく分けて5つある。
①調理室方式
②給食センター方式
③業者依頼方式
④お弁当or業者依頼給食を選択方式
⑤お弁当orスクールランチを選択方式
⑥親子方式(近隣の小学校で作った給食を近くの中学校へ配達する)
⑦給食実施無し(家庭からのお弁当のみ)
など。
今回取り上げる2つ市は、④の方式と⑤の方式。
まず、京都市は、ほんと職員の対応が素晴らしい。
取材の依頼をすると、『ありがとうございます。』と返って来る。
ちなみに、嫌々、対応する自治体も存在する。
そんな自治体は、正直問題発生時以外は、取材したくない。
宣伝の機会を自ら奪っていると職員が気付いた方が良い。
京都市は職員採用も独自方式を取っており、発想が豊かだ。
歴史ある街なので、それだけでも、充分にやっていけそうだが、そんなおごりは、微塵も無い。
何度取材しても、同じ対応。
全てにおいて、世界品質を目指している街だ。
給食に戻る。
献立表も多くの方に見て頂ける努力をしている。
確かに、見た瞬間ワクワクする。
文字のメニューだけ並べられても想像力が湧かない。
給食は、学校給食法という法律があり、基準が厳格に設けられている。
学校給食実施基準にはカロリーから、たんぱく質、脂肪まで数値が設定されている。
この基準を守って給食施設、又は業者が作っていくことになる。
京都市は厳格な基準をクリアーした2社が、3工場で、給食を作っている。
給食業者には衛生面、安全面で高い意識が求められている。
横浜市のハマ弁は不味いという評判がある。
塩分を控えている影響もある。
しかし、京都市の評判はすこぶる良い。
試食会を実施し、ご父兄に食べて頂くと、『これは子供達に食べさせないと。』となるそうだ。
この差は何か?
担当者がおっしゃるには、だしに気を付けているとのこと。
他の市の担当者から、このだしへのこだわり。
確かに、京都らしいですねとの感想が出た。
確かにだしが効いていれば、こくが出る。
このだしが、京都市給食のおいしさの秘訣だ。
そして、素材の良さを生かし、おかずの味付けにメリハリを付けるという工夫もされている。
京都市の選択給食の利用率は30%
教員の利用率は50%
大人にも好評だ。
ちなみに、横浜はハマ弁利用率2.3%。
ご父兄から不味いとの評判が出ると確かに広がりにくくなる。
この点は、横浜の課題。
だしの件は、横浜に参考にして貰えるように、取材の後、ハマ弁担当者に伝えた。
筆者は、こういった取り組みも行っている。
取材しっぱなしにはしない。
フィールドバックを意識して行っている。
日本全国に良くなって欲しいし、切磋琢磨することで、各都市が成長出来る部分もある。
こういった他都市の参考になる情報を伝えることは、担当者から感謝されるし、積極的に調べている担当者には、本当にありがとうございますと言って貰える。
京都市の給食の目標は上の3つ。
小学生とは違い、中学生は選択出来るちからを持っている。
その選択の意志を尊重したいというのも、京都市の目標。
さまざまなの給食の風景があることを認め合いながら、楽しく会食をして、好ましい人間関係を育成するという重要な目標があるのだ。
筆者の中学校は、給食センター方式の給食だったが、何も考えずに、食べていた。
給食にもこういった目標があったとは、正直、驚いた。
取材していて、京都市職員の方の
『守っていては廃れる。』
『市民の目線で捉え、考える。』
この言葉が強く印象に残った。
他市の職員にも、こころに深く刻んで欲しい言葉だ。
京都市は、取材していて、いつも、ほんと気持ち良い。
取材した後、清々しい気持ちになれる。
②名古屋市の給食
二年連続行きたくない街という不名誉な称号を得てしまった。
しかし、この街の給食が凄い。
『スクールランチの街だ。』
まずメニュー。
度肝を抜かれた。ラーメン、スパゲティ、シチューが出る。
給食センターや学校調理室方式でも、ラーメンは非常に珍しい。
そしてこれ。
名古屋名物きしめんや味噌カツが、出る日がある。
名古屋市はこの給食をスクールランチと呼んでいる。
利用率は50%
これは非常に高い数値だ。
そして、名古屋の凄いところが、まだある。
全中学校にランチルームがあるのだ。
名古屋市は平成5年に試行を開始し、平成10年に全ての中学校でスタートした。
20年の歴史があり、改善も重ねて来た。
その実績、ノウハウがある。
このスクールランチを実施する前に、市民1万人にアンケート調査を行った。
