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PTA広報紙おせっかいマニュアル〜 はじめに

 私は、過去2年間に渡り、子どもの通う小学校のPTA広報委員を務めました。PTA活動というと、出来るだけ参加したくないと考えるものなのですが、人の嫌がることを自分で体験してみないと実感がわかない、という性質がありまして、どうせやるなら思いっきりコミットしよう!という無鉄砲な考えから、このPTA活動の中でも、一番嫌がられるという「PTA広報委員」に立候補しました。

 その2年間を通じて、PTA活動に対する疑問などもあるのですが、とは言え、与えられた役割を通じて、PTAがなぜ必要か、またPTAは何をするべきかといったことを知りたいために、取材をしたり、それを伝えるために編集したり、デザインをしたりしました。

 その結果、つくった広報紙が評価されたりして、広報紙コンクールの全国大会までエントリーされて、入賞したりと、想像以上の評価をいただきました。また、その翌年も同じ評価をいただき、2年連続で高い評価をいただいたのです。

 ここでは、その2年間で得たものを、全国のPTA組織や、PTA広報を担当される方にお伝えした方が良いのでは?と思い、得たものや、考えたこと、そもそもPTA広報紙の作り方などを公開したいと思いました。

 その全てはA4で90ページ以上になりました。長いのですが、ぜひ、興味のあるところだけでも読んでいたければと思っています。

広報委員になってしまったあなたへ


 PTA委員をやったことのない人にとっては、PTA委員を「いつかやらなくちゃならない義務」のように感じ、心に不安を感じる方はとても多いと思います。

 そもそもPTAは、任意の団体です。

「うちは、そういうのやらないんで」と言ってしまえばそれでいい団体です。強制力はありません。任意ですから。「やりたくない」と言えばやらないでもいいんです。

 PTAの作業についてもできれば避けたい、と思うでしょうし、仕事を休んでまで学校に行かなくちゃならないとか、友だちでもないよそのママやパパと仲良くしたいわけでもない、いやむしろ、それがわずらわしい、うっとおしいと感じることのほうが正常な感想だと思いますし、みなさんの本音だと言えるでしょう。

 さらにPTA委員のなかでも、とくに嫌がられるのは「広報委員」です。広報委員は取材したり、写真を撮ったり、記事を書いたり、デザインをしたり、また印刷をしたりとやることも多いし、作業も多い。

また、その作業に専門的な知識が必要だったり、お金がもらえるわけでもないのに勉強しなくちゃならないし、わからないことだらけで不安になる。さらに学校の行事にも行かなくちゃならない。ご近所からも「あら、広報なんてとにかく大変じゃない、大丈夫?」なんて言われたり、忌み嫌われている委員会として非常に警戒されています。

 私は、実際に平成29年度は広報委員長として、30年度は広報委員として2年間に渡りPTA広報紙を作ってきました。その活動が楽だったか?それとも大変だったか?と言われれば、

とても大変だったと思います。決して楽ではありませんでした。

楽にするか、楽しくやるか

 そもそも私は、企画、マーケティング、ITコンサルティング、映像制作、イベントなどの仕事に携わっており、企画書を書いたり、文章を書いたり、コピーライティングしたりなどを日常的に行っています。デザイナーやカメラマンに対してディレクションを行う役割も多いです。実際に自分でデザインをしたり撮影をすることはありませんが、しかし、これらの経験を鑑みれば、明らかに「プロ」だと言えます。

 ですから、PTA委員をやるとすれば「広報」が一番適任だろうと考えていましたし、私が忌み嫌われる広報委員になれば、面倒で大変なことを私が引き受けることで、ほかの皆さんは楽しく活動ができるだろうということも考えていました。私が経験してきたノウハウを提供することで、誰かの役に立つのであれば、それは喜んで引き受けようと思っていました。

 そういったことから、楽にすることはできたと思います。適当にやって、あまり難しいこともせず、新しい取り組みも行わなければきっと楽はできました。

 ではなぜ楽にしようとしなかったのか。適当に手を抜いて楽に作ることはできますが、手を抜いたとしても、その手を抜く時間が無駄だと思ったからです。

 広報委員長になってまず考えたことは「楽にできるアイデア」です。しかし、その時間さえも無駄な時間だったと感じました。

 「どうせ、時間を使うのだから、逆に、その時間を使って思いっきりいいものを作ろう」というふうに考えを改めました。

 「思いっきりいいもの」を作るためには、適当に作ってはだめです。これまでに見たことのないような、いいものであり、読者に愛されるものを作る。

 そう考えたら、かなり大変になりました。

 常に新しいことにチャレンジし、読者に楽しんで読んでもらえるものをつくり、それが結果としてPTAの活性につながれば、子どもたちの学校生活環境もさらによくなるのではないか、そう考えたのです。

 まず、その結果は、広報委員のほかのメンバーに現れました。最初はいやいや広報委員になってしまい、この1年間終わったな、と感じていたメンバーが、夏休みを越えたころには広報委員の活動に楽しさを見つけはじめたのです。

 どうせやるなら面白くやろう!とひとりで言い続けていました。最初は不審がっていたメンバーも活動しているうちに撮影する楽しさや取材する面白さがわかってきたり、少しずつですが、メンバーの個性を活かしてユニークな企画を実行したりと、いろいろな化学反応が起こってきました。

 しだいに、紙面がどんどん面白くなってきて、また、広報委員会が楽しそうにわいわいとやっているのを見て、まわりも変わってきました。近所を歩いていると知らない方から声をかけていただいたり、子どもたちもあいさつしてくれたり、ほかの委員会のママたちと仲良くなったりと、PTA活動全体も明るく楽しい雰囲気に変わっていったと思います。

 その結果、平成29年度の広報紙は、市のコンクールで「優秀賞」をいただき、県のPTA広報紙コンクールでは最高となる「最優秀賞」をいただきました。さらに、「全国小・中学校PTA広報紙コンクール」においても「日本PTA協議会会長賞」をいただきました。

 ここまでやったので、この私たちの経験を「おせっかい」として、何かの形に残してもいいんじゃなかろうか。そしてそれが、皆さんの広報委員としての活動のお手伝いになるんじゃなかろうか、そう考えて、このマニュアルをお届けしたいと考えました。

PTA委員をやるのは「義務」か?

