夢の扉
扉を開けると、そこは夢の中だった。
最初の部屋は食卓。
長いテーブルの端っこに僕は座っていた。
遠い先の反対側、向かいの人はミニカーを、
左前の人は夕焼けを、右前の人は中庭を食べていた。
スープ皿に盛られたそれをスプーンでぱくぱく。
美味しいとも不味いとも言わずただぱくぱく。
これはきっと、変な夢。
さっさと食べて出てしまおうと皿を覗くと
お皿の中は空っぽで、何にもない。
誰かが食事を持ってきてくれる気配もない。
ならまあ、いっか。
席を立つ。
だれもこちらを見向きもしない。
ただつまらなさそうに皿の中身を食べるだけ。
くるりと彼らに背中を向けて次の部屋へと向かっていった。
扉を開けるとそこもまた夢の中だった。
歪んだ書斎だった。
手のひらサイズの本から、2メートルをゆうに超える程の本まで色々。
ここで本でも読んで時間を潰そうかとも思ったけれど、どの本も手を伸ばすとバタバタと暴れ噛みついてくる。
体当たりまでされちゃうもんだから、倒れてきたデカい本と本棚の間に出来た隙間に逃げ込んで、なんとか落ち着くのを待った。
おしりの辺りがもぞもぞすると思ってみると、
ぼろぼろの絵本を下敷きにしていた。
一瞬焦ったけど、その絵本が攻撃して来ることはなく、なにかを伝えようとしている。
絵本の言う方を見てみるとそこには、小さな小さな扉があったのだ。
本棚の後ろ方に隠れていた次の部屋への扉。
四つん這いになればなんとか入れる隙間から次の部屋に入る。
そこは、埃っぽい子供部屋だった。
おもちゃやぬいぐるみなんてものはなく、ただ殺風景な部屋。
掃除はあまり行き届いてないようだ。
そして気づく。次の部屋へのドアが見当たらないことに。
だから仕方なく、そのままその埃っぽいベッドで眠ることにした。
いささかサイズの小さいベッドにうずくまり、
絵本を抱きしめてねむる。
肌寒い気もするが毛布がないのでかけられない。
これは夢、長く続く悪夢だ。
早く醒めてくれないだろうか。
夢の中でそう思いながら目を閉じた。
目が覚めると、ベッドの中だった。
薄っぺらい毛布をはいで、靴を履く。
扉を開けたこの先が、どうか夢の終わりであれと、淡い期待を抱きつつ、ドアノブに手をかけた。
扉を開けると、未だ夢の中だった。
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