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エコロジカル・アプローチ@バレーボール【10/16】"Smashbal" 段階的に制約が発展するスモールサイドゲーム

エコロジカル・アプローチ@バレーボール【9/16】「スモールサイドゲーム(SSG)」の可能性からの続きです。

前回は、バレーボールで若年初心者が最初からゲームを楽しみながらスキルを身につけていけるためには、「持ってはいけない」「落としてはいけない」「3ヒット以内」ということも含め、ちょうど遊べるようにルール(制約)を変更し調節することが重要だということを解説しました。

それを実現するスモールサイドゲーム(SSG)の典型例として、オランダで開発されたSmashbalがあるので、今回ははその中でルール(制約)がどのように発展していくのか、Level1からLevel4まで順を追って具体的に見ていきたいと思います。Smashbalは以前の記事【バレーボーラーのための学びのプラットフォーム構築のために:その3「バレーボール指導の現場に必要なものは?」】でも紹介していていますが、FIVBのホームページのヘッドラインにも取り上げられています

ルールはsmashbalをコントロールしているオランダの組織のサイトにあります。この組織はオランダのバレーボール界でどのような位置にあるのでしょう?「バレーボール指導者のためのプラットフォーム」というとても興味深いサイトですね。

ルールはこちらに書かれています。

全般的なルール

コートサイズ:バドミントンコート or ハーフコートで縦7m
ネットの高さ:1.5~2.1m or 伸ばした腕の手首の高さ(ラリー継続の支配的な要因となるので、プレイヤーのレベルによって変える)
人数:2対2 or 3対3(2対3もあり)

Level1

・サービスエリア(ネットからの距離):2or3m
・床との接触の可否(バウンド可能数)&キャッチの可否:相手のサーブおよびアタックは直接またはワンバウンドでキャッチする
・キャリーの可否:持って走ってもよい
・連続ヒットの可否:自分でトスアップして自分で打つ
・サーブ権:ボールのある方からサーブ
・ローテーション:ボールを打ってネットを超えたらローテーション

Level2

level1からの変更点
・キャリーの可否:否:ネット際の味方(セッター)に投げる
・連続ヒットの可否:否:味方セッターが投げ上げたボールを打つ

Level3

Leve2からの変更点
・サービスエリア(ネットからの距離):7mまたはバドミントンコートのエンドライン
・床との接触の可否(バウンド可能数)&キャッチの可否:
 ○相手のサーブは直接キャッチ(バウンド不可)
 ○相手のアタックは直接またはワンバウンドでキャッチ(変更なし)
 ○味方のパス(セッター)はキャッチ不可(オーバーかアンダーでパス)

Level4

Level3からの変更点
・床との接触の可否(バウンド可能数)&キャッチの可否:
 ○相手のサーブは直接ヒット(アンダーかオーバーでパス)
 ○サーブレシーブされたボール(セッター)はキャッチする
 ○相手のアタックは直接またはワンバウンドでキャッチ(変更なし)
 ○味方が投げたボール(セッター)はキャッチ不可(オーバーかアンダーでパス)(変更なし)
・サーブ権:得点したチームからサーブ
・ローテーション:規定なし

バレーボールで特に難しく、遊べるための障壁となる「パス」と、さらにその上に「方向転換」や「正確なコントロール」が求められる「トス(セット)」、および、最も魅力的なプレー「スパイク」の障壁となるネットの高さを適切なルールの変更によってクリアしています。スキルアップに合わせてルールを変えていくというところも本当に素晴らしいと思います。

これは、前回の記事を参考にアレンジし実行していただいたものですが、こちらの方がより「初心者から、誰でも遊べる」イメージだと思います。ネットの高さはせいぜい胸くらいで、動画の子どもたちがボールを叩ける(スパイクできる)にはちょうどよいように見えます。

Smashbalの説明には「トーナメント」という言葉もあり、大会を作りそれに向けて練習して臨むということになると「伸ばした腕の手首の高さ」がネットの標準になるのも頷けますが、あくまで「プレイヤーのレベルによって変える」のが重要ですね。

Smashbalでは「相手のアタックは、ボールを直接またはワンバウンドでキャッチする(サーブについては段階的に変化)」というルールがあるので、それができなかったときに相手に点が入るわけですが、最初はこちらの動画のように「両サイドのコーンをゴールと見立てゴールを通過したら1点とする」方が遊べるでしょう。素晴らしい工夫だと思います。

要するに、一番重要なのは「どんなルールなら遊べる段階にいるのか?」ということですね。

実際にSSGを考えるときは、そのルール(制約)の中で「遊べる」ことによってどんなことが獲得できそうか?どんなことの獲得をねらって制約を設定するのか、その「ねらい」が重要ですが、このツイートにあるように「様々な要素を含んでいる」ということがやってみて分かるということもあるでしょう。やってみて分かったことから「ねらい」をシフトさせることも時として必要です。それも含めての「試行錯誤」ですね。

エコロジカル・アプローチ@バレーボール【11/16】スモールサイドゲームと「主体的・対話的で深い学び」に続きます。

▶︎布村忠弘のプロフィール


バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。