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UXデザイナーにセンスは必要なのか?今まで意図的に言わなかった話。


はじめに

今までUXデザインを勉強して、実践して、HCD専門家の資格を取って、研修やメンバーを育成して行く中で言わなかった話をしようと思います。
デザイン=ビジュアルデザインだと勘違いされることが多く、センスは関係ない、デザイン=設計だ、と伝えてきました。
しかし、実はUXデザインにもセンスは必要です。そのセンスは生まれながらに持っているものではなく、育てられるものを指します。ハードルが高いと思われて、UXデザインの世界に入ってくる人が少なくなると困るから今まで言いませんでした。しかし、今度は一度研修を受けて実践すると手法が分かればできる、と思われることが多くてモヤモヤしていました。その心の内を明かそうと思います。
※あくまで私の主観で記載していきます。

前提

UXデザイナーとは

ユーザが気付いていない潜在ニーズ(インサイト)を見つけ出し、その潜在ニーズに対して理想的な素晴らしい体験を提案する人のことです。
 × 快適で、心地よく、簡単で、便利にする
 × ユーザのやりたかったことをできるようにする
 〇新しい価値や意味を生み出す
 〇ユーザが気付いていないニーズに応える

UXデザイナーに必要なセンスとは

UXデザインやデザイン思考のプロセスからも分かる通り、大きく2つのセンス(力)が必要になります。どちらも大きく、前半の発見フェーズと後半の体験を作るフェーズに分かれています。

UXデザインのプロセス
1-3→発見する
4-6→体験を作る

UXDプロセス

デザイン思考のプロセス
問題発見→発見する
問題解決→体験を作る

デザイン思考

2つのセンス
 ①潜在ニーズ(インサイト)を見つける力
 ②理想的な素晴らしい体験を考える力
そのままですが、この2つのセンスがない人がいくら色んな手法やフレームワークを実践したところで、素晴らしい体験は作れないでしょう。ということで、次の章で各センスの細かい定義とどう育てていくかについて説明していきます。

センスがないと本質的に解決できないです。名言にもある通り。

今日我々の直面する重要な問題は、その問題をつくったときと同じ考えのレベルで解決することはできない。 by アインシュタイン

①潜在ニーズを見つける力とは?

センスの流れ
この中には『ユーザ調査で深掘って共感(エンパシー)』 → 『解釈して仮説を立てる(インサイト発見)』の大きく2つの流れがあります。

1. ユーザ調査で深掘って共感
ここでいかに深掘れるか、いかに共感できるかによって、この後の全部の質が変わってきます。絶対に潜在ニーズのヒントとなる発見をする必要があります。

2. 解釈して仮説を立てる(インサイト発見)
いくら調査が上手くいって発見がたくさんできても、発見を組み合わせて解釈してインサイトを導き出すことができなければ、せっかくの調査が無駄になってしまいます。

詳細な定義
必要なセンスを細分化しています。

・人間の心理、行動経済学について知っていること
大前提として、調査対象者がなぜその行動を取ったのか、どういう考えが働いたのか、人間の考え方の仕組みを知っておく必要があります。
これを知らないと、調査で深掘りする方向を間違えたり、発見できなかったり、インサイトを解釈するときに当たり前だと言われているものをインサイトと感じるかもしれません。そのため、これは必須です。

・色んな視点、観点で考えられること
”自分”という視点しか持っていないと、調査時にユーザの矛盾やモヤモヤ、他の観点からの気付きを得られないです。これは2つ目のセンスの理想の体験を考えるときにも必要になります。視野が狭かったり、視点が1つしかなかったり、視座が低かったりすると見えるものは限られてしまいます。

・相手にきちんと向き合って共感(エンパシー)できること
意外と普段共感できている人は少ないです。特に部下を持っているビジネスマンは役割として指導や管理するので、自分の経験で考えて、ビジネスとしての価値観で判断して、意見や指摘をすることが多いので共感が必要になることは少ないでしょう。また、女性は共感が得意だと思われていますが、実は女性の会話は共感(シンパシー)でできています。
例)女性の会話
A「この間、こんなことがあって悲しかったよ~」
B「分かる~私もこんな経験をしたことがある、大変だよね」
もちろん、共感しようと思って話を聞くことはあると思いますが、自分の話や価値観にすり替えて理解し(理解したつもりになって)、同情したり、自分なりの意見をアドバイスしたり、、、これは、あくまで他人事の状態です。自分事として(自分の話や価値観は置いておいて)、相手と全く同じ価値観の人間になって、同じ状況に置かれたときに、本質的に何を求めているかを捉えることを言います。

