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フィルムカメラを始める

いつからだろう
好きなことが煩わしくなったのは

自分がもっとも大切にしてるものと関わるのが億劫になった。

私にとって写真を撮ることは、世界に触れることだ。
ファイダー越しに世界を見ると、普段は面白味のない世界に色が付き、私は少し自由になれた。

気づいたら夢中になってどんどん手が動いていたあの頃に戻りたい。

私は持っていた一眼レフを売りに出した。

生活の足しにするために、

写真から距離を置くために

かさ蓋になったはずの傷が突然開き、悲しい過去の記憶の蓋が開く。

そんな時は血が止まるのを待つしかない。じっと耐え忍ぶ。

傷だらけでも、自分にできることはきっとあるはずだ。

久しぶりに写真を撮ろうと思った。

そんな時、中古で3千円で売られている
ジャンクフィルムカメラに出会った。

壊れて誰からも見向きもされなくなったカメラを手にとる。

きっとこのカメラは私の分身だ

昔みたいに、有名な観光地に行ったり、SNS映えするような場所には行かない。

他人の評価を前提とした写真を撮るのは疲れた。近所で写真を撮る。

しばらくは自分の半径3mの範囲で写真を取っていきたいと思う。

フィルムカメラは「写るんです」を除けば初めてだ。

自分が取った写真がどんな風に写っているかはわからない。
現像する時のことを考えるとわくわくが止まらない。

写真を撮っててこんな楽しい気持ちになったのはいつ以来だろう。

一眼レフと違って撮影できる枚数にも限りがある。
フィルムを無駄にしたくないので、撮る前に何に心が動いたのか自分に問う

映えそうだから撮るんじゃなくて、自分の心に刺さったから撮る。

フィルムカメラで撮る写真は、自分の心を映す鏡のようだ。

最後に使い切ったフィルムを取り外すために、フィルムを巻き戻す。
カメラのレバーをくるくる回す感じは、時間を巻き戻す感覚に似ている。

きっとこれからも写真を撮り続けていくと思う。

きっとまた傷ついたり迷ったりするだろう

そんな時、帰り道がわかるように、
フィルムカメラを目印として心に置いておこう。


ジャンクで売られてたPENTAX SP


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