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近世・近代の天皇・皇室 by 阪本是丸

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平成29年9月22日に埼玉県神社庁で開かれた明治天皇御親祭150年記念研修会の発表用レジュメです。ご本人の了解を得て転載しました
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訳知り顔の「神聖天皇」批判を批判する by 阪本是丸──氷川神社御親祭150年記念講演の資料から 1(2018年7月7日)

訳知り顔の「神聖天皇」批判を批判する by 阪本是丸──氷川神社御親祭150年記念講演の資料から 1(2018年7月7日)

 平成二十八年人月八日、天皇陛下は「退位 (譲位)の意向が強く滲み出ている」とされる「おことば」を、国民に向けて発表された。それから一年有余が経ち、すでに(平成30年)六月には「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」も成立、公布された。

 一部の報道によれば、政府はこの九月中にもこの法律の施行日 (退位期日)を政令で定める方針とのことであつたが、現時点 (九月十八日現在)では政府に特段の動きはない

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民のために祈られた歴代天皇の「大御心」 by 阪本是丸──氷川神社御親祭150年記念講演の資料から 2(2018年7月10日)

民のために祈られた歴代天皇の「大御心」 by 阪本是丸──氷川神社御親祭150年記念講演の資料から 2(2018年7月10日)

▽1 今上陛下「国民の安寧と幸せを祈る」

 今上陛下は、「祈り」について次のように語られている。以下は平成28年8月 8日の「おことば」よリー部抜粋したものである。

「私が天皇の位についてから、ほぼ28年、この間私は、我が国における多くの喜びの時、また悲しみの時を、 人々とともに過ごして来ました。私はこれまで天皇の務めとして、何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えて来ましたが、同時

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「現神」としての歴代天皇の敬神 by 阪本是丸──氷川神社御親祭150年記念講演の資料から 3(2018年7月11日)

「現神」としての歴代天皇の敬神 by 阪本是丸──氷川神社御親祭150年記念講演の資料から 3(2018年7月11日)

▽1 もしも神仏判然令がなかったら

 約百五十年前の明治維新によって日本の政治・経済・社会・文化・宗教などあらゆる分野・側面で大きな変革がなされたことは疑間の余地がない。それは我が神社や神道にとっても例外ではないことは今更いうまでもない。

 だが、だからといって近世と近代は切断されて非連続の日本の国家・社会が出来上がったというわけでは勿論ない。

 確かに、神社から仏教的要素が消滅し、別当や社

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近世における皇室と幕府と神社の制度 by 阪本是丸──氷川神社御親祭150年記念講演の資料から 4(2018年7月14日)

近世における皇室と幕府と神社の制度 by 阪本是丸──氷川神社御親祭150年記念講演の資料から 4(2018年7月14日)

▽1 信長・秀吉・家康と神社

 織田信長、そして豊臣秀吉の出現によって、ようやく長い戦乱の時代にも「天下統一」による平和な社会への兆しが見え、日本の歴史は確実に新しい時代へと動きつつあった。いわゆる織豊時代は短期間ではあったが、それまでの中世的社会を大きく変換させ、約二百年にも亘る「封建時代」の幕開けを準備した時代であった。

 神道と神社の歴史も、織豊時代の到来によって一大画期を迎えた。

 

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近代の神祇行政 (略年表) by 阪本是丸──氷川神社御親祭150年記念講演の資料から 5(2018年7月15日)

近代の神祇行政 (略年表) by 阪本是丸──氷川神社御親祭150年記念講演の資料から 5(2018年7月15日)

▽1 仁孝天皇の仏式追祭と神式例祭

・弘化三年一月二十六日崩御、四年二月六日一周聖忌を般舟三味院・泉涌寺で営む。
・文久二年二月二日から六日に十七回聖忌、清涼殿で懺法会、常御殿前庭に下御、泉涌寺山陵を遥拝。
・明治三年一月二十六日 仁孝天皇二十五年祭を神祇官で執行、明治天皇は賢所南庭で山陵遥拝、山陵に勅使差遣、祭典執行、また泉涌寺・般舟三昧院に中山慶子を差遣・代香、以後両寺の勅会法事を廃す。

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