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リレーストーリー「どすこいスパイ大作戦#5」

第5話「スパイアイテム」

6階の廊下を進みながら耳を澄ますが、これといった音は聞こえてこない。この階は、表向きは客室階にはなっているが、廊下の壁に客室ドアが1つも無い。

「こんな時にはあれだな」

蒙古龍はポケットから何かを取り出した。
一本の細いコードだ。
一方の先には吸盤らしきものが、もう一方にはイヤホンらしきものが付いている。

「超震鬼(チョーシンキ)。MGBの秘密研究所が作ったスパイアイテム。音は振動。壁に取り付けることで反対側の音を振動で感じることが出来るのだ」

誰が聞いているわけではなし、小声でアイテムの解説をする蒙古龍。

スパイとして盗聴は大切な仕事だ。
何よりも気分が盛り上がる。
しかし、なぜこの時代にコードレスではないのか?
蒙古龍の脳裏にふと疑問が浮かんだが、色々と事情があるのだろう、とそれ以上考えるのをやめた。

早速、その吸盤を壁に付け、イヤホンを耳に・・・。

ガサガサというノイズが聞こえてくる。
やがて、そこに声らしき音が!

「わ、わからん・・・」

聞こえてくるのは、日本語でもモンゴル語でもない知らない言葉だ。

「こんな時はあれか」

再びポケットから何かを取り出す蒙古龍。
それは小さな独楽のようなもの。

「オコマリイヤホン。言葉の振動から言語解析をして翻訳してくれるスーパー翻訳イヤホン」

独楽の回し手のところを、はめていたイヤホンの穴に挿し、独楽の部分を耳に入れる。
これで自動翻訳した音声が聞こえてくるのだ。

すると・・・

『ガガガ、ガ。爆破計画は順調に進んでいます、ガガガガ』

爆破計画⁈

蒙古龍の全身に戦慄が走った。
と、その時LINEが届いた。
送り主はポッポ。
MGBのトップからだ。

急いでメッセージを見る蒙古龍。
そこには、

“ホテル、間違えた、新宿ではなく三宿。16時ではなく、16日“

今日は、2月4日。
今日は全く関係の無い日ということだ。

となると、今、自分が掴んだ情報は一体⁈

『ガガガ、では、これから出掛けます』

廊下に向かって来る足音が聞こえる。
マズイ!
蒙古龍は急いで吸盤を外すと、非常階段へと続く扉に向かってダッシュした。
力士は瞬発力がすごいのだ。

間一髪セーフ。

しかし、一体、あの爆破計画は何なのか・・・。

2日後―――
今日は鶴竜部屋への出稽古。
両部屋の力士が、実践さながらのぶつかり稽古をする日だ。

今はどこの部屋にも外人力士はいるものだが、この鶴竜部屋には初のエチオピア出身力士、黒豹丸がいる。
マラソンでは世界を席巻するエチオピア勢だが、相撲では彼が初。
ランナーとは真逆の体形をしている相撲界だが、運動神経の良さは抜群の国。
これから同国出身の力士が増えてくるかもしれない。

そんな黒豹丸とのぶつかり稽古が巡って来た。

同じ幕下同士だが、実は今日が初めてのぶつかり稽古。
気合が入る。
二人が構える。
黒豹丸の目が少し険しくなった気がした。

バチバチバチン!

黒豹丸が張り手を入れて来た。
思わず土俵を割る蒙古龍。

すると次も張り手、その次も、そして、その次も・・・。

最初は何だよ、と思った蒙古龍だが、ある瞬間にふと気づいた。

「あれ、この張り手、規則性がある⁈」

(つづく)



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