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言い訳

眠れないから言い訳に、あなたのこと想像してみる。
目を瞑る言い訳にあなたを思い浮かべてみるの。
瞼の裏側、真っ暗闇にあなたは中々来てくれないから、あたし少しだけ焦ったい。

あたしに笑いかけてくれたあの日こととか、一緒になって喧嘩した時のこと思い出す。唇から覗く八重歯が、とってもキュートであたし、いつも少しだけ注目しちゃう。

あなたの声も、あなたの匂いも、今はもうなんだかぼんやりしちゃって、いつもちょっぴり味気ない。ああ、あなたが今ここで目の前に現れればいいのに。なんて、叶わない妄想膨らませるの。
ああ、でも少し、ほんの少し、思い出すのもあったりして、あなたが握ってくれた手のひらの温度、一緒にみた花畑の青の空の色。
瞼の裏に、手のひらに、そっとじんわり浮かび上がる。

その頃にはもう、だいぶ空はしらんできてしまっていて、ああ今日も眠れなかったか、なんてちょっとがっかりするのだけれど、心はだいぶ穏やかで、幸せな気持ちに包まれているの。

あたし、あなたの名前ももう思い出せないのだけれど、こんなに手もしわくちゃだけど、ぼんやりしちゃった頭でもちゃんと覚えてることはあるのよ。
なんて、今すぐ誰かに自慢したいくらい。

ようやく微睡む景色の中で、遠くにあなたの声が聞こえた。
記憶の中のあなたより、しわがれた声のような気がした。

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