ep.21タイムリミット
警備隊に部屋から引きずり出された私は、拘束され別の塔の監視部屋へと閉じ込められた。
入れられてすぐはどうにか出れないか模索したももの、程なくして抵抗は無駄だと思い知らされた。
「いつも、こうだ。」
近づけたと思うと距離が出来る。
手に入れようともがけばもがくほど、遠くの彼方に行ってしまう。
私が何かしようとしたところで、そんな事すら無意味に感じてしまう。
それでも諦めきれずにいるのは、ユクをまだ信じているからだ。
ユクがしようとしていたことが間違いかどうか私には分からない。ただ、同族が倒れてもその事にすら気づかずそこを素通りしてしまうのもおかしいと思う。
鬱陶しくて煩わしくて、面倒なこの感情も、だけどあったからこそ私の目に映る世界がより鮮やかでより鮮明になる。
いまだ持て余す“心”ではあるけれど、それすら含めて心というものがあるんじゃなかろうか。
タイムリミットまで残り僅か。
自分を切り捨ててでも願いを叶えようとして、人の話を聞かないあの人を、一発ぐらいぶん殴ってやりたいのだ。
だから、ここで壊れてしまっては困る。
徐に胸ポケットに手を伸ばす。
そこにはユクから貰った通信機が入っていた。
一歩的な連絡しかこない通信機。
私とユクを繋いだ座標を示すもの。
こないと分かっていても何度も見直してしまう。
タイムリミットまで、あと残り僅か。
さて、どうやってここから出ようか。
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