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からっぽ工場

ベルトコンベアから流れてくるのは、あなたも知らない誰かの記憶。

やらかいもの、あったかいもの、まあるいものは省きましょう。
倉庫の中に溜め込んで、積みあげ重ねていくのです。

かたいもの、つめたいもの、とげとげしたものは
ぎゅうぎゅうにして箱に詰めます。
そしてまた、ベルトコンベアに流しましょう。

ベルトコンベアで流した先は
なみだ、うらみ、いかり、かなしみ、最後に、しっとの元へと運ぶトラック。

後ろの荷台に運び入れたら、どんどん世界へ出荷しましょう。
そうするのがルールなのです。

けれども最近困ったことに、お届け先が見つかりません。
迷子になった箱たちが、両手を上げて帰ってきます。
なんなら人手も足りませんので、そうすると工場は大変なことに。

仕方がないのでロボを投入。
だけどもコイツ、あまりにもなポンコツロボット。
指示を間違えて受信して、かたいもの、つめたいもの、とげとげしたものを抱え込んで
やらかいもの、あったかいもの、まあるいものを箱に詰めて流すのです。

ベルトコンベアはもうぐちゃぐちゃ。工場はもっと大パニックに。
だけどもいつも通りにやってきて、荷物を急かすたくさんのトラック。

工場長は逃げ出して、ロボットたちは大暴れ。
全部をまとめて箱に詰め込んで、勝手にトラックに積み込みます。

ベルトコンベアに流れてるもの全部。何もかも外へと出してしまったので
工場にはもう何もありません。

けれど、少し、心なしかスッキリしたように感じました。
だって工場の中にあったもの全部、倉庫に積み上がってたものたちでさえ
何もかも全部がなくなってしまって
見違えるように何もありませんので、スッキリしたのはそれは当たり前かもしれませんが。

ベルトコンベアはぐるぐる流れる。
とめどなく流れ続ける。
空っぽになった工場で、荷物もないまま回り続ける。




ごちゃ混ぜの箱を乗せたまま、世界中を周ったトラック。
なみだ、うらみ、いかり、かなしみ、最後にしっとの元へと荷物を運びにまわります。
彼らの元に届いた荷物に
かたいもの、つめたいもの、とげとげしたものに紛れて
やらかいもの、あったかいもの、まあるいものが届くようになったのですが、それはまた、別のお話。


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