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小説感想

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#三国志

「私説三国志 天の華・地の風」全10巻の感想(裏面) この話の面白さは、物語の深層に眠る「プリンセス軸」にある。

「私説三国志 天の華・地の風」全10巻の感想(裏面) この話の面白さは、物語の深層に眠る「プリンセス軸」にある。

ブログで書いた「天の華・地の風」全10巻の感想の裏面。

「表面」はこちら↓。

「表面」では「面白かったけれど、色々と矛盾があり全体像がはっきりしなかった」と書いた。

「全体像がはっきりしない理由」の理由として挙げたのは

・この話には、(主に演義ベースの)通説である「三国志」に、新たな解釈を加える「歴史軸」と暗い過去を持つ主人公・孔明の内面の葛藤と自己回復を描く「個人軸」があ

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「私説三国志 天の華・地の風」感想5 孔明の中身が入れ替わっていて、「お前、誰だよ」と思う。

「私説三国志 天の華・地の風」感想5 孔明の中身が入れ替わっていて、「お前、誰だよ」と思う。

「私説三国志 天の華・地の風」の7巻まで読んだ感想。

5巻の南蛮行編は「プリンセス孔明」による主人公教になっていて、読むのを止めようかと思ったが、4巻までの面白さを信じて読み続けてみた。

6巻からは孔明の終盤までのライバル・司馬懿と最後の弟子・姜維が出てきて、北伐が開始される。

続けて読んで良かった……と思うくらい滅茶苦茶面白い。
ただ……。

孔明の中身が入れ替わっていないか???

急に

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「私説三国志 天の華・地の風」感想4 プリンセス孔明による「主人公教」になりかかっているけど、大丈夫か?

「私説三国志 天の華・地の風」感想4 プリンセス孔明による「主人公教」になりかかっているけど、大丈夫か?

「私説三国志 天の華・地の風」を五巻まで読んだ感想。
*タイトル通り、今回は否定気味な感想です。

前回。

四巻で劉備が死んだ。
ここまでは面白かったのに、五巻で(自分の中で)一気に失速した。

五巻は急激に「主人公教」が進んでいる。
「主人公教」とは、物語内で主人公の言動や価値観を相対化する視点がなくなる(もしくはあるが、物語的に効力を持たないことが明らかな)現象を指す自分の造語だ。

相対化

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「私説三国志 天の華・地の風」感想3 孔明の恋愛が自傷行為に見える、国政の描写が細かく読んでいて面白いなど。

「私説三国志 天の華・地の風」を三巻まで読んだ。

前回の感想。

国政の描写なども細かく描かれていて面白い。2巻は、落鳳破で龐統が死んだところで話が終わった。

「天の華・地の風」は様々な独自解釈が入っていて、龐統は劉備に取り立てられた後も呉と通じている設定になっている。

自分が仕えていた周瑜を殺した孔明を許せず、劉備の養子の劉封を抱き込んで派閥を作る。

龐統は孔明の策略で殺されるが、劉封は

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「私説三国志 天の華・地の風」感想2 主人公・孔明に見る「プリンセス」の厄介さと恐ろしさ

「私説三国志 天の華・地の風」感想2 主人公・孔明に見る「プリンセス」の厄介さと恐ろしさ

前言撤回。大人になった今でもわからない。一巻に続いて二巻の途中まで読んだ。

前回の感想に「子供だった自分には、その時読んでもこの愛憎劇はわからなかっただろう」と書いたけれど、早くも前言撤回。

今でも分からん。

二十代の時でさえ「結局、好きなのか嫌いなのかどっちなんだ」というしょうもない感想を言いそう

とも書いたが、いま読んだ時点で「結局、周瑜のことが好きだったのか」と仰天してしまった。(し

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