その上でスクールランチを実施している。
スクールランチのアンケート調査では、9割が上手い、もしくは普通の評価をしている。
名古屋市の給食の目標。
個性を尊重し互いに認め合える、好ましい人間関係を育てる。
家庭からのお弁当とスクールランチの併用。
お互いの違いを認め合って、楽しく会食する。
これは、本当に大事なことだと思う。
各家庭には、さまざまな事情がある。
共働き家庭も増加しているため、お弁当を作っている時間的余裕がない家庭も存在する。
それぞれの個性を尊重する。そして、認め合う。
これは、日本社会全体のキーワードでもある。
スクールランチは1食280円。
担当者によるとギリギリのライン。
280円もしくは290円×学校の稼働日数。
この金額が学校給食費の全国平均の額になる。
生徒、保護者のスクールランチに対する満足度は非常に高い。
50%はかなり高い利用率だが、今後も利用率の向上を目指している。
取材後記
『食育の時代』
今回、選択給食の先進的な街、2つを取り上げた。
文科省が言うように、中学校給食は努力目標。
実施しなくても、何ら法律違反でも無い。
当然財政が厳しい街は、中学校給食を実現出来ないことにもなる。
現実に、家庭からのお弁当のみの街もある。
全国の完全給食実施率は90%を超える。
しかし、神奈川県の実施率26%
横浜市は、人口増加の影響で、学校建設に重点を置かざるを得なかった。
神奈川の他の市も、エアコン設置などの設備を優先した。
筆者の感想だが、文部科学省の『努力目標』も、大きく影響していると思う。
学校給食導入指導という形をとって、いわば強制力が伴えば学校給食の、普及率の速度も、違ったはずだ。
国は地方分権を主張するが、地方には、国からの上意下達意識が根強くある。
神奈川県内でも、各市がやっと給食導入の検討を始めた。
横浜市のハマ弁は、学校給食法に則った形を取っていないので、給食に含まれない。
ハマ弁は、あくまで、ハマ弁という独自路線。
横浜市の人口374万人。
横浜市が給食を導入すると、神奈川の実施率は、60%を超えて来る。
今後、中学校給食を実施していない街が、どう具体的に実現していくのか?
その取り組みも取材しながら、追っていく。
中学校給食に悩んでいる自治体職員の皆さんは、京都市、名古屋市を視察に行かれることを、是非、オススメする。
最後になりましたが、丁寧に取材対応して頂いた京都市、名古屋市の中学校給食担当の方に、感謝申し上げます。
追記
栄養素を5年間満たしていなかったと報道された、仙台市を緊急取材。
まず仙台市の給食実施率は100%
そして中学校の1食あたりの費用は290円。
これは全国平均だ。
上の記事に示しているが、給食は、学校給食実施基準で、栄養素を明確に、規定されている。
学校給食実施基準は、文部科学省が制定しているもので、これは、努力目標。
法律では無いので、もちろん罰則規定もない。
鉄の充足率が、特に低いが、鉄が含まれている食材を毎日入れていくことが、なかなか難しいとのこと。
レバー、ナッツ類が鉄分が含まれる食材だが、確かに毎日、レバーは、中学生にとってもキツイと思う。
そして食材費高騰の影響。
食材費用が高騰していることも、栄養素を満たせない一因だそうだ。
それでは、給食費を上げれば良いという意見も出てくる。
そうなると、今度は、給食費の未納の問題が出てくる。
簡単に、給食費を上げる訳には、なかなか行かないのが現状だ。
他の都市と比べて、仙台市の給食に気になった点が、他にある。
筆者の20年前の献立表と変わらない。
写真だけ見ると、あまり美味しそうに見えない。
学校給食費は、食材費相当額を、保護者が負担すると、学校給食法で決まっている。
そのため、給食費に市の補助を入れることは出来ない。
食育の時代。
全国各地で、給食への取り組みが進んでいる。
各地域で、それぞれの悩みを抱えている。
文部科学省が、中学校の給食は、努力目標のため、各地域バラバラに取り組みを行っている現状もある。
こういった場合は、成功している市を、真似する、参考にするといったことが、大事になって来る。
各都市が、悩んでいるのは充分に分かるが、
児童、生徒の視点、目線を大事に、保護者の意見を充分に組み取れる政策を行って欲しい。
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