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【マンガ感想文1】100%独断と偏見で選ぶ大長編ドラえもんの傑作5選

私にとってのマンガ人生はドラえもんから始まった。なかでも雲の王国が一番好きである。詳細は後述するが、大人になった今読んでも深い内容である。しかし周りの友人知人にこの話をすると、意外とみんな雲の王国を知らないということに衝撃を受けた。

君たちドラえもんは日本人の宝ですよ!読みましょうよ。

というわけで私の好きなドラえもん大長編シリーズを5つ解説する。超個人的な意見だが、教科書に採用してもいいとすら思う。豊かな感情を育て、未来の科学技術に触れ、人間の複雑さを学ぶ最良の書である。

1.のび太の恐竜

記念すべき大長編ドラえもんである。第一作に恐竜を持ってくるとは、さすが藤子先生は少年の心をわかってらっしゃる。物語はのび太が偶然恐竜の卵を発掘し(これ何気にとんでもなくすごいことである)、それを復元したらフタバスズキリュウ(正確に言うと、首長竜は恐竜ではない)の卵であり、赤ちゃんが誕生する。のび太はその子をピー助と名付ける。

現代ではピー助は生きられないと考え、のび太たちはタイムマシンで古代の世界にタイムスリップする。しかしトラブルが発生し、のび太たちは同時代のアメリカに行ってしまい、現代に変えるためには日本の位置まで移動しなければならなくなった。そこから長い旅が始まる。

個人的には作中でドラえもんが言っていた、「人間の歴史なんかせいぜい1万年、それを1万回繰り返してようやく1億年という年月になる」ということが、歴史の重みを感じさせる。

ちなみに私はこの漫画を読んでずっと日本に恐竜はいないと信じていたが、福井県や北海道で日本でも恐竜が発掘されている。これらは作品登場後の話なので、藤子先生に非はない。

2.のび太とブリキの迷宮

のび太の家に謎のリゾートホテルの案内が届く。それはどこの観光ガイドにも載っていない、誰も知らない謎のホテルだった。案内に導かれていくとそこには人間が一人もおらず、ブリキのおもちゃが取り仕切る不思議なホテルだった。ひょんなことからドラえもんとはぐれ、トラブルに見舞われたのび太はホテルから逃げ出してしまう。

ジャイアンたちに脅されて再度ホテルに訪れると、おもちゃの軍隊に襲われる。軍隊を撃退すると、人間の少年が現れる。少年の世界は発達しすぎたロボットが人間を支配する体制になっており、ドラえもんは敵に捕らえられたという。少年とドラえもんを助けるために、敵のロボットと戦うことになった。

この話で衝撃だったのは、ドラえもんが早めの段階で敵ロボットに破壊されて海に投棄されてしまうところだった。これまでも一部の秘密道具が使えないことはあったが、これは初めてのケースだったのでとても驚いた。発達しすぎたロボットや人工知能が人間の体と脳を著しく退化させたというのも、なんとなく未来を示唆しているようで怖かった。

3.のび太と日本誕生

いつもの通りママと喧嘩をして家出をすると宣言するのび太だったが、住むところがどこにもないことを知る。それならいっそ人間がいない昔の日本に行っちゃおうというぶっ飛んだ計画をドラえもん一行は実行に移す。

秘密道具を使って生活できる環境を整えるのび太たちだったが、突然現地住民に襲われる。彼はギガゾンビと呼ばれる呪い師によって襲撃され、奴隷にされそうになっていたという。たかが原始時代の呪い師とあなどるドラえもんたちであったが、実はギガゾンビは恐ろしい相手であることを知る。

ペットを作ろうと言い出した時に、複数のタネを混ぜてペガサス、ドラゴン、グリフィンを作るというのび太の発想は天才的であった。ギガゾンビの使い魔がいわゆる遮光土偶だったので、今でもちょっと遮光土偶が怖い。

4. のび太の鉄人兵団

スネ夫のラジコンロボットを羨ましがり、のび太がでっかいロボットが欲しいとわがままを言う。ドラえもんは暑くてイライラしていたので北極に逃げるが、そこに巨大なロボットのパーツらしきものが転送されているのを発見する。

ロボットを組み立てるとそれは強力な戦闘ロボットであることがわかり、ドラえもんたちはこれを秘密にすると決めた。そこにリルルという少女が現れ、そのロボットを探していた。正式な持ち主だとわかりのび太はロボットを返却するが、実は彼女は地球侵略を目論むロボット兵団の尖兵だった。

これもまたすごい深いテーマだと思う。リルルはのび太以前に生の人間に出会ったことがなく、おそらく人間は野蛮で馬鹿な存在だと教えられてきた。のび太たちと行動することで、人間もまた感情と知性を持った存在であることを知り、侵略を進めるべきか深く悩むことになる。なんとなく戦争や宗教対立を思わせる。


5.のび太の雲の王国

小学校高学年になっても雲の上に天国があると本気で信じていたのび太は、雲の上に土地を作り、本当に天国を作ることにした。思い通りの世界を建設していると、違う雲の上の土地にたどり着いてしまう。そこには本当に雲の国が存在した。

既存の雲の国は地上世界の人間たちが地球を汚染するのを見て、このままでは地球環境が破壊されてしまうと危惧する。そこで強硬手段に訴えようとする。その情報を得たのび太たちは雲の国から脱出し、対向武力を準備する。

この作品はこどものときと今ではかなり印象が変わった。子どもの時は環境破壊する人間は滅ぼされても仕方がない悪い奴らなのだと思った。少し成長して、問答無用で人間世界を壊滅させる前に、話し合いとかしろよと思った。今はこれが世界情勢そのもの、つまりみんなが勝手な正義を名乗っているのだと思う。

裁判でしずかちゃんが証言しているが(これもすごい勇気ある発言だった)、確かに人間は愚かな行動をとっているけれど、なかには現状に憂慮して変えようとしている人は決して少なくない。そういう人たちを信じることも大切だと思う。急進的な解決策は必ず歪みと禍根を残す。緩やかな変化こそ実は最も大切なことなのである。

次回予告

新型コロナによって延期になっていたのび太の新恐竜であるが、来月公開になるようだ。少年の心を取り戻すために見に行こうかと思う。



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