#23.ポップ山脈
旅先だと生活リズムが整う気がする。
朝から予定を入れるのでいつもより早起きをするし、日中たくさん活動するので夜も早くに眠れる。
いつもならつい夜更かししてしまうけれど、昨日も布団に入った瞬間に眠ってしまった。
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まだ日が昇りきらない早朝に起きだし、バルコニーへと向かう。
すこし肌寒いけれどすっきりと爽やかな朝の風にあたり目を覚ます。
日の出に照らされたポップ山脈は、カラフルを超えて神々しい。
ポケットに入れたままだったボイスレコーダーのスイッチをオンにして、風の囁きや朝露の落ちる音を拾う。
何か喋ろうかともおもったけれど、起き抜けで声が出ずやめた。
しばらくして起きてきた担当がドリップパックでコーヒーを入れてくれたので喜んでもらう。
動きやすい服装に着替えたら、すぐに出発だ。
今日はポップ山脈の麓地帯を探索できるツアーに参加する。
ホテルのロビーで他の参加客と集合し点検をとり出発する。
ポップ山脈は森林ではなく巨大な岩山である。
火山の際のマグマが冷え固まり生まれたとか、クレーターによってできた山々だとか諸説あるが、そのどれもがまるくカラフルな水玉模様を作り出した理由にはならないらしい。
活火山が連なる山脈で、頂上付近は有毒なガスが蔓延しているため山を登ることは出来ないが、麓や途中までなら探索をすることはできる。
その独特な地形はまるで迷路のようで探索は人気のツアーでもある。
ビビッドカラーの地面はゴツゴツとしている。
触るとひんやりとしていて気持ちいい。
山登り用のスニーカーでぐんぐん進む。
生物どころか植物もほとんどない惑星なので、見晴らしは最高にいい。
山の上の方には、所々雪が積もっているところもある。
カラフルなカップケーキに粉糖をまぶしたようでとても可愛らしい。
探索はツアーなのでガイドさんがいる。
地形の特徴などさまざまな事を逐一解説してくれる。
たまたまできた窪みに水がたまりできた湖がハートの形をしているところから、ここで愛を誓い合ったりプロポーズするカップルが大勢いるそうだ。
火山地帯ということもありいくつか温泉が湧いているそうで、途中足湯ができるスポットに立ち寄ったのだけれど、連日の移動に重ねて硬い岩山を歩いてきた足には最高のご褒美となって、しばらく抜け出したくなくなった。
お昼は山の登り口あたりに屋台通りができていたのでそこで食べ歩きをした。
プラナタリネスは無人の惑星なので、新たな食文化との出会いは残念ながらない。そのかわり、食べなれた屋台料理がたくさんあり、ついあれもこれもと買ってしまい食べ過ぎてしまった。
昼食後に再度集合し、展望台へと向かう。
頂上ほどではないが、山の中腹(もしかしたらそれよりももっと下)に見晴らしのよい展望台が設置されていた。
下を覗くと、先ほど見に行ったハートの湖や、足湯をした場所、色々なところがよく見えた。
青い空に、ピンクやきいろ、紫オレンジ水色など、カラフルな山が映えて実にポップだ。
記念写真タイムなどを済ませたらスタート地点へときた道を戻る。
午後3時頃、冒険心満たされるツアーが無事終了した。
山で湧いた温泉をホテルまで引いてきているそうで、すぐさま二人、大浴場へ向かうことにした。
少し熱めの温度で、独特の匂いがするお湯だったが、肩まで浸かると全身から疲れが吹き出すようで天国のような心地になった。
ホテルの部屋に戻る頃にはぐでんぐでんになっていて、二人してそのまま寝落ちてしまった。
夜、遅くなりすぎる前になんとか起きれた我々は、昼寝をしてすっかり元気になったので、レストランに行って夕食を取った。
豪華なディナーに舌鼓を打ち、腹ごなしに少し外にでて外気にあたる。
すっかり日の落ちた外は、カラフルな彩りさえも姿を潜めて、星々の輝きだけが注目を奪っていた。
同じような景色は何度だって見たことがあるのに、なんなら、来た時に遭遇した宇宙クジラのほうがよっぽど幻想的な景色だったにも関わらず、美しい夜空になんだか涙がでた。
もう一度温泉に入るという担当と別れ、先に部屋に戻る。
明日はついに最終日だ。名残惜しみながらも一足先に今日を終えることにした。
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