見出し画像

【ヴィジュアル系】2023年下半期ベストトラック大賞(前編)

気が付けばクリスマス。
あっという間に2023年が終わろうとしているのだけれど、よく聴いた楽曲を数えてみると、確かに1年が経ったのだなと痛感せざるを得ない。
半年に1度の恒例企画ということで、完全に主観でお気に入りのナンバーを大発表。
ランキング形式にしてはいるけれど、優劣をつけるものでもないので、余興としてご覧いただければ。

① 2023年7月~12月に発表された楽曲であること
② 2023年12月現在時点でサブスクリプションサービスで配信されていること
③ V系シーンをメインフィールドとして活動しているアーティストの作品であること

過去リリースされた作品のサブスク解禁や、アルバムのリリースによって過去に発表されていた楽曲が再収録された場合は、オリジナルのリリース時期を基準日とさせていただくというレギュレーションで。
なお、ヘッダーの画像は、好きな曲はあれど、サブスク対応していなかったと思われる作品群。
こちらも機会があれば併せて聴いてみてほしい。


第20位 ニューロン / アマミツゝキ(「ニューロン」より)

Ba.lvyのバースデーにリリースされたデジタルシングル。
どちらかと言えば、淡い色彩を連想させる楽曲を得意とする彼らだが、この「ニューロン」は、硬質でスリリングなサウンドが特徴。
ヒリヒリとした緊張感が漂う、新境地的なダークチューンに仕上がっている。
しかしながら、歌詞における共感性という点においては不変。
日常を生きていれば、負の感情に囚われてしまうことだってあるわけで、妄想を言語化したようなリリックは、実はリアリティと背中合わせ。
違いを見せつつ、らしさを貫く佳曲であったと言えよう。


第19位 ROMANCE DAWN / 洗脳Tokyo(「えろとぴあ。」より)

前作から半年も経たずにリリースされた、2023年の2枚目となるフルアルバムより、ラストを飾る1曲を選出。
イントロを聴いた段階で、名曲だぞ、と思わせるワクワク感。
スケールの大きさや、アート性を見せつけると、メインの歌メロに入ってからは純粋すぎるほどのまっすぐさを突き付ける。
奇才であるのは間違いないのだが、突き放すのではなく、拾い上げるような楽曲が増えてきた彼ら。
切ない余韻は、次の展開への期待感も高めてくれた。


第18位 おわらないせかいのおわりかた / イロクイ。(「おわらないせかいのおわりかた」より)

もう、タイトルからズルいじゃない。
12年ぶりの新曲となったイロクイ。のデジタルシングルは、過去の作品「おわらないせかいのうたいかた」との関連性を示すキラーチューン。
メルヘンチックな世界観をサウンドにも落とし込んだ、かつてのイロクイ。の面影は十分に残しつつ、ゴリゴリのヘヴィネスを加えて2023年版にアップデートしているのもポイントだ。
仮に当時の彼らに触れていなかったとしても名曲だと言えるナンバー。
ただし、過去の楽曲を連想させるフレーズ、現在の活動にも繋がっていくキーワードが次々に連鎖していく伏線回収的な歌詞もリアルタイム世代にはたまらないのでは。


第17位 抗清楚型黒撫子 / シェルミィ(「抗清楚型黒撫子」より)

「白百合呼吸困難」の姉妹作として制作されたシェルミィのデジタルシングル。
白と黒、相反する色彩をテーマにしているように見えて表裏一体。
ベタではあっても、過去の楽曲とのリンクが見られるとニヤリとしてしまうのがファン心理というものだろう。
楽曲としても、疾走感を持って駆け抜ける、パンキッシュな質感すらあるアッパーチューンで、V系リスナーが受け入れやすい質感。
ただし、エフェクトをかけた歌声や、ウネウネしたギターリフなど、どこか変態性を感じさせるギミックも多く仕掛けていて、なんとも中毒性を高めているのがシェルミィらしかった。


第16位 グルグルさん / 3470.mon(「みんなのうた」より)

