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「教養としてのスーツ」③ シャツのディテール

こんにちは。齋藤です。

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「教養としてのスーツ」の第3回目です。

今回も、第2回目同様、シャツの話です。

前回は、シャツのサイズ感の話でしたが、今回は、シャツのディテールの話になります。

これまで同様、「教養としてのスーツ」(井本拓海 二見書房 2019年12月)に従って見てみていきます。


1 生地はコットン(綿)100%一択

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まずは、シャツの素材の話です。

著者いわく、化繊のシャツはナシだということで、生地はコットン(綿)100%一択とのことです。

「この本のキーワードの一つはクラシックである。クラシックとは、時代を超えて残っていることを意味する。」
「クラシックを現代で体現するためには、機能性をアピールする最新のものを選ぶのではなく、基本的には長い歴史のある天然素材を選ぶと間違いは少なくなる。」
「同じように、もしボタンが選べるならば、プラスチック素材は避けた方がいい。長らくシャツに用いられていたボタンは貝ボタンだからだ。」

著者はこのように↑↑↑書いており、理由としては、「天然素材=クラシック」ということが大きいわけですが、個人的には、綿100%の持つ風合いや、肌触りの良さ等の点からも、綿100%を推したいと考えます。

余談ですが、私は、特に寝間着や下着、Tシャツなどについても綿100%が一番だと思っており、この点には多少のこだわりがあります。


なお、本書では、「ストライプとか変なステッチがあるとか、そでやえりの内側にチェックの柄があるというような変化球は自己主張の方向性を間違えていると思った方がいい。」とも指摘されています。

個人的には、ストライプのシャツはアリなのではとも思いますが、その他の部分についての指摘はたいへん耳が痛いものです。

一時、ボタンホールの刺しゅうやボタンを付ける糸の色が変えてある襟腰の高いシャツが流行っていた?際に、3着1万円セールで、ボタンホールのかがり糸とボタンをつける糸がネイビー、そでとえりの裏にチェック柄が入っており、第一ボタンが二つ(ドゥエボットーニ(デュエボットーニ)といい、イタリア語で「ボタンが2つ」という意味で、第一ボタンのところに2個ボタンがあるタイプのシャツのことを言うそうです)のシャツを購入しました。↓↓↓

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ポリエステル混の丈夫な生地で、4年ほど着ているのですがまだまだ着られそうです。

当時はこういうディテールをむしろシャレているという感覚で購入したわけですが、今となってはあまりこうしたディテールのシャツを着ている人も少なくなり、そうなるととたんにダサい気がしてくるのが不思議です。

やはり、クラシックな、普通のものこそ長く着続けられる服であることを痛感させられます。

 

2 えり形はセミワイドスプレッド一択

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次にえりの形の話ですが、著者いわく、セミワイドスプレッドカラー一択とのことです。


「あなたが覚えるべき用語は『セミワイドスプレッドカラー』だけである。
えりの開きの角度はメーカーによって異なるが、100度から120度である。
『メーカーズシャツ鎌倉』はこの角度のシャツをワイドカラーとして販売している。
多くの本ではセミスプレッドカラーは90から120度とされているが、90度であればレギュラーカラーと大きな差はない。
100度以上のものを選ぶべきである。
一方、120度以上になると、顔の幅が強調されてしまう。」


突然具体的なメーカーの名前が出てきて驚かされますが、この後も本書には「メーカーズシャツ鎌倉」が登場しますので、著者のひいきのメーカーだと思われます。

私が着ているこれ↓↓↓も、「メーカーズシャツ鎌倉」製のものですが、同社のWEBサイトでは、「スプレッド」と記載されており、同社の「セミスプレッド」はもう少しえりの開きの角度が少ないものになっています。

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本書では、セミワイドスプレッド一択の理由が5つ記載されていますが、そのうち、

理由②

「セミワイドスプレッドカラーはジャケットのゴージラインと平行になる。」
「ジャケットのゴージラインとシャツのえり山(えり羽根)とを平行にすれば、Vゾーンがすっきりして見える。
たいていのジャケットの場合、ゴージラインと平行になるのは、セミワイドスプレッドカラーだけである。」

という理由付けと、


理由③

「セミワイドスプレッドカラーは、えりの剣先の収まり具合がいい。
ジャケットを着た時にレギュラーカラーであれば通常えりの先が見えてしまう。
そうすると、えりの先とジャケットのラペル部分に隙間が生じることになる。
それに対して、剣先がジャケットに収まるセミワイドスプレッドカラーだと見た目にも美しい。」

という理由付けがもっともしっくりきます。


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このシャツ↑↑↑もセミワイドスプレッドです(別ブランドのものですが)。確かに剣先がジャケットに収まっています。


 

3 ポケット不要

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続いてポケットの話です。ここでも本書はミニマルを貫きます。

いわく、「ルールは機能性に勝る」とのことです。


「現代のシャツにポケットがある理由は、軍服の名残であるとか、ベストのポケットがシャツに用いられるようになったなど諸説ある。
だが、西洋文化ではシャツは下着として捉えられていて、下着ならポケットは機能的にも必要ないはずだ。」


そして、ここでも、「メーカーズシャツ鎌倉」の話が出てきます。

「メーカーズシャツ鎌倉」は、2012年にニューヨークに出店した際、ポケット付きのシャツを販売したものの、売れ行きは芳しくなかったという。
その後ニューヨークだけでなく、日本国内でもシャツのポケットをなくす決断をした。結果として、ニューヨークでの売り上げは改善され、現在も営業を続けている。」
「シャツにはポケットがないことがグローバルな基準であり、日本が誇るシャツメーカーが売れることだけを目的に商売しているのではなく、日本のビジネスマンの価値観を世界標準に引き上げようとし、なおかつ結果も出している」


