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非線形的運動学習理論『エコロジカル・アプローチ』【5/5】

非線形的運動学習理論『エコロジカル・アプローチ』【4/5】からの続きです。

コーチングとは『信じること』

ここまで、エコロジカル・アプローチの全貌に少しでも近づきたい、そして多くの人にこの理論について少しでも興味を持ってもらいたいと自ら勝手にQ&Aをつくり、言語化してきた。想像を遥かに超えた時間がかかってしまったが、このプロセスには気づきと学びがたくさんあった。そして、日々のコーチングを振り返りながら執筆を進めることにもなり、自身のコーチングに対する考え方やコーチとしての在り方にも少なからず影響があったように思う。

さて本記事をどのように締め括ろうかと今まさに本章を書いている最中に「ふっ」と頭に浮かんできた言葉があった。

コーチングとは『信じること』

ラグビー界の名将エディー・ジョーンズが執筆した書籍の題名にもなっているこの言葉であるが、エコロジカル・アプローチの実践は、正にこの言葉の体現と言えるのではないかと思ったのである。

コーチングは科学的な側面を持つと同時に、芸術(アート)的な側面も併せ持つ活動である。コーチは日々学び続け、現在進行形の学びを栄養にして、科学的根拠に基づいたコーチング(エビデンス・ベースド・コーチング)を実践することが求められる。しかし、その一方で学んできた理論が現場の実践といつも完全に一致するわけではないという現実にぶち当たる。科学的側面からだけでは説明し難いことがコーチングの現場では常に起こるのだ。つまり、そこがコーチングの芸術的側面だ。

エコロジカル・アプローチは「自己組織化」というそのキーワードが象徴する通り、プレーヤーは自律的に成長する存在であることを前提とした理論である。裏を返せば、コーチがプレーヤーを直接的に成長させることはできないという前提がそこにはあると気がつく。つまり、エコロジカル・アプローチにおけるコーチングとは、プレーヤーを成長「させる」存在ではなく、プレーヤーが成長「する」ことを支える活動だと言えるのである。

コーチングとは『信じること』

この言葉が意味することを私なりに解釈して説明すると次のようになる。

コーチングとは『プレーヤーが自ら成長する存在であるということを心の底から信じた上で、その成長を支えることに全力を尽くすこと』

私自身、バレーボールのコーチングをスタートしてから、もう少しで10年の月日が経とうとしている。これまで自分自身、上に書いたようなコーチングを実践してこれたのだろうかと自問してみる。

これからもコーチングを続けていく以上はプレーヤーが成長していく側で、私自身も成長していくと心に強く誓い、本記事の執筆を終了したい。

参考書籍・サイト



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