やはり、平一洋というヴォーカリストはカリスマ性がある、と再確認させた3470.monの1stフルアルバム。
その中でも、リードトラックである「グルグルさん」が熱い。
ハネるようなリズム、歪んだギター、ひとりで輪唱するようなコーラスワークなど、それを取り込んでお洒落なピアノロックが成立するのだろうか、という要素をすべて見事に昇華。
力を抜いて歌っているように見えて、しっかりと熱量が伝わってくる表現ができるのも彼の才能なのだろう。
もちろん、それを見抜いて最大限に能力を発揮するよう楽曲を支えるKey.SYUTO、Ba.RENAも含めて、彼らほどハイセンスで天才肌な集団は、他にいないのではなかろうか。


第15位 フィクション≒ノンフィクション / 狂想ドッペル(「フィクション≒ノンフィクション」より)

V系をメインフィールドにしているか、と問われるとグレーゾーン。
ただし、サイドプロジェクトとしてラリレロが始動するなど、親和性が高い活動が目立ったことを踏まえて、ランクインさせていただく。
これまでにないファンタジックなサウンドと、ダンサブルなリズム。
シャウトパートはあるものの、幻想的なアプローチが目立つ楽曲に仕上がっていて、聴けば聴くほど「フィクション≒ノンフィクション」というタイトルがより意味深になっていくのが面白い。
キャッチーさは過去最高で、導入の1曲になりそうなナンバーである。


第14位 ヒーローごっこ / 梟(「マイノリティ・マイノリティ」より)

待望のフルアルバムをリリースした梟。
ピアノロックの可能性を追求し、大人びた雰囲気の楽曲も多い彼らだが、お洒落な流れの中に放り込まれる衝動性の高いバンドサウンドのインパクトといったら。
瞬間を切り取る刹那的な疾走感と、溜めに溜めたからこそのカタルシス。
単体でも十分惹かれたであろう楽曲が、その個性を活かすためのお膳立てによって、更に何倍も格好良く聴こえてくるのだから、ランクインは必然だろう。
幅の広さは同じでも、グラデーション的なアプローチで統一感を高めている3470.monと、ギャップを使って盛り上がりを生む梟。
双方がしっかり個性化されていて、ヴィジュアル系ピアノロックがサブジャンルとして成立する日が楽しみだ。


第13位 エイルの丘 / NETH PRIERE CAIN(「エイルの丘」より)

古の継承者を標榜するNETH PRIERE CAINが、丘ソングに殴り込み。
王道のコード進行を引っ提げて、切ないミディアムナンバーに仕上げている。
このテンポ感であったり、オクターブ上と下でひとりユニゾンを展開するサビのコーラスワークであったり、ベタをベタと気付かせない工夫が効いていて、埋もれずに印象に残る1曲に。
一方で、ベタであることに違いはないので、耳馴染みの良さは際立ち、ノスタルジックな感傷を連れてくる。
またひとつ、丘ソングの名曲が誕生した。


第12位 被告人Aの告白 / 0.1gの誤算(「被告人は、心神喪失の状態にあり…」より)

"洗脳と贖罪"をテーマにしたミニアルバムから、リードトラックとなった「被告人Aの告白」。
コロコロと曲調が変わるカオティックさが売りであるものの、そのフレーズのひとつひとつは古式ゆかしいヴィジュアル系の文脈が下地になっている。
持ち前のコテオサ的リズム感や、和風あるいはオリエンタルなメロディも織り交ぜて、ダークやデカダンなアプローチにおける新解釈。
テーマ性においては、メンヘラ系へもリーチを伸ばしていて、貪欲にシーン全体を巻き込もうとする0.1gの誤算の戦略性も透けて見えるのでは。
勢いが嘘ではないことを示した1曲。


第11位 Wander With Wonder / LIPHLICH(「Wander With Wonder」より)

LIPHLICHによるアルファベットシリーズの第三弾となったデジタルシングル。
民族音楽風のサウンドに、エキゾチックなコーラスワーク。
明らかに異質なのだが、こんな異国情緒あふれたナンバーこそLIPHLICHに求めていたシネマティックな演出だ、というリスナーも多いのでは。
これは呪術的な儀式か、それとも伝統的な祝祭か。
アジアンテイストを強く連想させるサウンドは、独特なリズムによって大いに聴いた者の想像を膨らませる。
脳内に無限の世界を作り出す、音楽のポテンシャルを最大限に引き出すナンバーであると言えるだろう。


妥当だったか、意外だったか。
いずれもサブスクで聴ける楽曲たちなので、2023年の振り返りをしてみては。
後編は年の瀬に。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?