・考えられる、問いを出せること
普段、自分は考えている!と思う方も多いと思います。しかし人間の仕組みとして、実は考えているようで考えていないことはたくさんあります。人間にはシステム1(直感モード)とシステム2(熟慮モード)があります。常にシステム2を使っていると、エネルギーがたくさん必要になります。私達は服を決めたり、ご飯を決めたり、仕事の判断をしたり、と思っている以上に毎日たくさん選択をして生きています。ずっとシステム2を使っているのは現実的ではありません。そのため、私達はシステム1も持っているのです。今までの経験や一般論から、考えなくても簡単に判断できる習慣ができあがります。例えば、朝起きたとき「歯磨きしようか?顔を洗おうか?ご飯を食べようか?」と考えることはほぼなく、起きたら顔洗って、ご飯食べて、歯磨きをして準備をするなどの習慣が出来上がっているかと思います。このシステム1の習慣が思っている以上に多くの割合を占めています。システム2は今まで経験したことのない複雑なものを考えるときに使います。非常に集中している状態です。エネルギーもたくさん使います。研修を受けて「質問はありませんか?」と聞かれたときに何も質問が思い浮かばないのはシステム2で考えていないからです。研修を受けている間も「へーそうなんだ、面白い。」という形で全て受け入れてしまっています。
また、今までの学校教育の中で私達は正解のある世界を生きてきました。そのため、一般論やルール、式を当てはめて考えるのは得意だけど、その場から自分で考えて新しい理論を見つける(グラウンディド・セオリー)のが苦手です。調査結果から具体⇔抽象を繰り返し考えることでインサイトが見つかる可能性が高いです。

システム

①潜在ニーズを見つける力の育て方

今までやってきたものや、メンバを育成しながら必要だと感じたものを挙げていきます。参考にしてみてください。

心理学を勉強してみる
たくさんの分かりやすい本が出ているのでそれを読んだり、セミナーに参加したりしてみてください。私が読んだ本は下記です。
インタフェースデザインの心理学 第2版 ―ウェブやアプリに新たな視点をもたらす100の指針』、『続・インタフェースデザインの心理学 ─ウェブやアプリに新たな視点をもたらす+100の指針

行動経済学を勉強してみる
これもたくさんの分かりやすい本を読んだり、セミナーに参加したりしてみてください。
行動を変えるデザイン ―心理学と行動経済学をプロダクトデザインに活用する

普段の家族や友人、同僚と話す会話から、深掘りして、共感することを考えて話を聞くようにする
訓練、マインドのように曖昧ですが、会話しているときに、なぜこう考えたのか?こう行動したのか?考えながら聞くことで共感だけではなく相手の潜在ニーズを掴んで、相手が本当に求めている発言や行動をすることで更に関係が深まったり、信頼されるようになるかもしれません。

・普段交流のない人(他業種、他部門、他の役職、他職種など)と話して色んな視点を手に入れる
普段から周りの人間に興味を持ち、自分の視点の幅を広げることで、発見する力や色んな視点で解釈する力が養われます。”自分”の視点しか持ってないと応用が効かないので交流を広げていきましょう。

・5歳に戻ったつもりで初心者思考をやってみる
幼少期に、全てに何で?と問いかける時期ありますよね。あの時に「そういうものだから」で納得していませんでしたか?きちんと大人も説明しきれず好奇心や疑問を無くしていったのかもしれません。当たり前の、自分が知っている言葉や価値観だと思わずに、全てに「何で?」と自分で問いかけてみましょう。

②理想的な素晴らしい体験を考える力とは?

センスの流れ
この中には『届けたい価値、コンセプトを定義』 → 『体現できるストーリーへ落とし込む』の大きく2つの流れがあります。

1. 届けたい価値、コンセプトを定義
インサイトから、どういうものを提案すると喜ぶのか、コンセプトや方針を決める段階で、「効率的である」「使いやすい」などの当たり前のものを軸にしていませんか?これは今は当たり前に必要なものになっています。そのため、新たな価値になっていないので、ユーザが絶対に喜ぶものとは言い切れません。インサイトからコンセプトを出せる力が必要です。

2. 体現できるストーリーへ落とし込む
いくらコンセプトを定義できても、どんな流れでユーザにどうアプローチしたら心地よく感じてもらえるのか?を落とし込めないとせっかく調査・検討してきた結果が水の泡になってしまいます。ポイントは自然な流れとコンセプトの表現の種類の豊富さです。