 さて、冒頭に述べた”PTA委員をやるのは「義務」のように感じる”ということについて、私の私見を書いてみます。

 私も当初、そのように感じていました。いつかはやらなきゃいけないこと、だと思っていましたが、2年間を通じて感じたことは”PTA活動は「権利」だった”ということです。

 広報紙を発行する権利であり、ほかの委員会活動やすべての児童たちのために活動ができる権利であると感じています。その権利をどのように扱うか、また、本部役員やほかの委員会の権利をどのように表現するか、そのように考えるほうが自然でした。

 何のために、そこまで一生懸命にやるのか、これはいろいろな考えがあります。しかし、一言で言うならば、与えられた「権利」に対して、できることを一生懸命にやるということだと思います。そのように考えると、児童のためであり、学校のためであり、ほかの保護者の皆さんのためであり、地域のためであり、、そのための活動は、自分のためでもあったように思えます。

 そのような気持ちは、やってみないとわからないです。

 「できる範囲でがんばる」という考え方もあります。しかし、私はこれが(普段の仕事においても、趣味においても)あまり好きではありません。できなかったことができるようになることの快感はこの上ないからです。

 現実的にはできる範囲でいいんです。家事や仕事をおろそかにしてまで取り組むことはありません。できる範囲というのは、時間や体力の制限などではなく、「いまの自分の能力のなかで」ということです。

 「いまの自分の能力できる範囲で」というのは、はっきり言って時間の無駄だと思うのです。

 「義務」ではなく「権利」であるという考えは、自分自身を成長させることのできる「権利」でもあるのです。

 そういう意味でも、新しい経験や知らないことに挑むということは、それだけで人間として、大人として、親として、成長することではないでしょうか。

 PTAは仕事ではありません。仕事は報酬に見合った成果を出さなくてはなりませんが、PTAは見合った報酬のためではなく、自分が学べる機会だと思います。ですから、自分のできる範囲でがんばるのではなく、これまでできなかったことを体験することができる機会です。ですから、できる範囲を超えてがんばることをおすすめします。

 できる範囲を超えたところに、成長するという楽しさを味わうことができるのです。

 しかも、広報委員は、それを「広報紙」という形に残すことができるんです。

 これこそ、権利どころか、「特権」となるのです。

 物事は考え方、捉え方次第で、いろいろな見え方がするものです。

楽しいとは何か?

 広報委員は決して「楽」ではありませんが、「楽しむ」ことができます。では、楽しくするためにどうしたらいいか。

 それは、「誰でも簡単にできる」というのとは違うと思っています。「いまの自分にはちょっと無理」とか「これまでやったことのないこと」に挑戦することに楽しさがあると思っています。

 こう書くと「坂根さんはそういうことが好きだから」とか「そういうことが好きな人はいいですよね」と言われることが多いです。

 しかしどうですか?「できる人が、できることを、できる範囲のなかで作業をする」というのは楽しいでしょうか?「できなかった人が、これまでやったことのないことに挑戦して、想像以上にできた」ということに喜びがあるのではないでしょうか。

 「誰でも簡単にできること」をあなたがやったとしても、それは逆の言い方をすれば「あなたががんばったとしても、それは他の人でもできること」になってしまいます。そんなことに1年間を費やすのは果たして良いことでしょうか。

 義務のままで「やらされる」1年のままでいるか、もしくは、権利を得たとして「楽しむ」1年とするか、その選択はみなさんがすれば良いと思います。

 私の言う「おせっかい」とは、「誰でも簡単にできること」をお世話するのではなく、「あなたのチャレンジを応援する」ということをおせっかいするものです。

 ここでは、私やほかのメンバーとともに知り得たノウハウをご紹介しますが、そこから先はあなたが工夫して考えてほしいということを目指します。

 残念ながら「ここまでやっておけば簡単よ、大丈夫よ」という内容ではありません。あなたが工夫するためにいくつか方法をご紹介しますが、そこから先は自分で考えるんだよ、ということを目標としていますから、いろいろな選択肢をご覧にいれますが、しかし、結論は書いていません。残念ながら。

 広報委員のやることについては、専門的な話題は避けて通れません。教えてくれる誰かがいないと難しいと思います。「もはや、わからないということが、わからない」という状況もあるでしょう。そういった意味で、そういうときに、このマニュアルが役立つのではないかと思っています。

 ここでは、自分たちの経験のなかで、一般的に役に立つような情報を記します。やはり、専門的な内容もありますから、けっこうなボリュームになっています。ですから、何かに困ったり、悩んだときに、知りたいことだけを読むだけで良いと思います。

 ただし、読み物としても興味深く読んでいただけるような工夫もしてみようと思っています。

 そう、これもまず自分自身が「面白がりながら」取り組むプロジェクトですから、私自身が面白いと思いながら書いていこうと思います。


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