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江戸川乱歩の少年探偵シリーズ全26作を読破!おススメ!

みなさん、おはこんにちばんは! 富井サカナです。


はじめに

異様に読書好きで朝から晩まで本ばかり読んでいる小5の長男がミステリ好きの片鱗を見せ始めているので、ここらで本格的な洗脳に着手しようと思い、子どもの入門編といえば!と図書館で少年探偵シリーズを全冊借りてみました。

で、ミステリ好きを自認するわりに全く乱歩を通ってこなかった私も、この機会についでに読んでみました。令和のこの時代に読んでも読書の本質的な面白さがありましたのでまとめます!というお話です。


少年探偵シリーズの素晴らしい点

唯一無二の怪人二十面相の人物造形

このシリーズの最大の魅力は怪人二十面相にあると感じました。人は殺さない&奪うのは金持ちからという愛すべき泥棒の鉄板モットーもさることながら、劇場型犯罪を行うことに心血を注ぐのが素晴らしいです。

毎回、派手で見栄えのするオリジナリティ溢れる仕掛けを施し、かなりの割合で大規模な建造物を準備して、多くの手下を忠実に働かせる。はっきり言って明智探偵よりもカリスマ性も能力も上回っているよなぁ、と。

怪人二十面相がいなければそもそも何の事件も起こらずに話が始まないですし、彼が人に危害を加えないスタンスを崩さないからこそ少年たちは危険を顧みず(たまに大きな危険もありますが)二十面相のアジトに忍び込んで話が盛り上がるわけなので、やはり影の主役は二十面相だよなぁ、と思うのです。


手を変え品を変えたビックリショー

前項でも言及した通り、毎作のように宝物を盗むことと全く直接関係のない派手な演出を行う怪人二十面相には驚かされます。透明になったり、ロボットや豹になりきったり、サーカスの動物を街に放ったり、透明人間になったり、宇宙人になったり、ともう八面六臂です。変わったところでは巨大カブトムシやらカニ星人やらその想像力はぶっ飛んでます。

空を飛び、姿を消し、海を潜るその姿はまさに神出鬼没です!


水戸黄門ばりのお約束展開

様々な演出を見せる怪人二十面相ですが、ベースのトリックは結構共通しているところも微笑ましいです。基本的には数パターンの応用・組み合わせだったりします。

奇怪な事件が発生⇒世間の注目を浴びる⇒何かお宝を盗み出す⇒少年探偵団大活躍⇒全て怪人二十面相の仕業だ!⇒お宝を取り戻してバンザーイ!

という黄金テンプレはほぼ全作共通ですが、これがまたハマるんです。


たまに目を見張るトリック

江戸川乱歩は海外の先進的なトリックを日本に積極的に輸入しつつ、独自のアレンジを加えて日本ミステリの始祖の一人とされています。そんな著者だからこそ、時に現在でも通用するような本格派のトリックを繰り出してきます。

はいはい、ブラックマジックね。
はいはい、屋敷が改造されてるのね。
はいはい、モーターで空を飛ぶんでしょ。
はいはい、ゴム人形を身代わりにして逃げたんでしょ。

なんて舐めてかかるとたまに痛い目を見ます。この意表を突かれるタイミングで時折江戸川乱歩の優れた本格推理小説家としての本気を見せつけられるのもかなり新鮮な感覚があって好きです。


サクサク読める

本シリーズ、そもそも小学校高学年くらいが対象の作品なので、軽やかな味わいでサクサク読めます。通常よりひとまわり大きい文庫本で文字もやや大きめ。170頁前後と分量は全作ほぼ同程度で完結しており、読書慣れしていれば1時間半前後で読み切れます。私の場合は通勤時の往復で割と余裕を持って読み終わることができました。また、10ページ弱で細かく小見出しで区切られているため、読むのを途中で中断・再開しやすくなっています。


登場キャラの紹介

スタメンキャラ

◆怪人二十面相
上でも記載した通り影の主人公です。

◆小林芳雄(少年探偵団長)
少年探偵団の団長なので表向きの主人公です。子どもなのに平気で無免許で車の運転をし(どういう世界観?)、積極的に二十面相のアジトに潜入し(もしくは捕まっ)て事件の秘密を探偵七つ道具を駆使して見つける行動派名探偵。この時代に女装しまくり設定なのは時代を先取りしまくっているなぁ、と。彼のせいで女装に目覚める昭和世代の小中学生がいっぱいいたような気がしてならないです。

◆明智探偵
コナンの影響もあり、誰もが名前くらいは聞いたことがあろう日本が誇る超有名名探偵。少年探偵団シリーズでは高確率で不在がちで、探偵役のメインどころは主に小林少年に譲り、最後の最後の切り札的に現れていいところをかっさらう役どころ。Mr.ごっつぁんゴール。大人向けミステリは完全未読なのでちゃんと活躍するところを見てみたい。

◆中村警部
毎回出てくるスタメンキャラ。少年探偵団を子ども扱いせずに積極的に傍観しているという一点で非常に有能。


ゆかいな仲間たち

◆野呂一平
いつの間にかほぼスタメンキャラになったノロちゃん。大活躍しまくる少年たちだけだと少年読者が感情移入できないので、ヘタレだけど愛嬌があって人気者のノロちゃんの存在は必須だよなぁ、と。

◆井上一郎
ノロちゃんと仲良しの度胸があって腕っぷしも強い系少年。ノロちゃんとセットでほぼスタメンキャラに。

◆ポケット小僧(チンピラ別動隊)
チンピラ別動隊の中でも出世頭なポケット小僧。登場時は小林団長のような度胸と知恵に、小さくてすばしっこいという長所だけを加えた上位互換のような形だったが、徐々に活躍は控えめに。

◆花崎マユミ
少年探偵団シリーズが人気過ぎて少女雑誌に連載されるにあたって登場した少女助手。ただ、細かい設定と共にずいぶんと満を持して登場した割にはシリーズを通して活躍したのは2,3回といったところ。


お勧めの作品!

