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【ADVゲームレビュー】極限脱出ADV 善人シボウデス / PlayStation 4 (2017)

ZERO ESCAPE トリロジーパック  / PlayStation 4

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2012年にリリースされ、2017年にダブルパック版が発表された"極限脱出"シリーズの第二弾。


あらすじ


気が付くと、エレベーターの中に閉じ込められていたシグマ。
脱出できなければ落下するという状況の中、なんとか脱出を果たすも、その先に待っていたのも、閉鎖された巨大施設であった。
首謀者の代弁者的なキャラクター"ゼロ三世"が言うには、脱出するには"ノナリーゲーム アンビデックスエディション"と名付けられたゲームでポイントを集める必要があるとのこと。
首謀者もその目的もわからないまま、シグマは同じように集められた老若男女8名とともに、生と死を賭けた裏切りゲームに巻き込まれる。



概要/感想(ネタバレなし)


「9時間9人9の扉」から3年後となる2012年、Nintendo 3DSおよびPlayStation Vita用のソフトとしてリリース。
その後、「ZERO ESCAPE 9時間9人9の扉 善人シボウデス ダブルパック」としてPS4等にも移植されている。
実はPS5を購入する前、Nintendo 3DS版をやってしまおうかと思っていたのだが、やめておいて良かったな、と。
作中に「9時間9人9の扉」の致命的なネタバレを含んでいるうえ、舞台設定における理解の観点からも、順番にプレイするのが妥当。
ダブルパック、またはトリロジーパックを購入するのが無難であろう.

主人公はシグマ、ヒロインはファイ。
第一弾の淳平、茜コンビからガラッと変えてきているが、四葉が継続して登板していることで、世界線が続いていることを示唆している。
ゲーム性もおおむね第一弾を踏襲しているが、肝となる"ノナリーゲーム"のルールは大きく改訂されており、閉鎖空間から脱出するためのデスゲームという様相が強まっていた。
加えて、ゼロ三世というマスコット的なキャラクターが配置されているので、「ダンガンロンパ」シリーズに寄せたという向きもあるのは、まぁ、納得である。
ただし、"極限脱出"シリーズとしての世界観は失われておらず、ミステリアスな雰囲気を多重化させるための正当進化と見るほうが適切。
「9時間9人9の扉」は前フリでしかなかったのか、という重厚感を纏っていて、すべてのルートで目が離せなかった。

良かった点は、シナリオの分岐がわかりやすくなっており、フローチャートで分岐点まで戻ることが可能なこと。
一度クリアした脱出ゲームを何度もプレイする必要がなく、常に新鮮な謎解きと向き合うことができる仕様になっていた。
別解を出すことによってTIPSが補完されていく仕組みも、コンプ要素として機能している。
一方、パズルの難易度が更に上がった感があり、解き筋はわかっていても、単純にクリアが面倒というものがしばしば。
ゲームの外で覚えていなくてはいけないパスワードが複数あるのも厳しい。
そういうときのためのメモ機能か、とは思うものの、ファミコン時代のパスワードを紙に書いて保存する文化を復活させるようなランダム文字列(としかそのときには見えない)をゲーム進行の肝にされるとは。
検索すれば攻略サイトがいくらでも見られる時代とはいえ、もうちょっと感覚的に覚えていられるような文字列にするだけでも印象が違ったのだが。

ボリューム感は圧倒的に増していて、真相がわかるにつれて、かえって謎が深まるシナリオも圧巻。
ひとつ綺麗に終わらせたうえで、次回作に繋ぐ導線はあざといとしか言いようがない。
もともとプレイするつもりでトリロジーパックを買っているものの、これは、第三弾もやらないと、という意欲を駆り立てられた。



総評(ネタバレ注意)


本作をプレイしたことにより、第一弾での考察がまるっきり外れていたことがわかったのだが、そのときに感じた矛盾も、それにより解消された。
"シュレーディンガーの猫"をテーマに据えて、未来の選択が過去に干渉する、というルールをゲーム内に持ち込んだことで、過去に救えなかったはずの登場人物が、過去の出来事を変える事象の発生ポイントより前の時点で存在する意味を示していた。
Kの正体というくだりがあることで、その点がとてもわかりやすくなったように思う。

マルチシナリオの使い方も絶妙。
トゥルーエンドに辿り着くには、他のサブエンドをクリアしていなければいけない、というゲーム的な制約に意味を与えており、やればやるほど好奇心がくすぐられる。
そのうえでトゥルーエンドで判明した事実の驚きが絶大。
ひとつひとつ、ファクトを積み上げてきた実感があり、黒幕の正体もなんとなく見えてきたぞ、と思っていた矢先に突き付けられるどんでん返し。
この見事さは、ノベルゲームの主人公、という設定を上手く使ったトリックに尽きるだろう。
四葉とアリスがいることで、天明寺の秘密がわかりにくくなっているのだが、コールドスリープが出てくるあたりから、第一弾の登場人物との繋がりが見え始めてくる。
だとすると、ゼロの正体は......と思わせるところまでが手のひらの上。
まさかここで、主観を疑え、が登場するとはな。
天明寺や謎の老婆がちょうど良い目隠しになっていて、そこまで気が回らなかったもの。

第一弾でのエンディングでの引きとなっていたアリスが、全然重要人物じゃなかったじゃないか、というブラフ感も抱えつつ、ストーリー全体での謎はむしろ深まっていて、完全にすっきりと終われるゲームではなかったな。
過去を改変することで、現在を生きる者たちの想いはどうなる、という「STEINS;GATE」的な葛藤を抱える天明寺の役回りも気になるが、なかったことにしないためにも、はやく第三弾をプレイしないと。

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