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紙はまっさらな場?

柳沢画廊の個展の2階にオーナーと共にレイアウトし飾りつけた小さなドローイングたち。
 全て、自分で染めた洋紙や和紙を各地へ持参し、そこで描いた作品です。現在進行形です。その場で描き始め、その場で描き終えます。
 中には実際にかなり古いレアな紙もありますが、ほとんどが自分が版画制作等で使用し、発表はしなかったここ20年くらいの、紙のハギレの裏側に描いています。

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 在廊していて、「描くのにどれくらい時間がかかったのですか」というよくある質問は、多層ガラス絵を発表している時よりずっと少なく、代わりに紙やペンについて尋ねられる事が多かった。
 通常何かを描く際、描かれる側のもの、つまり用紙やキャンバスなどの平らな面は、美術では支持体(しじたい)と呼ばれます。それは描く側にとっては「何もないまっさらな場」という仮想空間です。そしてそこにイメージを盛り付けるように描く。
 しかし様々な和紙に興味を持ち、自ら収集するうちに、その支持体自体が時間や空間を持っている、一つの世界であるという事をはっきり感じられるようになりました。
 それは例えば、我々が歩く大地に完全に平らで何もない場所などないように、それが不可逆の変化の途上(Progress)にあるように、物質として当然の理です。
 こういった意識は、Tree in Progressというテーマへの向き合い方が、そのような自らの感覚を落とし込める器として働いているのかもしれません。
 それが見る側にも伝わった結果、素材についての質問が出てくるというのはとても自然なことだと思いました。

 個展は明日23日(火)が最終日です。

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