マガジンのカバー画像

小説感想

39
運営しているクリエイター

#八月の光

「八月の光」×「ビラヴド」×伊黒小芭内で社会構造と個人の関係について考える。

「八月の光」×「ビラヴド」×伊黒小芭内で社会構造と個人の関係について考える。

「奴隷制度が人の心にもたらすもの」について描いた、トニ・モリスンの「ビラヴド」が面白かった。

「奴隷制度について描いている」と書くとついそちらに意識がフォーカスされるが(そしてもちろんとても重要な問題だけれど)、自分がこの話で一番興味を惹かれたのは物語の語りの手法だ。

「八月の光」の解説の中で、フォークナーが活躍した時代はちょうどヨーロッパでモダニズム文学が流行していた、と書かれている。
 ア

もっとみる
「八月の光」に出てくる「無能なクズとはどんな存在か」を表す描写が容赦がなさすぎる&途中まで読み返した感想。

「八月の光」に出てくる「無能なクズとはどんな存在か」を表す描写が容赦がなさすぎる&途中まで読み返した感想。

 久しぶりにフォークナーの「八月の光」を読み返している。
 光文社版を初めて読んだとき、一番初めに新潮社版を読んだ時よりずっと面白いと感じたが、今回読んだらさらに面白い。
「こんなに面白い小説だったんだ」としみじみ感じ入っている(今さら)

「八月の光」には、ブラウン(ルーカス・バーチ)という箸にも棒にも引っかからない小人物が出てくる。
 主人公の一人であるリーナを妊娠させて逃亡し、逃げた先でもう

もっとみる