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冬の朝

さむい。

中々開かないまぶたを擦りつつ、布団から頭だけを出して、あとはすっぽり毛布に包まれたまま思う。

さーむーいー。

心地のいい、ふかふかであったかい天国から何故冷え切った寒い外へと行かなければならないのだろうか。もっとしばらくぬくぬくさせてくれたっていいじゃないか。

なんて、文句垂れつつギリギリの時間までこの幸せを噛み締めていようと企てていたら、足元のあったかい塊がなにやら蠢きだした。

その物体はもぞもぞと動き回り此方へと向かってくる。
少しだけ持ち上げ布団の下から顔を出したのは、ペットのロロだ。

ひょっこりと布団の隙間から覗くつぶらな瞳が魅力的だ。
3本の前足を器用に使って毛布の海をかき分けている。
ぺろぺろと私の頬を舐めながら前足で私の腕を優しく掻く。

これはご飯の催促だ。
うーむ。まだ布団からは出たく何のだけど、可愛いロロのためなら致し方ない。やっとの事で布団から抜け出し、スリッパに足を通してキッチンへ向かう。水差しの水を新しいのに換えて、ロロが喉を潤している間に餌の準備をする。

ロロは宇宙イヌなので、基本的にはなんでもよく食べるが、やはり一番食いつきがいいのは星屑だ。
市販の星屑もいいけれど、やっぱり流星群がきて星が降るたびに収穫した星屑の方が喜んで食べる。
スーパーで買った市販の星屑をカップ一杯、あらかじめ自分たちで収穫した星屑をこれまたカップ一杯。
軽く混ぜてロロに出す。
ロロはえらくお利口なので合図が出るまでは絶対に食べない。
代わりに(何故か)少し申し訳なさそうな顔でこちらをじっと見つめる。

どこまで待てるかなんてことはしない。お腹が空いてるのだからかわいそうである。
早々に良しの合図を出して食べるように促す。

一説では宇宙イヌの生体としてボスの合図がないと食べないという習性があるらしい。
それを聞いた時、自分がボスと認められているのかと思うとなんだかとても嬉しかった。

最近のロロは機嫌がいい。何故なら毎晩ケージの中で眠らないでいいようになったからだ。
今までは重力管理のできるケージでないと、寝ている間に周囲の重力を変化させてしまい、翌朝家中のものがしっちゃかめっちゃかになってしまったのだけど、その心配がなくなったからだ。
わたくし、ロロのために奮発致しまして。
宇宙イヌ専用、重力作用首輪を購入したのです!!

これをつけておけば、ロロが無意識に周囲を無重力化しようとしてもそれを打ち消してくれるのだ。
ということはつまり、今までできなかった一緒に寝るができるようになるということで、なるべく群れていたいロロのためにしかならない首輪なのだ。

財布は寒いが布団はあったかいっていうね。
週に一度のお隣さんに面倒をみてもらうというのはやめないけど、これで不安が一つ減ったのでまあ安い買い物だったと思う。

ロロがご飯を食べている間、自分はヤカンに入れた水が沸くのを待っている。
ショールを羽織ったけどまだ寒い。
あったかい紅茶でも淹れようと思う。
そういえばこの間もらった百日草のジャムがまだあったはずだ。紅茶に落として飲んでみようか。

ぽかぽかと暖かい日差しが窓から差し込む。
まだ寒いけど、今日はきっと洗濯日和だ。大きな音で呼びつけるヤカンを尻目に、眩しい朝の光を全身で浴びた。

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