サイトウリン

斉藤倫 『ポエトリー・ドッグス』『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえ…

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斉藤倫 『ポエトリー・ドッグス』『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』 『私立探検家学園』『はるとあき』(うきまるさんとの共作)など

マガジン

  • 詩「2020」

    もう2022ですが/だから 「2020」というタイトルで詩の連作をしています 2021から書いています

  • えーえんの補助線 〜 笹井宏之の歌を読む

  • 『ゆびぱち』までのポエトリソン

    『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまでの詩集』(福音館)の発売に先立ちまして、3月10日から4月9日までの一ヶ月、一日一篇、詩を書く超・個人的キャンペーンです 合計31篇の未発表詩になる予定です

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サイトウリン works

詩人・斉藤倫 ○詩集 『手をふる 手をふる』(あざみ書房) 『オルペウス オルペウス』(思潮社) 『さよなら、柩』(思潮社) 『本当は記号になってしまいたい』(私家版) ○物語(主に児童書) 『どろぼうのどろぼん』(牡丹靖佳 画・福音館書店)  日本児童文学者協会新人賞、第64回小学館児童出版文化賞 『せなか町から、ずっと』(junaida 画・福音館/坪田譲治賞候補) 『クリスマスがちかづくと』(くりはらたかし 画・福音館書店) 『波うちぎわのシアン』(まめふく 画・偕

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      できるけどやらない できないからやらない できないけどやる のなかで いちばんすごいのは できないけどやる なのだということさえ わからないひまわりは だめなのだ

      • 昭和が浅くなっている

        動悸がして どうだろう 昭和が浅くなっている ひどい手汗で これから人前にたつそんな 夢をみる予感 あのときのひと 目線だけが遺って 誰だっけ? とびこんだほうがましだと おもうけどなぜ できないの? 生きていることだって 優先席なのになぜ ゆずれないの? これから夢をみる予感 いやな夢みるいい予感 どこからが手足か氷かわからない また 助けて だれかの 動悸がして 昭和が浅くなっている

        • 「伊集院光とらじおと」最終回と感想と。

          伊集院さんのラジオすばらしかった。 「最終回だよ最終回」の第一声でスタート。 すべてのコーナーが最後なわけだが、最後の「(伊集院光とらじおと)ニュースと」もよかった。 ちょうど前日のゼレンスキーの演説を「感動」というより「うまい」を感じたという。 「しゃべる」ということに対してものすごく解像度が高いから、あの演説の、内容だけでない話しかたのすべてに関して。配慮や企みが手にとるように見えすぎてしまうんだろう。 募集した自由律俳句を紹介する「(伊集院光とらじおと)山頭火と」の

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        • 詩「2020」
          3本
        • えーえんの補助線 〜 笹井宏之の歌を読む
          4本
        • 『ゆびぱち』までのポエトリソン
          31本

        記事

          お出ししなかった、つきだしの夢

          『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』を書いたときに、詩にはじめてふれる子でも読める(「わかる」ではない)はんいにこだわったため、たくさんの好きな詩がこぼれた。 後悔だらけだったがしょうがない。 二年ぐらいたって、幸運にもまた詩をあつかった連載をはじめることができた。それが「ポエトリー・ドッグス」で、あの詩も入れられるかも、この詩も紹介できるかもと、夢がふくらんだ。 詩の候補をあげていく。その詩から生まれるテーマを考える。連載の、毎回のテーマとし

          お出ししなかった、つきだしの夢

          書かないよ

          時すでにお寿司 なんて書きはしない なにかを書くと 無差別の雷鳴がやってきて 方向を失う 時すでに行分け詩 なんて書きはしない 人生は南氷洋 1870年以降 氷漬けになっていた ランボーの酔いどれ船が 温暖化で また動きだす 人種なんて ありもしないものが 幽霊船になって あなたの最寄りの 公民館や緑地まで だって水位は 耳の下まできて ハマチとカンパチを 差別していく だから書かないよ 時すでに絵師 肺いっぱいの たんぽぽの綿毛 (pixiv系の  輸送系) おれの書く

          書かないよ

          ジャンルにこんがらがって

          たとえばSFというのはジャンルだろう ミステリや学園もの、冒険ものなんていうのもそうだとおもう 詩や絵本というのもジャンルだ 児童書や児童文学に携わっていてよくかんがえるし いつもおどろくのは 児童書や児童文学というのは「それをぜんぶやっていいのだ」ということ それってジャンルなのかな メタジャンルだなんていってもいみがないけど むしろある種の認識のしかたや断層にちかいものだと いまはおもっている

          ジャンルにこんがらがって

          2020

          2021になっても 街角の旗には2020 TOKYOが いたるところで凍てついていて FREEZE! うごくなということばは 温暖化でなくなったの しってる? あの子もしななかった デザート!なんていわれて スイーツとまちがえて 2020のまま 時はとまって もう動きだすことはなくて ベンガル虎がベンガル だけだとおもうなよ なんて 捨て台詞で廃びた ディスタンスってのは なんだ 空間じゃなくて 時間のことだったんだ 私と私の ディスタンス 子どものときのオレとわたし ぎっし

