マガジンのカバー画像

最後の魔法物語

30
最後の「魔法物語」のまとめ。ほぼ毎週書かれる新しい原稿を、発表されるごとに追加してゆく予定。過去に講談社で発行された『魔法物語』上下の続編を、最終的に完結させるために2024年4…
運営しているクリエイター

#魔法物語

魔法物語 闇の大樹 No.30

 風の中にいた。  朝の独特な色の空にいた。  ただ眼前には夜が、夜よりも濃い夜をまとった…

斎藤肇
1日前

魔法物語 竜の大地 No.29

 タイファを呑み込んだ巨竜はゆっくりと首をもたげ、明けぬ空に向かって吼えた。  だが声に…

斎藤肇
11日前
1

魔法物語 ラシリウス No.28

 その少し前の朝。夜がまだ残る頃。  竜の大地を見下ろすニウルカの山の岩壁に、小さな洞窟…

斎藤肇
2週間前
3

魔法物語 タイファ3 No.27

 オオクラクは滅びた街の名だ。  タイファがテットと出会ったのは、かつてそんな名の街であ…

斎藤肇
3週間前
2

魔法物語 タイファ2 No.26

 踏みしめた舌は固く、だがおそらく全身中では柔らかい部位であるに違いない。  足下が、大…

斎藤肇
1か月前
3

魔法物語 タイファ1 No.25

 メイリの世界に現れた時、外の世界での時間から継続しているようでありながら、わずかな断絶…

斎藤肇
1か月前
1

魔法物語 竜の大地2 No.24

 陽光を受けてなお、薄く闇に包まれている。  風景は暗く、濁っている。  音はしている。無数の状況を表現する音たち。だがそれらはあまりに多様であり、ひとつの意味をもたらさない。たとえば阿鼻叫喚を強く押しつぶして生まれた静寂。  時に重さがあるだろうか。軽やかに過ぎる時間というものがあるかもしれない。けれど今、限られたこの空間には、進むこともままならぬ、固まりかけた溶岩に似て、粘り着くような重い時が流れている。  空間を構成する巨大な竜が二頭。広い平原すべてを覆い隠すように、身

魔法物語 竜の大地1 No.23

 朝を待って飛行艇は、竜の大地に行くらしい。  ィロウチはまだ、自分が小さな目によって竜…

斎藤肇
1か月前
3

魔法物語 行方  No.22

 それがどこなのかが分からない。  いや、どこなのかが特定できるのか、特定できたとしてそ…

斎藤肇
2か月前
1

魔法物語 ロブロウ No.21

 風が出てきた。  強い風だ。日暮れ前の凪が終わったようだ。もうじき夜になる。  道に突っ…

斎藤肇
2か月前
1

魔法物語 間奏曲1 No.20

 世界とは、届く限りの内側のことだ。  ただ足で歩き、走るしか行くことができないならば、…

斎藤肇
2か月前
3

魔法物語 メイリ8

 だがルシフスはまだそこにいた。  ィロウチの小さな目から投影された映像に、暗い空に浮か…

斎藤肇
2か月前
4

魔法物語 メイリ7

 そこに、ホーサグはいた。  突然、脳裏に浮かんだルシフスという名前に、全身が小刻みに震…

斎藤肇
2か月前
1

魔法物語 メイリ6

 朝が薄れてゆく。  太陽が高くなるにつれ風が止まった。  飛行艇は、動きだそうとして軋んだ。魔法により重さは消されているが、それだけでは浮かばない。内部には四人いる。その重さは消されていない。  それでも、飛行艇は動き出す。身じろぎするように震えて、地面をこすり、小さく弾み、どこかが地面に接している状況から、何度となく繰り返すうちに、ついに機体のすべてが空中へと離れる。  浮かんでしまえばすぐにでも、とはゆかずまた接地してしまい、けれど弾み、離れて、ふいっと昇った。  不格