見出し画像

東電を責めるほど苦しむ国民

東京電力ホールディングスが家庭向け電力料金の3割値上げを経済産業省に申請した。国民からすれば怒り心頭かもしれないが、それなりに東電にも理はある。

1.エネルギー資源の高騰

日本はエネルギー資源の輸入国であり、実に90%近くを輸入に依存している。そのためエネルギー市場の国際市場価格に大きな影響を受ける。以下のグラフは各国のエネルギー輸入依存度を示したものである。

電気事業連合会HPより参照

2023年現在ロシアーウクライナ戦争はいまだ終息する気配すら見えない。ロシアは世界有数のエネルギー資源国であり、エネルギー資源の国際市場に大きな影響を与える。事実ヨーロッパの電気料金は日本以上に上がっているらしい。そんな中で見たら、3割の値上げはマシな方なのかもしれない。

2.新電力の乱立と没落による市場の混乱

2016年の電力自由化以来多くの新電力と呼ばれる企業や事業が生まれた。これらの企業の多くは太陽光や風力のような再生可能エネルギーによる電力を売りにし、固定価格買取制度を利用していた。

しかし現在新電力の多くは危機に瀕している。それ自体は淘汰が進んだだけなので構わないが、いったん自由化の波と再生可能エネルギーの乱立が起きたら、あとは混乱だけが残った。旧電力会社にとって、安定した収益源を失い、厳しい価格競争にさらされる結果になった。

資本主義経済において競争は歓迎されるものだと考えられている。しかしそれはインフラにおいては必ずしも正しくない。電力のような極めて重要なインフラはある程度の余裕がなければならない。

電力会社にとって、燃料が高すぎるという理由で電力を止めるという選択肢はありえない(普通の企業ならあり得る)。これは水道や通信会社においても同じことである。

3.福島第一原発の裁判費用

東電の凋落の原因は福島第一原発の事故である。この事故はいまだに精算されていない。東電元会長らは事故対策を怠ったとされて業務上過失致死罪で起訴されている。二審で無罪になったものの、この裁判はまだ終結していない。事故の賠償費用は数兆円の規模である。

被害者の心情は理解できるが、このような裁判や訴訟を起こすたびに国民の首を絞めている。賠償金を請求するほどに東電には新規の発電所を建設する資金がなくなり、古い施設を使うほどにコストが高くなる。

2011年以来ほとんどの原発は停止している。原発を停止しているだけエネルギーの安全保障は疎かになり、電気代は上がり、資源を無駄遣いしているということを理解してほしい。


この記事が参加している募集

SDGsへの向き合い方

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?