さらに、著者いわく、「ヨーロッパではポケットなしが既製品でも標準的なようだ。それに対して、アジアやアフリカではポケットのあるシャツが多い。」とのことです。


かくいう私も以前からなんとなくポケットがない方がカッコいいような気がして、ポケットがないシャツを買っているのですが、正直、胸ポケットがないことで困ることはあります。

普段メガネをかけているのですが、そこまで目が悪いわけでもないので、本を読んだりする場合メガネをはずすことになります。

外したメガネをどうするのかといいますと、眼鏡ケースを持ち歩かないのでジャケットの内ポケットにしまうのですが、夏にジャケットを着ていないときに胸ポケットがないとメガネをしまう場所に難儀することになります。

また、普段ジャケットの内ポケットにさしているボールペンでも同じことが起こります。

本書の観点からは、夏でもジャケットを羽織るのでそのようなことは起こらないという話になるわけですが、夏の暑さに負けてジャケットを着ないという選択をしてしまった場合、シャツの胸ポケットがないと困ることになるわけです。

このように、胸ポケットは一定の機能を果たしている場合もありますので、購入する際は、ポケットがなくても問題ないかどうかを吟味されることをお勧めします(もちろん、本書の観点からは、シャツの胸ポケットにメガネやボールペンを入れるのはご法度なのですが)。

 

4 そではシングル

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そでについては、あえてダブルを選択することはあまりないものと考えられますが、一応触れておくことにします。


「ダブルのメリットはカフスを楽しめること以外にない。
ミニマルの観点からはカフスも必要としないシングルがベストの選択だ。
これまでこの本をお読みの方ならわかると思うがシングルの貝のボタンでさりげない選択をした方が確実にクラシックに近づくのである。
基本に立ち返るならば、男のファッションの本質は引き算なのだ。」


ここでもやはりシンプルイズベストです。

007でジェームズ・ボンドがカフスの位置をクイッと直す仕草にシビれるわけですが、これを再現しようとカフスをつけるのは、本書の立場からするとクラシックから解離してしまうということになります。

 

5 前立てについて

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前立てと言われてもピンとこない方もいらっしゃると思います。

前立てとは、シャツの上前の折り返しや別布の装飾を言います。

どうやら本来は補強の意味合いだったようです。


↓↓↓表前立て

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↓↓↓裏前立て

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著者によりますと、「裏前立て(フレンチフロント)は前立てが表に見えず、スッキリ見えるのでフォーマル度が増す。」とのことです。

そこで、

ブロード:裏前立て(フレンチフロント)

オックスフォード:表前立て(プラケットフロント)

として生地の素材感(織り方)に合わせて前立てを選択せよというのが本書の提案です。

ブロードのように艶を重視する場合は、前立てもフォーマル度の高い裏前立てを、オックスフォードのように凹凸のある生地でカジュアルさを重視するなら表前立てを選ぶわけです。

「日頃はスーツしか着ないなら、手持ちのシャツは5枚とも裏前立てとなるし、反対にジャケットとパンツのカジュアルなスタイルが多いならば、表前立てのシャツが多くなる。」ことになります。

そして、「表前立てとスーツを合わせてはならない。この細部への配慮が、スーツスタイルを洗練させることになる。」

個人的には、裏前立てのほうがスッキリしていてので好きなのですが、「表前立てとスーツを合わせてはならない」とまで言い切られると、表前立てシャツの割合が多い私は困惑してしまいます。

他方、テレワークの広がりなどの背景のもと、スーツではないいわゆるジャケパンもビジネスウェアとしての地位を確立しつつあるような気がします。

こうしたややカジュアルな服装であれば、表前立て・ボタンダウンシャツたちも、再び活躍の機会が巡ってくることになるものと思われます。

いかがでしたでしょうか。

相変わらずのルールの多さですが、逆にルールを守りさえすればそれなりの見栄えになるならルールに従っておいた方が楽だという気もします。

上記1~5の小見出しだけ見てみても、いかに著者がミニマルを志向しているのかがよくわかります。


ちなみに、私は「メーカーズシャツ鎌倉」のシャツを愛用しており、コットン100%、貝ボタン、裏前立て、胸ポケットなしのものを買っています。

↓このシャツです。サックスブルーの青味の加減もちょうど良く、かなり気に入っております。

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税込みで6000円少々で大変満足しています。

「メーカーズシャツ鎌倉」のものは、袖口のボタンも一つしかついておらず、このあたりにもこだわりを感じています(すべての商品を見ているわけではないのでわかりませんが、少なくとも私が買おうと思ったものは全てボタンが一つしかありませんでした。)。

ただ、既製品では左手の時計問題が解消されませんので、いずれはオーダーしてみたいと考えております。


他方で、本書では「メーカーズシャツ鎌倉」のものは胸ポケットがついていないかのような説明になっていますが、少なくとも現在では胸ポケット付きも普通に売っています。

以上、前回と2回にわたってシャツについて取り上げましたが、次回は、スーツの柄や色の関係について見ていきたいと思います。

個人的には、次回の部分が本書の白眉であると思っておりますので、ご期待ください。


3000字までに収めようと思っていたのですが、結局4500字を超えてしまいました・・・

ミニマルというのは本当に難しいです・・・


ここまでお付き合い下さり誠にありがとうございました。


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