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サッカー選手として15歳までに身につけなければならないこと。〜集団プレーと個人戦術〜

『ゲームモデル」「試合から試合へ」という言葉は、15歳以下の育成年代の選手やチームには当てはまらない。

明確な「プレーコンセプト」と「ゲームモデル」を持っているクラブは数多くあることだろう。バルサのようにトップチームから育成年代まで統一された「ゲームモデル」を持っているチームもあることだろう。

「試合から試合へ」

例えば、次に対戦する相手のビデオを分析して、その週のトレーニングは次の対戦相手を攻略することに方向付けられたトレーニングと、前の試合の反省点を修正する、自チームの強みとなるトレーニングをする。これが「試合から試合へ」の考え方であるが、これは16歳以上(高校生以上)の基本的な「集団プレー」と「個人戦術」が身についたチームや選手に適したトレーニング方法であると考える。

15歳以下(中学生以下)は、基本的な「集団プレー」と「個人戦術」や「技術」を身につけることの方が重要である。この時期にこれらを身につけないと、将来、高いレベルでプレーをする際、または、サッカーの指導者、もしくは一般のサッカーファンになったとしても、サッカーの基本的な行動を知ることが、その後の楽しいサッカー人生や学びにつながるのではないかと思う。

サッカーには4つの局面とセットプレーがある。

集団プレー(Juego colectivo)の概念

組織的攻撃:

1. ボールの出口(Salida de balón)

自陣からハーフライン手前12〜15mまでパスやコンドウクシオン(スペースへ運ぶドリブル)を使ってミドルゾーンにボールを運ぶこと。

2. 前進(Progressión)

自陣のミドルゾーンからハーフラインを超えて、パスやコンドウクシオン(スペースへ運ぶドリブル)を使って、相手コートにボールを運び、ファイナルゾーンに入ること。

3. ダイレクトプレー(Juego directo)

例えば、DFラインやGKから中盤を経由しないで、高いロングボールをFWに入れるか、相手DFラインの背後にボールを入れるプレー。

4. セット・オフェンス(Finalizaciones)

ファイナルゾーンで行われる組織的攻撃であり、味方の選手がポジションをセットしてから行う。

守備から攻撃への切り替え:

5. カウンターアタック (Contraataque)

6. 攻撃の再構築 (Iniciar organización ofensiva)

ボールを相手チームから取り戻したら、パスを回しながら攻撃組織を整え、その後、組織的攻撃を開始する。

組織的守備:

7. ボールの出口に対しての守備 (Defensa de salida de balón)

8. 前進に対しての守備(Defensa de progresión)

9. ダイレクトプレーに対しての守備(Defensa de juego directo)

10. セットオフェンスに対しての守備(Defensa de finalizaciones)

攻撃から守備への切り替え:

11. プレッシング(Presionar)

12. 後退(Replegar)

13. プレッシングと後退(Presionar y Replegar)

例えば、ボールをファイナルゾーンで失った場合、前の5人でプレッシング(例:FWとMF)後ろの5人(ピボーテとDF)は後退して、DFラインを整える。

セットプレー:

セットプレーについてはここでは言及しない。ただ、セットプレーは年々重要度が増してきている。コーチングスクールの先生の話では、近いうちにセットプレーだけの科目ができると言っていた。

上記の「4つの局面の13項目」を育成年代(15歳以下)は発育発達段階に応じてトレーニングをしなければならない。一つの試合に一喜一憂するのではなく、学校のカリキュラムのように年間計画を立案し、この月は「プレッシング」をメインにトレーニングするだとか、この月は「ボールの出口」をメインにトレーニングするというような計画立案が重要だ。

「個人戦術」は「集団プレー」の一部として、トレーニングをするべきだと考える。

個人戦術:

攻撃:広がり、深さ、マークを外す

守備:カバーリング、マーク、Permuta (カバーリングに入った選手のカバー)

技術については、「集団プレー」や「個人戦術」の中でトレーニングすることができる、もしくは「コーディネーショントレーニング」の中でも実行できる。当然、技術メインにしたトレーニングを実行しても良いが必ず、状況判断や意思決定がある状況で行うことが大事である。

クラブに明確な「ゲームモデル」があることは重要であるが、15歳以下の選手は「プレースタイル」とサッカーに必要な上記の「4つの局面の13項目」をしっかりと身につけることの方が大切だ。

例えば、チームの「ゲームモデル」はポゼッションスタイルなので、「ダイレクトプレー」はしないとする(最近そのようなチームは少ないかも知れないいが)。そのような「ゲームモデル」だと攻撃時に「ダイクレクトプレー」の選択肢はなくなってしまう。16歳以上のチームであればそれでも良いと思うが、15歳以下のチームはサッカーの「集団プレー」の全ての基礎を学ぶべきであると思う。なぜなら、将来、どのようなチームでプレーをするかわからないからだ。

ここで誤解して欲しくないのは、「プレースタイル」は植え付けるべきであると考える。

例えば、チームの「プレースタイル」は「ポジショナルプレー」であるとする。それを特徴としたトレーニングを多く実行しても良いと思うが、上記の「4つの局面の13項目の基礎」を身につけることの方が15歳以下の育成年代のチームでは優先されるべきであると考える。

2、3ヶ月先までトレーニング内容を決めているプロチームもある!

これは、先日、バルセロナでサッカー監督を長年されている吉田氏から聞いた話である。

スペインリーグ2部B(3部)で、現在2位につけているビジャレアルBの監督ミゲル・アルバレス・フラード(Miguel Álvarez Jurado)は、シーズンインしても2、3か月先までのトレーニング内容が決まっているそうだ。

シーズンインして2、3ヶ月内に発生するであろうことをあらかじめ予想してトレーニングメニューを作成しているそうだ。この監督はバルセロナでは良い監督と有名な人である。もちろん、トレーニングの中で前の試合の悪かったところの修正をしたり、次の試合のためのトレーニングもすると思うが、基本的に2、3ヶ月先までトレーニング内容は決まっているそうだ。このように中期的な計画があると、チームがそのシーズン内で成長し、シーズンの終わりには、成熟したプレーをするようになると考える。

「試合から試合へ」という考え方が16歳以上、特に大人やプロチームでは一般的だと思うが...

サッカーのトレーニング方法やプレーの解決策は数多くあると思うので、どれか一つを取り出して、これでなければならないというのはないと思う。

「試合から試合へ」と言われているように、シーズンイン後、週単位での短期計画でトレーニングを作成するのはスペインでは一般的だ。コーチングスクールでもその方法論を学んだ。前の試合の修正点を改善し、次に対戦するチームのビデオを分析して攻略するトレーニングメニューを作成しトレーニングする。自チームの強みとなるプレーをトレーニングするなど。

私はその他にチームを成長させるトレーニングも計画的に入れることが重要なのではないかと思う。これは、短期計画ではなく、中期、長期計画を立てて、この時期にこれをトレーニングするというのを16歳以上のチームや大人、プロのチームでも必要なのではないかと考える。

そして、最も大事なことは、「ゲームモデル」も「プレースタイル」もチーム内の選手に適合したものでなければならないということだ。「ゲームモデル」とは選手であり、戦術とは選手の特徴を活かしたものでなければならない。






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