詳細な定義
ここで必要だと思うセンスを細分化しています。

・色んな業界、最新トレンド、アツいサービスのユーザ体験を知っていること、分析していること
自分が得意な分野だけではなく、他の業界やトレンド、海外の最新情報などを知っていることで、創り上げる体験の質が明らかに向上します。他の業界からヒントをもらって、そのまま流用したり、観点として増えて考えられたり、、、これは常に続けていきたいものです。

・身の回りの良い、悪いUXに気付けること
最新の業界別のアツいものを知っているのももちろん大事ですが、自分の身近の良い、悪いUXに気付けるようになることも、体験を創り上げる上で重要です。実際に自分が体験して感じていることなので、同じ価値観の人は嫌と感じるだろうという推測ができますし、違う価値観の人はどうなんだろう?という問いにも繋がります。UXは遠いものではなく、身近にいくらでも存在します。普段から注目することで、自ら集めに行く情報とは異なったノウハウを得ることができると思います。

・素晴らしいUX、有名なものをたくさん体験している
実際に体験しているのと、体験したことないのでは大きな差があります。推測や理論より実体験の方が説得力がありますよね?それと同じで実際に体験したからこそ分かるものもあると思います。そのためには、普段の生活から抜け出して刺激を受けに出かけましょう。

②理想的な素晴らしい体験の育て方

・有名な人のTwitterをフォローして最新に付いていく
やはり自分で集めるのは大変で時間も掛かるので、有名な人をフォローするのが手っ取り早いでしょう。勝手に呟いてくれるのでスクロールして見るだけです!

・色んな種類の本を読む
自分の興味のあるもの、仕事でやっているものだけを読みがちですが、全く関係ないかもしれないけど、ちょっと別の分野を読んでみると、意外と発見があります。私はIT会社に勤めているのでそこそこITには詳しいですが、『リテール4.0』という小売り業界の本を読んで、いかに自分が遅れていたかを実感しました。また『SDGs』の本を読んで、今後企業や人がどう行動が変わっていくのか、変わらないのかを考えるきっかけになりました。

・ネットでググる
ネットで色んな人がまとめてくれているので、時間を掛けずに要点だけ抑えたい場合は、たくさんググってトレンドに付いていきましょう。

・論文を読む
ネットももちろんいいのですが、論文を読むことで考える力が養えます。論文のこういう背景から仮説を立てて、検証を行った結果、こういうことが分かったという流れはUXデザインと近いところがあります。また、色んな業界やワードについてネットよりも先の情報(未確定ではありますが)や深い情報を得ることができます。人や専門家と議論できるようになります。

・コミュニティに入る
1人で知識を漁るだけでは、実践するだけでは、力がなかなかつきません。たくさん経験する必要があります。しかし、そんなに経験がなくても、色んな人の経験談を聞けたり、一緒に考えて実践できたり、意見をもらえたり、身近に相談相手がいない場合はコミュニティに入るのがおすすめです。

・色んなイベント、展示会に参加して実際に体験する
実は知らないだけで面白い、新しい体験ができるイベントや展示会などが開催されています。ぜひ、足を延ばしてみましょう。没入型美術館、どんなものかイメージできますか?どんな体験が提供されているのでしょうか?

⓪大前提

ということで、UXデザインに必要なセンス2つについて書いてきましたが、、、そもそもの話も補足しておきます。

何かの業界や分野でUXデザインする前に当たり前ですが、下記も必須になってきます。自分のサービスが固定されている方は当たり前に知っているかと思いますが、UXデザインコンサルとして働く場合はお客様の業界やテーマについて詳しい必要があります。

・業界について知っていること
 ・業界全体が今後どうなって行くのか?伸びる?縮小傾向?
 ・業界のシェア、大手は?競合は?
 ・業界全体の課題は何なのか?
 ・業界の歴史〜最新までの遷移、どういう契機で移り変わってきたのか? 
  これが分かると、これから何が起こるか少し予想できる

・海外の最新の情報
 やはりどの業界でも進んでいるのは海外です。ただし、海外の事例をそのまま使うのではなく、前提や日本との差異を考えて参考になる、使える部分だけ使うイメージです。

・対象の会社
 ・ビジネスモデル
 ・ビジョン、経営
 ・ステークホルダー など

まとめ

UXデザインのおおまかな全体像を掴んだ方は、ぜひ試してみてください。私自身も訓練を続けつつ、メンバにもそろそろ話そうと思います。

お問い合わせ

UX/UIデザインに関して詳しく知りたい方は下記よりお問い合わせください。無料相談会もやっておりますのでお気軽に相談いただければと思います。
https://www2.tdc.co.jp/digitaltechnology/technology/ux-design/

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