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あらすじを聞いてくれるEさんへ。

好きなキャラクターに
囲まれて、Eさんは嘆く。

「ええ!ショック!それじゃあ私は誰に
  感情移入すればいいの!」

彼女は怒っている
わけでは全然なく

しかし

むろん微笑んでいる
わけでもない。

彼女はわたしの友人だ。
それも特別な友人である。

彼女とは職場が同じだった。
とあるペットショップだ。
私がEさんと出会ったのは
たしかに3年前だった。

Eさんと初めて挨拶を
交わしたときのことを
鮮明に記憶している。
「今日からお世話になります、猫目です」
と満面の笑みを嘯く私に、
Eさんは銀縁メガネの彼方から・・・

・・・猛烈に私を睨んでいた。
とても怖い印象を受けた。
(しかし、これはのちに発覚したが
どうやら眼を細めていただけらしい。
頼む。眼鏡の度数を確認しておくれ)

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Eさんは私の1つ上の先輩だ。
そして今では、大切な友人だ。
(と私は思っている)

そんなEさんのお家へ
私は定期的に遊びにいく。

ピーポーン
と可愛らしいお部屋に
お邪魔してから
ものの3分後

Eさんは決まって涙を
浮かべている。

久しぶりに会えた
嬉しさに興奮しきった
私はいつもの通り

饒舌になり
近状などを
ペラペラ・ペラペラ・ペラペラリ
と早口に捲し立てる。

いやな客だ。
私ならそんな友人
とは絶交している
ことだろう。

ともかく
そんな人災を受けながらも
Eさんは私と仲良くしてくれて
いるのだから感謝してもしきれない。

「どうして泣いてるの?」
一応聞いてみる。
もしかしたら今日に限って
Eさんを傷つけてしまった
可能性も無くはない。

すると彼女は
口元に笑みを浮かべて
「いや、だって面白くて!」
と涙をぬぐう。

なんとまあ!
なんとまあだよ!

私は、これほど
感情豊かな友人を
他に知らない。

そんなふうにして
彼女が笑いに笑うから
私は有頂天もいいところ。

そのまま勢いに任せて
ありとあらゆる
機密情報を…なんてことは
まず有り得ないけれど…
(私には大層な機密など無い)
ありとあらゆる
お話を片っ端から喋りまくる。

何度もいうが
仮に自分なら
こんな友人は
いやだ。
御免だ。
吹き飛ばしたい。

換気のために
開け放たれた
窓の外へと
吹き飛ばされることなく、
私の話に耳を傾けてくれる。

彼女はやさしさの塊である。

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大口を開けて笑ったり、
おかしさに涙を滲ませたり、
両目をおおきく見開いたり、
ハッと息を呑んで黙ったり、

これでもか
というくらい
大袈裟なリアクションを
これでもか
というくらい
胡散臭くやってくれる。

だけど

信じてる。
彼女はあくまで自然に
そうしたリアクションを
とってくれている、と。

むしろ

これが演技であるなら

私は早急に、
過去お世話になった
演劇の先輩方への
コネクトを駆使し
なんとしてもEさんを
役者に仕立てあげたい所存だ。


そして

セリフは冒頭へと巻き返す。

「ええ!ショック!」

練りに練った物語を
その日もEさんは熱心に
聞いてくれていた。

それが
しかし

次に書くつもりだった小説の
ストーリーを聞いたEさんの
反応がまあ…

ありのまま!!
Let It Go の楽曲が
舞い降りてくるほど、
ありのまま!!


「えぇ……」

と残念そうな声を
当人よりも残念に
聞き入るわたし。

「なんだぁ」

とあきらかに肩を落とす
彼女以上に
肩を削ぎ通しすわたし。

「誰についていけば
 いいの?」

「登場人物の誰にも
 ついてけないよぉ」

「せめて最後にはかっこいいセリフ
 でも言ってほしい」

と、登場人物について
率直な疑問をならべる
友人へ率直に問いかけてみる。
「え。だめかな?」
「この展開はナシなのかな?」

あれれ。
さっきまであれだけ
嬉々として聞いていた
その瞳に光が
ないんだけど!!

と、いうようなワンシーンが
ございまして。

しかし、どうしても今回の
物語はこのままで
そう"ありのままで"いきたい!
ということで、そのままの設定で
執筆を開始いたしまして。

鎌倉の先生(小説の先生です)
のところへ原稿を持っていきまして。
ご感想をいただきまして。

正直なところ、面白いですが、
僕はこの作品の誰にも感情移入が
出来なかったですね……。

はい。学びました。

正直な方の意見は
素直に聞き入れます。

以上が友人へ向けての
メッセージになります。

Eさん。読んでくれているかな?

私は感謝しています。
こんな近くに素直すぎる
意見を述べてくれる方が
先生含めて2人も居るなんて
ほんとうに、なんたる光栄でしょうか。

そしてこのブログを読んで
くれているあなた様へ。

いつも

心から感謝しております。

ありがとうございます。




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