書かないよ

時すでにお寿司
なんて書きはしない
なにかを書くと
無差別の雷鳴がやってきて
方向を失う

時すでに行分け詩
なんて書きはしない
人生は南氷洋
1870年以降 氷漬けになっていた
ランボーの酔いどれ船が
温暖化で
また動きだす

人種なんて
ありもしないものが
幽霊船になって
あなたの最寄りの
公民館や緑地まで
だって水位は
耳の下まできて
ハマチとカンパチを
差別していく
だから書かないよ
時すでに絵師
肺いっぱいの
たんぽぽの綿毛
(pixiv系の
 輸送系)
おれの書くこの指先を
もう誰かが描いている
帆を張って
浅い呼吸で
マルチレイシャルという
マーシャルアーツで
有無をいわさぬ風のなか
もういちど生むことができたら
讃えられたら
さぞかしいいだろう


           (詩「2020」#3)

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