見出し画像

つらいと言えなかったあの日のこと

私がはじめて、無くなることはないと信じてきた自分の地盤を外的な力で壊されて太刀打ち出来ずに苦しんだのは、14歳の夏でした。

自分の人生の全てだと思っていた母親が、実は末期癌であっさり居なくなってしまった。私の人格も人生の道のりも、その日を境にすっかり変わることになりました。

あの日から17年が経った今も、昨日のことのように自分の10代の苦しみを鮮明に思い出す事ができます。死に包まれていた自分の10代は本当に辛かった、そして、一番苦しかった当時は、人にうまく辛いと伝えることが出来なかった。その理由を、じゅうぶん大人になった今、ちゃんと言葉にしてみることにしました。

今、人知れず苦しんでいる誰かが、少しでも楽になれますように。

さて、私がなぜ簡単につらい気持ちを外に出せなかったかというと、その理由のひとつは成人前に親を失ったことで、お葬式に来てくださった沢山の大人から自動的に"かわいそう"な部類に入れられてしまったから。
なんなら死を目前にした母本人からも「悲劇のヒロインになったと思って乗り越えて欲しい」と言われている。
自分達(私と弟)が、物理的にかわいそうな状況に置かれていることは頭では理解出来ても、実際にかわいそうと言われるのは、周りから太鼓判を押されているようで辛かった。

それなのに私が「つらい」なんて言ったらもっとかわいそうな人になってしまいそうだったから黙ることしか出来なかった。

実際、かわいそうという言葉は同情の気持ちを表現出来るものでありながら、「貴方は今辛い状況に置かれています」と念押しされていることと実はそんなに変わらなかったりする。そして、それで私の気持ちは癒えることはなかった。

どんな出来事を経験するかに共通項はあれど、そこで感じる気持ちは一人ひとりの心それぞれで、簡単な言葉で括ってしまうと当事者は余計に苦しむことになってしまう危険があることを学んだし、それは大人になった今も、人の話を聞くときに頭の片隅に置いておこうと決めたひとつのルールになっています。

また、当時心が壊れてしまっていたときは、よく外に出て星を見たり、いるかも分からない神様に祈ったりしていました。

翳りが見える母よりも自分の生活に没頭していた数ヶ月前の自分の身勝手な行いをどう反省したらいいかが分からず、自分が生きていることが辛かった。自分が信じていた当たり前が粉になって消えていくなかで、自分だけがここに残っていることが孤独だった。
そして、"もう一生親孝行が出来ない"、そのことを何回も何回も空に向かって謝り続けて、そして沢山泣いた。

すごくつらい時間は、
それでもちゃんと癒えました。

何度も何度も泣いて、最終的に私がつらい気持ちを手放すために決めたことは、"幸せな人生を送る決意"でした。その頃には18歳か19歳くらいにはなっていたと思う。

14歳で周りの大人から「かわいそう」と言われて、母からも悲劇のヒロインと言われて、それが本当に悔しかったから、誰よりも幸せになってみせようって決めちゃったんです。

自分の人生を、命を全うすることは、私が唯一母にできる親孝行になると信じられたこともまた、救いでした。(ご両親から苦しい経験を受けてしまった方は私と真逆の理由で命を全うすることもあると思うので、これはあくまでも私の経験に基づいて最適だった考え方です)

幸せになる資格は誰しもが持っています。

これまでの状況がどんなに苦しくても、辛くても、悔しくても、そんな色んな気持ちをバネに変えて幸せになれる未来は誰しもにあると、私は信じています。

当時はつらい気持ちが癒える未来も、幸せな人生も、辛い気持ちを誰かに相談する選択肢も無く、ただただ頭に霞がかかったような状態でした。傷ついた心で自分が幸せになることを許してあげるのはとても難しい一歩だけど、本当に大切なのはわたしが私を救ってあげることだったと、今になって思います。

どうか、幸せになってね。
あなたは絶対幸せになれるよ。

17年経って、今の私は本当に幸せです。タイムマシンが出来たら昔の自分に「あなたは将来すごく幸せになれるから、大丈夫だよ」って言ってあげたいなと思う。

いつになるか分からないけど、昔の私と同じように苦しんでいる人の光となれるような人生を送る努力を続けていけたらいいなと思う。

そして、実際わたしが辛かった時期を支えてくれたのは、多くの友人達や親戚の存在でした。完全に独りになることなく、楽しい思い出も沢山作れたから、今こうやって精神的に乗り越えられる時間があると思っています。
本当にありがとう。

おまけ:当時よく聞いてた矢井田瞳さんの「ビルを見下ろす屋上で」という曲。
音楽は心を癒してくれますよね。


記事を読んでいただきありがとうございます。個人的な情報を含まない記事は全て無料で公開しているので、気に入って頂けたらサポートしてくれると大変励みになります:)