私が生まれる前からあるこの桜の木の下をこうして白装束を纏い歩く日が来るなんて。 胸のうちから沸くなんとも呼びがたい心持ちの中、 私はある日おばぁちゃんに聴いた物語を思い出していた。 私がまだちっちゃな頃、 お日様の照る耕起前の畑で遊んでいると、 雨粒がさーっと私の体に降り注ぐことがよくあった。 その日は特別大粒の激しいお天気雨で、けどなぜかいつもと違う、暖かくて心地好さを感じる雨粒だった。 帰っておばぁちゃんにそのことを話すと、 おばぁちゃんは狐の嫁入りの話をしてくれ
ある夜思ったんだね。 夢を真実と捉えるか、夢と捉えるのかで人生の豊かさは少し、意味合いを違えてくる。 夢は夢のままだからいい。 君は格好よさげに言って今ほらそうして飛んでいる。 夢が夢のままだったとしたら君は今飛べてないはずなのにね。 どうでもいいけどほら、朝の虹光の雫石が、あんなところに。 良いねえ。。あれは綺麗だ。 ぼくあれ好きだ。 取ってこようかねぇ。 賢い鐘がなる。 さぁ僕らもう帰らないと。 星々が巡り、瞬き合い、鳴り響いている。 また明日。
はち子の1日は馬達の餌やりで始まる。 朝日を浴びながら、はち子は思う。 「わたしこのまま年を重ねるのかしら」 ふと空を仰ぎ、木々の間に木漏れぶ太陽の光に目を細め再び思う。 「まぁ悪くはないわね」 はち子はすべてを知っている。 そして欲がない。 でも女の子として生まれてきたはち子はまた次の日も思う。 「わたしこのまま年を重ねるのかしら」 馬達はそんなはち子を見て思う。 「そろそろこの鉢から出ていって、ついでにこの子も連れていってあげようか。 せっかく生ま
なまけものの詩 怠け者の「うたちゃん」は、毎朝お母さんに怒られている。 「ほら、うた!さっさと起きてお手伝いしてよ!」 うたちゃんはいつも怒られている。 「うた!これはここにしまっておいてって何度も言ったらわかるの!」 おかあさんの「!」はいつも「びくんっ」とさせられるから嫌だ。 うたちゃんは今日はいいこにしてたいなと少し思った。 うたちゃんにはひとつ癖があって、ついつい爪を噛んでしまうのだ。 その癖のことはおかぁさんももちろん知っているんだけど、その時ばか
あのね、 あなたを生んであげられなかったこと、ごめんなさい。 あのね、 わたしたちはあなたが大好きで、でもそれ以上に自信がなかった。 言い訳ね。 あのね、 謝ることなど許されないと自分を責めました。 でもそれこそが甘えだと気が付きました。 わたしは今生きていて、あなたを同じ所に招いてあげられなかった。 でもね、 そのことに心押し潰されても幸せになろうと決意しました。 あのね、 それからね、 あなたとやはり会いたいと思ったんです。 あのね、 でもね、
星の花って知ってるかい? それはね、見える人にしか見えない花で、本当は誰しもに平等に咲いている花なんだよ。 なんで見えない人がいるか知っているかい? 見ようとしていないんだ。 僕らって見えてるものに蓋をすることが出来るからね。 「それはきっと綺麗だろぅなぁ。。」 ベッドの上に横たわる君はようやくポツリ呟いた。 きっとそんなことわかってるってわかってるんだけど、僕の話せるのはこのくらいで、君のがよっぽどのこと知ってるって伝わるよ。 僕は次の言葉を紡ごうにも出
わたしはあなたが嫌いです。 誰かを嫌うと自分の中の何かがなくなっちゃうような気がする。 でもそれってほんとうは そこに命がありますね。 と言っているだけですね。 取り繕うのではなく、嫌いだ。とはっきり言えばいいんじゃないかと僕思うんです。 それは あなた生きてますね。 わたしも生きてますよ。 っていうただの「こんにちは」の挨拶のようなもの。 大切なのはただそれだけだと認識すること。 あなたの命とわたしの命を認めているという自分の意識の確認であるということを