せっかくなのでシリーズ全作の記憶が新鮮なうちに、個人的なおススメ作を紹介します。そういう情報あまり見ませんでしたし。

シリーズの途中からは不在がちで存在感がだいぶ薄れていく明智探偵がかなりガッツリと怪人二十面相と相対します。その舞台となる東京駅は勤務先の本社があって以前は通勤していたこともあり嬉しかったです。ちなみに少年探偵団シリーズは物語の舞台が東京都内のため、自分が深く関わっている地名がたくさん出てくるのも地味に嬉しかったりします。へぇ、この頃は人気のない地域だったんだ!とかもありますし。


個人的に大きな魅力を感じた本作のポイントの1つは、敵役が怪人二十面相ではないところです。但し、シリーズ序盤にもう新たな敵が!さすがベストセラー作家で次の手を出してきたか!なんていうのは勘違いで戦時中の文化統制的な流れでそうなったらしく、明確に二十面相ではない敵が出てくるのは本作だけでした。もう1つの魅力的なポイントはミステリよりも冒険活劇のような終盤の展開です。こちらは以降のシリーズでも度々みられるパターンでした。


ネタバレになるので直接的には言及しませんが本作は現代にも通じるようなミステリの王道的なトリックが仕込まれていて、それが現代のエンタメ系ミステリが大好物の自分の琴線には触れました。そのトリック自体は割と早く気付いたのですが、この時代でもうこのパターンがあったのか!と嬉しくなりました。広げた風呂敷のスケールもシリーズ最大級です。


個人的にはシリーズ全作で一番好きなのが本作です。怪人二十面相の手口が大前提として読者に完全に認知されている状態だからこそできたトリックとも言えますし、現代にも通じるような見事なトリックは読んでいて痺れました。怪人二十面相の経歴や人となりが一番明らかになるのも今作でしたし、明智探偵を一番追い詰めたのも今作だったんじゃないかと思います。


シリーズ中盤以降に大活躍するポケット小僧が最大限に大活躍する作品です。小5の長男は本作が一番面白かったそうです。確かに最も面白い作品の1つだと思います。今作の素晴らしいところはラストで炸裂する明智探偵が考案した二十面相の大捕り物劇です。これがまたスケールが大きくて、ワクワクする展開でした。昔の映画とかでやったら映えそうだと感じました。


(同じシリーズの登録がなかった・・・)

小林団長よりもポケット小僧の方が優秀なんじゃないの?と思っていた頃に小林団長が大活躍するのが本作です。敵のアジトに侵入するのは主に小林団長、たまにポケット小僧、稀に野呂ちゃんたちやマユミちゃんという感じですが、今作は小林団長とポケット小僧が2人で潜入します。ここで小林団長がリーダーとしての資質を見せつけてくれました。ラストでは二十面相との絆を感じるシーンもあります。


シリーズ最後の作品であり、乱歩の遺作とも呼ばれるらしい作品です。タイトルからは想像できませんが、こちら「色んな関係者に瓜二つの人間が現れて・・・」という話で、かなりの恐怖が味わえるお話になっていました。読み終わってもその気持ち悪さが綺麗に解決しないあたり乱歩っぽいのかもしれません(他作品読んでないのでいい加減なコメント)。


少年探偵シリーズをもっと楽しむ

本シリーズを読みながら、もしくは読破して以降の楽しみとしては色んなパターンがありそうです。

映像化作品を見る

むかーし子どもの頃に「懐かしのTV番組特集」のような番組で映像を見たことはありますが、少し調べた感じではあまり気軽に過去のドラマ版を観るのは難しそうです。残念。調べたらごく最近も映画化されているようですが、時代に合わせたリニューアルなのでコレジャナイ感が凄い。怪人二十面相のデザインが天野喜孝というのは興味深いですが!


関連作品を読む

ポプラ社がアンソロジーなどを複数刊行しています。まだ「みんなの少年探偵団」しか読めていないので、他のもさっさと読む予定です!


あとはもちろん江戸川乱歩の大人向けミステリー、明智探偵が主人公の本格モノにもトライしていきたいと思います。「D坂」からちょこちょこ読み始めてみようかな。

このWikiを見ていると映像化作品についても色々と記載があるので、めぼしい映画作品から入っても良いかも。


世界観を味わう

前述の通り少年探偵団シリーズはほぼ通勤の往復で読んでいたのですが、雰囲気を高めるために以前より大好きな「人間椅子」の以下の楽曲をエンドレスリピートしながら読んでました。おススメです。


おわりに

というわけで今回はここまでとなります。いやぁ、さすがに他の本をあまり読まずにせっせと本シリーズばかり読んでいたのでたまにやや飽きましたが、新鮮な展開やトリックがちょこちょこ楽しめたので良い感じで完走できました。長男は現在ズッコケ3人組にターゲットを移して凄い勢いで読み続けていますが、昔はそこそこ読んでいてシリーズのファンでもありますが、本編だけで全50作。定年後に取っておくようにします。積読小説がたくさんあるので今後はまずそれらを崩していきたいです。こういうまとめは自分の備忘録としても良さそうです。

読書の記録(Twitter投稿一覧)リンク


おまけ

最後に宣伝です!趣味でゲームを作っています!ストーリーにミステリ要素があるものとして以下のリンクを貼りますので、是非どんなもんやねん?と遊んで頂けると嬉しいです!


ジャンルは「自称本格推理モノサウンドノベル」


2023年10月公開。プレイ時間は1時間半前後です!


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