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「イチゴ愛」に見る日本のエンターテイメント・マインド

先日ある記事で読んだのですが、イチゴの生食での消費において日本は世界一なのだそうです。
品種においても、日本の登録数は310種(2024年6月末現在)で、その数は世界の品種の半数!を占めるとのこと。
一方、世界のイチゴの生産量を見ると、2022年の世界の生産量957万トンのうち、トップは中国の335万トンで日本は16万トンで11位。
生食する量が世界一にして品種改良数も世界一、でも生産量はベストテン圏外。
ここから見る日本は、「イチゴ愛」は世界一な国という姿が浮かびあがってきます。

愛ゆえに生まれるものが

日本におけるイチゴの収穫量1位は55年連続で栃木県。
有名なのは「とちおとめ」。
ずっと主力品種だったのですが、2024年産から「とちあいか」という品種に切り替わったそう。
こちら、とちおとめよりも甘味が増しているのですが、何と言っても特徴は、縦に切ると「♡」の形に見えるということ。
これは、もう愛ですね。
単に食材としてイチゴを捉えているだけでしたらこんなことはしませんよ、きっと。
そしてここには、食というものに対する日本人の姿勢が強く現れているな、とも思います。

食を文化として創造する

「食文化」という言葉があります。
これは私の私見ですが、通常「食文化」というと、これまでの食における事実をベースに学術的視点からその「実態を語る」というものが一般的かな、と。
ある意味「結果論」だなと思うのですが、日本の場合は、食というステージで文化を創っていくというスタンスなのではないかと。
そして、それがシェフとかパティシエといった料理という場にとどまらず、生産者という立場においても同様にあるということ。
これが、日本の食文化が世界でも別次元の豊かさを持っている秘密なのではないかと、この「♡」イチゴを見て思うのです。

舌から五感へ

こんな「イチゴ愛」な日本ですが、記事によるとこの起源?はどうやら1980年代のよう。
この時期、栃木の「女峰」福岡の「とよのか」が誕生。
この2種が生まれるまでは、イチゴは酸味が強いフルーツだったのですが(確かに、子供のころ行ったいちご狩りのイチゴは酸っぱかった!コンデンスミルクの量がめちゃ少なくて、払った料金の元を取るほどイチゴを食べられなかった記憶が・・・)、この糖度の増した甘いイチゴの誕生によりイチゴ界に革命が起こったのです。
さらに、促成栽培技術の向上で11月から出荷が可能となり、それによりクリスマスにショートケーキを食べる習慣が定着していき、日本人の「イチゴ愛」は一気に加速していったわけです。
その流れを受けて、2000年代に入ると栃木・福岡のみならず各地で「ご当地ブランドイチゴ」の開発が白熱。
白いイチゴや果肉の中まで赤いイチゴなど個性あふれる品種が各地で生まれ続けているのです。
甘味がもたらした革命の起から、視覚効果も含めた開発へと、革命の幅は広がっています。

「体験」の創造

これは、イチゴというものを単なる食材ではなく、「体験創造の財」として捉えているから起こることなのだと思います。
まさに、これからのエンターテイメント創造にも言えるスタンス。
日本というのは、いわゆるエンタメの世界に限らず、あらゆるジャンルで根底にエンタメ・マインドを持っている国なのではないかと、「イチゴ愛」の姿を見て思うのでした。

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