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日本の中小製造業の課題

私は製造業に20年程度携わって、同業種などの会社を見て回った経験から、勝手ながら日本の中小製造業について(非常に個人的な)意見を書きたいと思う。

メディアなどでは日本の中小製造業は未だに世界に通用するレベルであり、卓越した技術を持っている、といったような(日本誇らしい的な)報道や番組がたまに見受けられる。

そういった報道の大半は、『国内には日本人の職人気質や勤勉さによって生み出された独自の突出した技術やノウハウを持っている中小製造業が実は未だ多くあり、にも関わらず後継者不足から世界に誇れる技術が日本から失われようとしている!由々しき事態だ!』といった主旨の論調で事業承継の問題なども絡めながら番組として作り上げられている事が多いように思う。

少しまとめると

①日本の中小製造業は『技術』を持っている
②その理由は日本人の勤勉さや職人気質があるから
③少子化の影響で保持しているものづくりの技術が年々失われている

確かに日本の少子化からくる中小製造業の事業承継といった問題が昨今増えてきているのは事実であるが、まるで希少な技術を保持している会社が日本には未だに大量に存在していて、少子化のおかげで日本から消えていっている!といった錯覚を起こさせるような歪曲した番組には違和感を覚える。

どうしてもメディアは、非常に稀有な一部の突出した技術を持った企業に焦点を当てるため、それが日本の製造業(特に中小企業)の全体を表すかのように視聴者が錯覚してしまうのも仕方が無いのかもしれない。また日本誇らしい的な番組の方が見る側も気分が良く、視聴率も良いんだろう。

確かに過去には世界に誇れる技術を日本の中小製造業は保持していたと思うし、今も一部の中小製造業はそういった技術をもっていることも確かである。

しかしながら私個人の見解から言うと、現在では本当に世界に通用する技術でビジネスをしている会社はほんの一握り程度で、大半の企業は世界的にみたときに突出した技術などは持ち合わせていないというのが現状ではないかと思う。

日本の中小企業の大半は所謂下請けである。国内の大企業が国内の下請けを使うのは、ある部分大企業にとって都合が良いからである。
決して世界に誇れるような突出した技術を持っているからではない。
(中にはあるかもしれないが少ないと思われる。)

かつて工場見学をさせて頂いたある会社では開口一番、社長が

『当社の強みは他者には無い製造技術です。』

と宣言されていたが、実際には高価な工作機械がなせる業であり、残念ながら独自の技術とまでは言えないものであった。
(世界の工作機械の進歩は目覚ましい。)

よくよく社長に突っ込んで聞いてみると、結局その会社のビジネスとしての真の強みは世界中の工作機械の製品知識であり、それをいち早く導入出来るといった仕組みにあった。

本当に世界に通用する技術を持ち合わせている中小製造業が日本に多数存在しているのであれば、この情報化社会の現代において、世界の企業が放っておくはずがない。世界の企業がこぞって日本の中小製造業を買い漁っているはずである。

現在のコロナ禍も含めて世界の潮流は圧倒的スピードで変化している。その最中において、世界を相手に戦っている海外の中小製造業と日本国内だけの市場で戦っている中小製造業では戦いになるわけもなく、第一次世界大戦前の日本に回帰しているような言い知れぬ不安感を感じてしまう。

あくまで私個人の見解だが、昨今の国内の中小製造業の問題点は、事業承継などでは無く、欧米やアジアの国々と比較して情報分析の不足やそれに伴う戦略が苦手であることが問題なのでは無いかと思う。

ちなみに勘違いされると困るが、突出した技術が無いからといって、日本の中小製造業に戦えるノウハウが無いということにはならない。

世界中にビジネスを展開している海外の企業であっても突出した技術を持たないところはごまんとある。また国内であろうとビジネスが成り立っているという事は、何かしらノウハウや強みがあるはずである。

結局は国内だろうが海外だろうが、自社のリソースや強みを最大限に活用して戦っていくしかないのだが、国内企業と海外企業の決定的な違いは、そもそも世界市場をベースに考えているかいないかではないだろうか。

自社の真のノウハウの把握や、他社との比較といった情報分析、また得た情報から導き出す世界市場をベースとしたビジネス戦略が足らないのではないかと思う。

日本は幸か不幸か世界的にも人口が多い事もあり、国内の内需だけで何とかなってしまう現状がある。だがそれに甘えていては現代のグローバル社会の発展とともにいずれ立ち行かなくなってしまうように思える。

偉そうに書いてみたが、弊社も突出した技術があるわけでも無く、グローバル化しているわけではないので結局同じ課題を抱えている。

ちなみに弊社は鹿児島が拠点である。かつて鹿児島から日本を変えた偉人のようにここから日本の製造業を世界と渡りあっていけるようにすることが出来ないかなぁと思いをはせて、弊社の今後に御期待下さいというお話でした。

おしまい。

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