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LTAD(長期的なアスリート育成)モデルとは#1

「バレーボーラーの一貫育成メソッド」 制作の第1回です。

「バレーボーラーの一貫育成メソッド」を策定していくにあたって、まずは本メソッドの核となるコンセプト「LTAD」について解説をしたいと思います。本記事ではLTADの全体像を掴んでいただくことを趣旨に書いていきたいと思います。

LTADとは

「LTAD」とは「Long-Term Athlete Development」の略であり、”長期的なアスリートの育成”と日本語では訳されることがあり、長期的な視点に立ってアスリートを育成していくためのモデルを指します。このモデルは、各年代のアスリートが持つ成長や発達の特徴を理解し、適切なトレーニングやコーチングを提供するために設計されています。

また「LTAD」はカナダのスポーツ科学者のIstavan Balyiにより提唱され、カナダのスポーツ省がスポーツ政策としてカナダ全州において導入され、その後は世界中の多くの国やスポーツ団体でも採用されるようになりつつあるモデルとなります。
(カナダでの「LTAD」の拡がりについては下記を参照)

2002年、カナダ・スポーツ省は「カナダ・スポーツ政策」を策定し(Sport Canada,2002)、カナダ全州政府がこれを承認し、さらに 2002-2005 年までの 実施基本計画を発表した。ここでの基本理念として、1)カナダ国民のスポーツ参加促進、2)国際競技力向上、3)これらを促進するためのシステム、インフラ、環境等の整備、4)スポーツ関係組織 間の連携強化、の四つをあげている。続いて2005 年、2007-20012 年版実施基本計画を策定し、ここではじめて LTAD を導入した(Sport Canada,2005)。 全州は直ちにこれを承認し、競技団体もこぞって LTADを採用することになった。今日、カナダの競技団体はほぼ例外なく LTAD を基本の育成モデルとして位置づけている

カナダ陸連の長期競技者育成計画 (LTAD)

このモデルの特筆すべき点として、国際競技力の向上を目指すトップアスリートの育成を主たる狙いとしつつも、スポーツをレクリエーションとして楽しむことに主眼を置いた一般国民のスポーツ参加促進という視点も持ち合わせている点が挙げられるでしょう。「国際競技力の向上」と「国民のスポーツ振興」という一見するとトレードオフの関係にあるように思われる課題を同時に解決する可能性を秘めているモデルとも言えます。

また、日本の競技団体ではJBA(日本バスケットボール協会)が『LTAD(Long Term Athlete Development・選手を育てる考え方)』として「LTAD」のモデルを軸として選手育成指針をHPにおいて公開しています。抽象論に終始することなく、指導現場で十分に活用できるレベルにまでブレイクダウンされており、我々の育成メソッド策定においても非常に参考となるものばかりです。

LTAD(Long Term Athlete Development・選手を育てる考え方)はバスケットボールのみならずスポーツ競技者を育成するモデルとして世界で用いられている考え方です。LTAD の理論をバスケットボールに応用し、日本をバスケットボールで元気にするための選手育成指針「Basketball for Life(B4L)」としてまとめています。

LTAD(Long Term Athlete Development・選手を育てる考え方)

LTADの特徴

さて、ここまでLTADの概要やその拡がりについて見てきましたが、この章ではもう少しLTADの特徴について詳しく見ていきたいと思います。5つに分けて解説していきたいと思います。

総合的なアプローチ

 単に技術やフィジカルといった側面だけの発達を目指すものではなく、心理的、社会的、感情的な側面も含めた総合的なアスリートの発達を重要視してします。競技力の向上だけではなく、アスリートの人間的な成長や発達といった視点も大切にしています。

段階的な発達

アスリートの成長や発達に合わせて異なる段階を定義して、それぞれの段階に適したトレーニングと指導を提供することを強調しています。例えば、初期段階では基本的運動能力の習得に始まり、段階が進むにつれて徐々にレベルアップし、専門的スキル獲得や戦術理解へと進んでいきます。

長期的な視点
短期的視点から見た成功(例:目先の勝利)だけでなく、アスリートの長期的な視点での発達や成長を重要視します。幼少期から始まる基本的運動能力の開発、そして各段階における発達と成長を積み重ねていくことが、将来のエリートアスリートや生涯スポーツに携わる人材を輩出することに繋がると考えています。

個別差の尊重

アスリート毎の個別差を尊重し、それぞれにとって適切なトレーニングやコーチング、環境を提供することを重要視します。アスリート毎の成長段階や生理的な発達の違いなどをしっかりと観察し、個別に合わせたアプローチを大切にします。

多様なスポーツ体験

特に幼少期や児童期において幅広いスポーツ体験を通じて、アスリートが異なるスポーツやアクティビティにチャレンジする機会を提供することを奨励しています。様々な経験を通じて、アスリートは多様な運動スキルを習得し、将来におけるスポーツの選択肢を広げることができます。

「LTAD」はアスリートの人生におけるスポーツ活動を包括的な視点から捉え、各々のアスリートが健全な成長や発達ができるように、適切なトレーニングやコーチング、そして環境を提供すること大切にするアスリート育成モデルなのです。

バレーボールにおけるLTAD#2 へ続きます。

▶︎雑賀雄太のプロフィール


バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。