2022/08/21(日)
彼女と一緒に買い物へ出かけた帰り道、自転車を漕ぐ僕らを向かい風が包み込んだ。
「ねぇ、今の風、涼しかったよね。」
「うん、ちょっと寂しいね。」
今年の夏は大きな思い出もないまま、こうして終わろうとしている。
小さな積み重ねは、いつか大きな一つになるのだろうか。
日々を生きることはとても地味で、しかし絶対に砕けないほどに強固な地盤を築き上げる。少しくらいサボったって、問題ない。地盤は強く、広く、僕らをがっしりと受け止めてくれる。
涼しい風が信号を赤に変えた。救急車が遠くの方を走っている。白みがかった空の真ん中を高速道路の高架が二つに割った。
「明日、卵買わないとね。さっき買い忘れちゃった。」
「いいよ、僕が買ってくる。明日は僕のほうが早いでしょ。」
新しい一週間のうちに、きっと季節はまたぐっと進んでいく。
涼しくて寂しい風に吹かれることを、いつだって忘れてはいけない。
信号が変わって、暗くなる前に、もう一度、空を見た。
・・・
今日も夜が来ました。
Good night.
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?