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ハンマーダルシマーってなんだ

最近文芸関係の話ばかりしている気がするので(近々文フリ後日談も書こうと思っているし、文学関係の話はまだしばらく続きそう)、たまには全然別の話もしたい。
ということでお久しぶりの〇〇ってなんだの水尾的辞書シリーズです。


ハンマーダルシマー。
英語でHammered Dulcimerと書きます。
この聞きなれないdulcimerという語はラテン語から来ていて、「甘美な旋律」を意味するのだそうです。

その甘美な旋律を奏でるハンマーダルシマーというのは、台形の打弦楽器です。
弦を爪弾くのではなく、ばち(ハンマー)で打って演奏するから”ハンマー”ダルシマー。弦といえば手や弓などで奏するイメージが強いですが、この楽器の場合弦が金属製なので打つことができるのです。
形が台形なのは、弦の長さによって音が変わるからでしょう。弦の太さも違うのかは画像を見ただけではちょっと分かりませんでした。

ハンマーダルシマー同様に、弦を打つことで音を出す台形の楽器は、弦楽器の中では珍しいもののアジアにも何種類か存在しています。中国・台湾等では「楊琴(ヤンチンまたはヨウキン)」と呼ばれ、日本にも1600年代に入ってきました。
琉球王朝の宮廷音楽、御座楽で使われた弦楽器がそれに当たり、洋琴、又は夜雨琴と書いたのだとか。(なんと美しい字面でしょうか……! 眠れぬ夜にしとねとなって辺りを包む優しい雨を思わせます。)
残念ながら明治維新以降、王制の廃止に伴って御座楽が廃れてしまい、洋琴も日本から姿を消しました。

さて、東西で典雅な名前で呼ばれるこの楽器、実際の音はどうなのでしょうか。
Youtubeでハンマーダルシマーで検索してみると、沢山の方の演奏動画が上がっています。特にアイリッシュ音楽や民謡の演奏に使われることが多いそうですが、映画音楽やアニメソングなどポップスの動画も色々あるので、実際に好きな曲を聴いてみて頂けたらと思います。
以前流行した中国伝統楽器のインストゥルメンタルバンド「女子十二楽坊」でも用いられていました。

敢えて音を言葉で表すなら、粒立って硬質な音と言えましょう。
オルゴールのようにすべての音が均質に鳴っていて、余韻はどこか郷愁を誘うような、あまり他では聞いたことのない音楽だと思いました。

ちなみに同じくダルシマーとつく”アパラチアン・ダルシマー”は弦を弾いて音を出す撥弦楽器で、もっと優しい音色に聞こえます。手の加減で音の強弱をつけやすいからかなあと推察しています。

持ち運べる小さなサイズから、音域の広い巨大なものまで大きさも様々あるそうで、弾く際の厳格なルールもないハンマーダルシマーは、万人に開かれた音楽なのかもしれません。
聞き覚えのない語だなあなんて気軽に調べてみましたが、形も独特な音色も、一度生で体験してみたい、一回弦を打つという行為をやってみたいと思わされました。
見たことない・触ったことない楽器はこの世に幾らもあって、そのどれもが違う音色を持っているなんて、何だかロマンを感じますね。

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