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【ADVゲームレビュー】極限脱出 9時間9人9の扉 / PlayStation 4 (2017)

ZERO ESCAPE トリロジーパック  / PlayStation 4

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2009年にNintendo DS用のソフトとしてリリースされて以来、様々な機種に移植されている"極限脱出"シリーズの1作目。


あらすじ


主人公は、"ゼロ"と名乗る男に拉致され、客船の一室で目を覚ました淳平。
水没しかけた室内からかろうじて脱出すると、そこには同じ境遇の男女8人が連れて来られていた。
ゼロは、船内アナウンスにより"ノナリーゲーム"の開始を宣告。
集められた9人は、船が沈没するまでの9時間の間に、9の扉を開いて船外への脱出を試みることになる。



概要/感想(ネタバレなし)


今更感が出てしまってPS4を持っていなかったのだが、PS5がようやく購入できたため、遅ればせながら遡ってやろうと思っていたゲームをプレイできるぞ、と。
手始めに、セールで安くなっていたので、「ZERO ESCAPE」三部作のトリロジーパックをダウンロードしてみた。
シナリオ、ディレクションを打越鋼太郎が担当。
クリック形式の脱出ゲームを基盤としたマルチエンド方式のアドベンチャーゲームとなっており、タッチペンを効果的に使うNintendo DSとの相性は良かったのだろうな、と推測される。

脱出の難易度としては、そこまで高くなかったが、数字根や16進法など、事実上の計算問題が数多く登場するため、数学が苦手だと苦戦しそう。
謎のタネはわかっていても、パズルを解くのに時間を要する、ということもしばしばあった。
文系の僕は、初見で1周回るのに3時間ぐらい。
数字パズルが得意であれば、もう少し短縮できるのかもしれない。
もっとも、シナリオ上はタイムリミットがあるものの、ゲームの中で制限時間を意識する必要はなく、何かに躓いたとしてもゲームオーバーになる懸念はなし。
シナリオ分岐の考え方や、フラグの立て方もわかりやすいので、全ルートを回収したとしても、べらぼうに時間を要するということはないのかと。

その意味ではコンパクトと言え、この手のゲーム特有の疑心暗鬼やスリリングな展開は控えめなのだが、その中で展開されるシナリオ運びが秀逸。
全員が無事に、とはいかないダークさ、不気味さも織り交ぜながら、複数のルートを行き来することで全体像が見えてくる過程が面白い。
1回ではトゥルーエンドに辿り着けない仕様も、決してゲームを長くプレイさせるためのご都合主義ではなく、その意味が分かったときに震えるギミックであった。
超常現象を科学的に説明しながらシナリオに組み込むアプローチも、科学アドベンチャーシリーズが好きなプレーヤーにも刺さりそう。
解明されていない伏線もある気がするので、続編にどう繋がっていくかにも楽しみである。



総評(ネタバレ注意)


このシナリオの何が良いって、別ルートの記憶を一部継続していることに、明確な解釈を与えていることだろう。
プレーヤーの俯瞰的な目線では、当然他のルートでの出来事がわかってしかるべきなのだが、登場人物の前提にそれを置いてしまうと、ともすれば大きな違和感となり、ゲームの価値を損なってしまいかねない。
作品上でのテレパシーのルールを、過去に行われた実験という形で仄めかし、ここぞというときに使ってくるのが絶妙だった。

真相については、多くを語らず、結果を見て察しろ、といったところ。
途中からどうも怪しかったし、どんでん返しもののセオリーという点でも妥当な人物が黒幕ではあったのだが、"裏切り"ではないのがポイントだろう。
淳平がパズルを完了したことで、過去が改変されたのか、淳平がパズルを解くことを前提に、既に過去は確定していたのかは解釈がわかれそうだが、前者だとそれまでのルートにその人物がいることの説明が難しくなるし、後者だと、演技としては上手すぎだろ、といった場面がちらほら。
まぁ、淳平の危機感を煽るために、ダークな演出も必要で、9年前の首謀者4人以外は全員が共犯(四葉には意図的に情報を入れていないかもしれないが)。
ただし、全員助かっている中では自らの手を汚すほどの憎悪のレベル感ではなく、だからこそ自滅するか謝罪するかは彼の判断に委ねたということなのだろう、と一応は解釈しておく。
死体のバングルの使い方についても、これだけ賢い人が揃っていて、なんで気付かないのだろう、なんて疑問だったけれど、彼を泳がせておく意味では暗黙の了解だったのだろうな。

ラストシーンの一枚絵は、どういう意図があるのだろう。
続編に通じているのか、単にアリスの実在を匂わせたにすぎないのか。
黒幕と思わせる人物が、判明後に何も語らず、いや、登場すらせずにフェードアウトしているのも意味深。
考察が滾るエンディングになったことが、結果としてはゲームとしての存在感を高めたのかもしれない。

それにしても、完全にブラフだったノナちゃんは元気なのだろうか。

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