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「趣味は仕事にしない方がいい」というのは本当か

タイトルのような言葉を目にしたことはありませんか。
「趣味を仕事にするのはやめた方がいい」
「仕事にすると、好きだったものも嫌いになってしまう」と。


僕は前職で、バイク雑誌の編集者をしていました。学生時代からバイクが好きで、その「好き」が高じてバイク雑誌の編集部に入ったので、まさに「趣味を仕事にした」当事者ということになるでしょう。

今回は、その当事者として「趣味は仕事にしない方がいい説」について語ろうと思うのですが、結論からいうと「少なくとも僕には当てはまらない」という思いしかありません。

僕のバイク雑誌編集者歴は18年間に及び、その間、大好きなバイクを仕事とすることができて、とても幸せでした。もちろん、仕事ですから楽しいことばかりではありませんし、むしろしんどいことの方が多かったと思います。ただそれは、どんな仕事でも同じですよね。

いいも悪いもひっくるめて、「趣味を仕事にすることができて良かった」と思っています。転職したのも仕事が嫌になったからではなく、いろいろな事情でそうせざるを得なかったからです。
今でも「バイクが好きだ」という気持ちは学生のころと何ら変わっていませんし、僕にとってバイクは一生涯の趣味といえるでしょう。

そんなわけで「趣味は仕事にしない方がいい」「趣味を仕事にすると嫌いになってしまう」という説は、僕にはまったく当てはまらないわけです。


そもそもこの説、どういうところから出てきたものなのでしょうか。

もちろん、実際に経験したうえで「趣味は仕事にしない方がいい」という結論に達した人もいるでしょう。ただ、そういった体験談が100%というわけではありませんし(実際に僕が当てはまらないのですから)、想像やイメージだけで否定される場面も多いのではないかと思います。

おそらくですが「趣味を仕事にしたい」という考えには「仕事を甘く考えている」ような雰囲気があるからではないでしょうか。常識的に考えて、趣味は仕事とは関係ないからこそ趣味なのです。趣味を仕事にしたい、なんて言うと「遊んでて給料がもらえたら最高じゃん(笑)」などとヘラヘラ考えているかのようですよね。そんなところから「甘っちょろいことを考えるな」といった文脈で否定されてしまうのではないかと思います。

しかし僕自身の雑誌編集者時代は、趣味を仕事にできて幸せでした。仕事でバイクに触れるのは本当に楽しかったし、「仕事にしてしまったせいでバイクが嫌いになってしまった」ということもありませんでした。どんなに嫌なことがあっても、仕事でバイクに乗る時間は心が晴れました。「これが仕事だなんて、なんだか世間様に申し訳ないな」と、しばしば思ったほどです。

まぁ、仕事としてはめっちゃくちゃハードだったので、その意味では大いに注意喚起したい気持ちはあります。むしろ注意すべきなのはそっちかもしれない(笑)。ただ「趣味は仕事にしない方がいいの?」という問いに対しては「決してそんなことはないと思います」というのが僕の正直な思いです。

大事なのは「自分がどのように価値を発揮し、仕事にするのか」の部分で、それはどんな職業に就くにせよ同じですよね。
さすがに「バイクは好きだけど文章を書くのは嫌い」という人がバイク雑誌を作るのは合わないかもしれません。そういった意味での向き不向きはあるでしょう。しかし「趣味を仕事にする=うまくいくわけがない」といった認識に対しては「そうとも限りませんよ」と思うのです。


世の中では、「趣味が高じてその業界で仕事をすることになった人」はおそらく少数派だと思います。もしかしたら、当事者の意見って案外貴重なのかもしれない…。そんなことを思い、書きとめてみました。
あくまでも僕一人の体験談ではありますが、「趣味の業界で働きたい」と考えている人の参考になれば幸いです。

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