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【暴論15】テロリスト殺害を正義の執行と言い切るアメリカの傲慢

2022年8月1日に、アメリカのバイデン大統領は、武装勢力「アルカイダ」の現指導者アイマン・アルザワヒリ容疑者(71)をアフガニスタンにおいて対テロ作戦で殺害したと発表した。バイデン大統領はアルザワヒリ容疑者の殺害について、次のように発言している。

今や正義がもたらされ、このテロリスト指導者は亡き者となった

BBC NEWS

私はこの発言に異常な違和感を感じる。

1.テロリスト殺害を正義と言い切る

アルカイダはアメリカが敵視するテログループではある。アルザワヒリ容疑者はその指導者として、アメリカから見れば犯罪者なのだろう。しかし司法の手に委ねずに即殺害をすることは正義なのかと疑問に思う。

もちろんテロリストを逮捕するなんて悠長な真似はできないという意見もあるだろう。そんな発想は平和ボケした日本人のもんだとも言える。しかし最初から逮捕をすることなど想定していなかったように思える。

2011年にウサーマ・ビン・ラディーンが殺害されたときも同様の感想を抱いた。当時オバマ元大統領も彼を殺害したことについて、「正義が執行された」と発言したときに猛烈な違和感を感じた。

2.海外で軍事ドローンを飛ばしている

本作戦において米中央情報局(CIA)が実施したドローン攻撃で死亡したという。当たり前だが、これはアメリカ国内の話ではなく、外国領土のアフガニスタンの軍事行動である。アフガニスタンは中央アジアの国なので、当然アメリカと領土が接していない。

これはアメリカだからごく当然の行動に思われそうである。しかしもしロシアや中国が同様の行動をヨーロッパの国やメキシコかカナダでやっていたら大問題になるだろう。中国がアジアで領海侵犯をしているのは頻繁に報道されるものの、中国でも堂々と領空内に軍事ドローンを飛ばしてミサイルを打ち込むような行動はしない(はず)。

当然のように海外においても軍事行動を行うのがアメリカという国なのである。

3.アメリカはアフガニスタンから撤退している

そもそもアメリカは2021年8月にアフガニスタンから撤退している。2001年以来20年にわたって戦争を継続していたが、撤退により長き戦争が終わった。しかしその直後にタリバンによって政権を奪取され、今もタリバン政権がアフガニスタンを支配している。

アメリカにとってアフガニスタン撤退はベトナム戦争以来の大失態であろう。それを主導したのも他ならぬバイデン現大統領である。バイデン大統領からすれば、テロリストを殺害することで少しでも汚名を返上したかったのかもしれない。

そんなアフガニスタンでアメリカは勝手に(まさかタリバン政権に事前に了承は取っていないだろう)軍事行動をしていたのである。

勝手に戦争を始め、都合が悪くなると撤退し、その後は知らんという態度をとるのがアメリカなのである。

4.ますます敵(テロリスト)を作る

2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ以来、アメリカはアルカイダやタリバンのイスラム過激派のテロリストと戦ってきた。しかし20年以上経った今もその戦いの終結は見られず、むしろますます悪化している。それはアフガニスタンの事例を見ても明らかである。

今後テロリストがアメリカ本土を攻撃することは極めて困難だろう。実際9.11以来テロリストがアメリカ本土でテロ活動をしたことは一度もない。割と不思議なのは、アメリカでは銃乱射事件はしょっちゅう起きているが、それはアメリカ国民がやっていることで、テロリストが実行したのは(知る限り)一度もないことだ。なんでやらないかとちょっと不思議に思える。

テロの被害が拡大するのはアフガニスタンのような、テロリストが潜伏する地域である。このような国では年々テロの被害が増えている。しかしアメリカからすれば対岸の火事なのである。ただ敵を増やし、テロを増産するのはアメリカ自身の勝手な行動によるものに思えてならない。


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