ロシアのウクライナ侵攻

ロシアのウクライナへの侵攻は決して許されるものではありません。
しかし現状では、ロシアの狙い通りに進んでいく確率がかなり高まってきているのではないでしょうか。
欧米はじめ各国の対抗措置、制裁措置によりロシア軍の撤退につなげたいのですが、もとよりロシアは計算し、覚悟の上なので軍を退くことはないものと思われます。
今回の一連の事件の中で、いくつも考えさせられる点があります。
それらは皆関連しているのですが、3つ挙げるとしたら、「アメリカの弱体化」「国連の存在意義」「軍事力優位の世界」です。

◇アメリカの弱体化

イラクやアフガニスタンなどの例を挙げるまでもなく、今までのアメリカは国際世論をつくり出し、それに合わせるべく派兵を行ってきました。
今回は直接的な相手がロシアということもあるかもしれませんが、アメリカはウクライナの危機を叫べども、行動を起こしてはいません。
また、今回のプーチン大統領の一連の行動を「天才」と称賛する勢力がアメリカにあるというのも、アメリカの深い亀裂の象徴であり、弱体化の要因の一つかもしれません。

◇国連の存在意義

今回の侵攻に関して、安全保障理事会ではロシアの軍事行動への非難決議を否決しました。
つまり、戦争を避け、平和を維持する役割を担う安全保障理事会が、「ロシアの軍事行動は非難するものではない」と認めたのです。
信じがたい結論です。このような結論しか出せない国連の安全保障理事会に意味があるのでしょうか?
国連加盟国は深刻に、国連の働きの在り方を考え、こういう時に機能する組織に変えていくべきです。
それをしないのならば、国連そのものの存在にも疑義がかかることになります。

◇軍事力優位の世界

ロシアの行動が非難すべきことでないとしたら、軍事力を持つということが力であり、軍事力がすべてという誤ったメッセージを世界に送ることになります。
国連もアメリカも頼るに足らずということであれば、世界各国が今まで以上に軍事力強化を目指すようになります。そうなれば、軍縮の流れから逆行することになります。
同時に、今回の侵攻が「軍事力行使を止める手立てはない」ということの証明になってしまえば、今後の外交にも劇的な変化が生じるのではないでしょうか。
この点では、北朝鮮がすでにそれを目指していると思えてなりません。
アメリカ、中国、ロシアなど、軍事大国しか眼中になく、倫理など関係なく自国の利益を追い求める。こうした国が増えていく心配があります。
また、核こそが抑止力と考える国が出てこないとも限りません。
そして日本にとって何より深刻なのは、安全保障理事会の非難決議の採択に欠席し、ロシアを非難しなかった中国の台湾侵攻の可能性が高まっただろうということです。
実際に軍隊を動かしたときの国際社会の対応や制裁がどの程度のものか、中国は自国の場合を想定し、事態の推移を分析しているものと思われます。
アメリカの弱体化も確認し、制裁も大したことではないと判断すれば、本格的な検討に入るかもしれません。

つまり、遠いウクライナで起きていることは他人事ではない、という思いです。
侵攻のターゲットにされてしまえば、何一つこちら側から攻撃を仕掛けずとも一方的に攻撃を受けて制圧されてしまうことになります。
自国の独立と自由を守りつつ、侵攻のターゲットにされない条件とは何か。日本も真剣に考えると同時に、戦略を練り上げる必要があります。
そして日米安保も、単にこの上にあぐらをかいているのではなく、有事に確実に機能する取り組みを総合的に行っていくべきものと考えます。

こうしたことからも、今回のロシアによるウクライナ侵攻は第二次世界大戦後の安全保障を大きく変える分岐点だったと、将来言われるほどの大きな軍事行動だと感じています。

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