各発達段階におけるトレーニングの在り方(STAGE1:FUNdamental)#9
「バレーボーラーの一貫育成メソッド」 制作の第9回です。
前章ではLTADモデルの各発達段階の特徴を説明するための8項目についてまとめました。本章からはLTADモデルの各発達段階におけるトレーニングの在り方について前章で説明した8項目に沿って解説をしていきたいと思います。
STAGE1:FUNdamental(基礎・基本)
まずは、LTADモデルにおける第一ステージである『FUNdamental』について考えていきましょう。"fundamental" とは日本に訳すならば「基礎・基本」となりますが、ここでは敢えて『FUN』の部分を大文字で表記しています。このことからもわかるように「基礎・基本」には「楽しみ」という要素が含まれていているのだという意味が込められています。それでは、次からは8つの項目に沿って第一ステージ『FUNdamental』を深掘りしていきましょう。
Overall Goal(総合的ゴール)
バレーボールをプレーすることに楽しみを感じながら活動に参加している状態。それが理想するゴールだということですね。バレーボールそれ自体を好きになることが第一ステージでは特に重要視されています。
Chronological Ages(暦年齢)
日本の学齢で言うと、だいたい幼稚園年長から小学3年生の間の子どもたちがこのステージに該当します。また、ここでは男女の発達段階の違いから暦年齢には違いがありますが、暦年齢はあくまでの目安と考えることが肝要と言えるでしょう。
Focus(焦点)
初めてバレーボールに触れることになるステージであるからこそ、実際にバレーボールをプレーすることが大事だという考えがこの言葉に集約されていると言えるでしょう。バレーボールは正式ルールの下では初心者にとって、最初からゲームを楽しむことが難しいスポーツと言えますが、制約操作をすることで(ボールを軽くする、人数を減らす、ネットを低くするなど)十分に楽しみながらプレーすることができます。また"play"には「遊ぶ」という意味もあります。指導者から教えられたことを繰り返して練習することよりも、自発的な意思によってまずはプレーしてみるということが重要だと言えるでしょう。
Skill Development(技能発達)
先述した通り、初めてバレーボールに触れることになるステージとなるため、技能発揮するために必要な技術が何かが分からなかったり、どのようにトレーニングをすればいいのか分からなかったりすることが当然ながらあるということです。それゆえに、指導者がこのステージのアスリートに対して、どのような技術をどこまでティーチングするのか、またトレーニング環境をどのようにデザインしていくのかということは非常に重要な課題となると言えるでしょう。
Goal(ゴール)
"general"や"simple"、"introduction"という言葉が使われている通り、第一ステージでは、何か特定の技術や専門性を高めるということをゴールに据え置くのではなく、一般的かつ全体的な成長を目指していくという方向性があることが分かります。この項目では、多面的かつ具体的な観点からゴールが提示されています。指導者は、特定の観点だけに捉われずにアスリートの包括的に成長をいう観点を大切にする必要があるでしょう。
Discipline Integration(専門分野の統合)
第一ステージでは、インドアとビーチを棲み分けることはありません。もしも環境さえ整うようであれば、インドアだけではなくビーチのような環境でバレーボールをする経験もできれば、長期的な視点でのプレーヤーの成長に寄与することでしょう。
Periodization(期分け)
試合に向けてしっかりとした準備するといったステージではないことから、トレーニングに期分けは存在しません。しかし、このステージは、特にアスリート自身が初めてバレーボールに触れる段階であり、バレーボールをプレーすることが好きになるのかどうかはこのステージでどのような経験をするのかにかかっていると言っても過言ではないでしょう。それゆえ、指導者はトレーニング前には最善を尽くしてプログラムを立案し、トレーニング後には振り返りを行うことが求められます。
Training to Competition Ratios(トレーニングと試合の比率)
第一ステージでは先述した通り、楽しく参加できること、そして多様な運動経験を積んでいくことが重要視されています。こうしたことが優先されることから、具体的なトレーニングと試合の比率は設定されていません。
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