          プラッチック・ラブ

          関西では プラスチックのことを プラッチックっていうみたいに 竹内まりやのプラスチック・ラブを 世界ではシティ・ポップといって けたたましい音をたてて 夕陽がうみに叩きつけられ たた きつけられたた けたた ましいおとをたててたま しいおとをけたた ましい 音は帰っていく 世界の底へ ひともついていこう ガンジャを吸いながら 中目黒のドンキでなく スターバックスの風車が 巨大な帆を 再生エネルギーは けたた ましいたましいの 犠牲を犠牲として あとづけにしてほしい 残酷を引き

          プラッチック・ラブ

          あれからもう

          一ヶ月経ったけどまだ頭から離れないので書いておく 六月はじめころ 伊集院光さんのラジオの 子ども電話相談室というコーナーのなかで 七才のなっちゃんという子が質問した 「ピアノの先生がなくなってしまいました   どうしたらいつもいっしょにいられますか」 子どもらしいていねいな口調でとつとつと話すその質問に 朝から泣いてしまった 「なくなってしまいました」と「どうしたらいっしょにいられますか」は ほんとうなら並ぶことがない文だ 大人のおもう「ほんとう」ならだけど じぶん

          あれからもう

          金原瑞人✖️斉藤倫 『レディオ ワン』刊行記念対談 「飛ぶ教室」未収録お蔵出し〜後編 〈ラジオと表現のあいだで〉

          みなさま、こんばんわん。 ぼく、DJジョンがお送りする、月曜夜九時、〈レディオ ワン〉。 先日、番組ゲストの翻訳家の金原瑞人さんと、詩人の斉藤倫さんに、新刊小説『レディオ ワン』刊行記念と銘打って、いろいろ語りあっていただきました。 対談記事が掲載された「飛ぶ教室」59号(2019年 秋)に、収録しきれなかったパートを、note限定でお送りする、その後編になります。それでは、お楽しみください。(前編はこちら) (「飛ぶ教室」対談、ラジオの話題を受けて──) ジョン 実は対

          金原瑞人✖️斉藤倫 『レディオ ワン』刊行記念対談 「飛ぶ教室」未収録お蔵出し〜後編 〈ラジオと表現のあいだで〉

          金原瑞人✖️斉藤倫 『レディオ ワン』刊行記念対談 「飛ぶ教室」未収録お蔵出し〜前編 〈動物と言葉をめぐって〉

          みなさま、こんばんわん。 ぼく、DJジョンがお送りする、月曜夜九時、〈レディオ ワン〉。 先日、番組ゲストの翻訳家の金原瑞人さんと、詩人の斉藤倫さんに、新刊小説『レディオ ワン』刊行記念と銘打って、いろいろ語りあっていただきました。 対談記事が掲載された「飛ぶ教室」59号(2019年 秋)に、収録しきれなかったパートを、note限定で、前後編にわけてお送りします。 まずはその前編。それでは、秋の夜長に、どうぞお楽しみください。 (「飛ぶ教室」対談の『レディオ ワン』成立のエ

          金原瑞人✖️斉藤倫 『レディオ ワン』刊行記念対談 「飛ぶ教室」未収録お蔵出し〜前編 〈動物と言葉をめぐって〉

          えーえんの補助線 〜 笹井宏之の歌を読む(4)

          笹井宏之さんの歌を鑑賞する、パート4です。 ぼくは詩人なので、短歌の鑑賞というには詩人目線すぎるかもしれません。 序論、本論、結論というていではなく、一首評(のようなもの)を重ねていくかたちで、笹井さんの創作物がなぜ「ああいうふう」に見えるのかを感じとっていきたいとおもいます。 4 変換するうつわ *えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力を下さい 笹井さんの表現にはパフォーマティブという特性もある。 ここでの「パフォーマティブ」のいみは、ことばの内容よりその表

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          えーえんの補助線 〜 笹井宏之の歌を読む(4)

          [余白計画] ライ麦畑を聞いてきた

          先日、「文芸漫談・ライ麦畑でつかまえて」を観にいってきました。 文芸漫談というのは、奥泉光さんといとうせいこうさんが、さまざまな課題図書について、おもしろおかしく語る、講義のようなフリートークのようなステージです。初めて観たんですが、もうシーズン4だそうです。会場は、新宿文化センター。 ぼくは、十代のときに野崎孝さんの訳で読んで、それきり何十年も読み返していません。ですがその本はもう手もとになく、もってたのは村上春樹さん訳の『キャッチャー・イン・ザ・ライ』。しかもそっちは

          [余白計画] ライ麦畑を聞いてきた

          詩 ・ my name is

          土から生えてきたみたいに そこにいた 気がついたらね おもいだせるものはなにも なくて 実がしぼんじゃった くるみみたいに頭がカラカラ鳴った 記憶もないのに ことばだけはあった すべてを失っても ことばだけ忘れないのは なんでだろう はじめにことばありき っていうの 「はじめにことばありき!」って いいたいためにちがいない ぼくの名前は なんていってみても 出てこない  my name is っていってみたら つづきが出るっておもってた アキラ フレデリック ジゼル 名前

          詩 ・ my name is

          詩 ・ 雨色

          雨色にしてるの たまねぎを そういったの わからなくて あたまのうえに毛がたったみたいに ふるえた いためていためて なみだになる そんなふうに つらい ことばかりおもいだして たくさんの小銭みたいな ガスのおと だれかをつかまえた だいじなこころの 握力がよわくて ふうせんが まいあがる かわりにつかんだ すすきの穂を だいじにして だいじにして かわりだなんて いえなかった あめがたくさんふる 糸なら あやうく つかんでみたい そのとき つかんだものを 記憶のなかの