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小学生のオーバーハンドパスは「持つ」のを大目に見るべきなのか?(1/4)「持たせるところから始める」指導の意味

以前のシリーズオーバーハンドパスのハンドリングについてで、
・初心者にオーバーハンドパスを教えるときに「持って投げる」から始めるというやり方があり、飛ばす力がないうちは「持って投げる」のは仕方がないと考えられているようだ。
・小中など下のカテゴリーで「持つ」ことを身につけてしまったプレイヤーが、カテゴリーが上がって「持たない(正しい)パス」に変えようと思っても非常に難しく、指導者もプレイヤー自身も大変苦労している
「パス」と「持ちパス」は別の動作なので、「持って投げる」を速くしても「パス」にはならない。
ということを書きました。

今回は、小学生カテゴリーの現状とそれが意味すること、そして、どのような指導が可能なのか?について解説していきたいと思います(調査をして検証した話ではありません)。
もちろん「持つ」ことはキャッチ(ホールディングと呼ばれていました)の反則です

小学生カテゴリーの現状

小学生カテゴリーには特別ルールがあり、「チームの最初のヒットに限らず全てのボールへの接触において、身体の複数箇所に連続して接触したとしても、それが1つの動作とみなされればダブルコンタクトの反則は適用されない」つまり、オーバーハンドパスでのハンドリングによるダブルコンタクトは存在しないということになっています。

これは、「オーバーパスでクリーンヒットは難しいから」初心者でもバレーを楽しめるように、クリーンヒットできなくても、つまりダブルコンタクトがあってもいいことにしようという配慮と考えられます。しかし、これがいつの間にかキャッチ反則を緩くする「持ってもいいことにしよう」になっているようで、「小学生カテゴリーではキャッチという反則は存在しない」かのような状況です。

初心者はなかなかクリーンヒットできないので、「必然的に」ダブルコンタクトが起きます。 しかし、「持ってしまう」ことに必然性はなく、持とうとするから、持つことを教えるから起きることなのではないかと考えています(教えなくてもマネするかもしれませんが)。よって、「持つことを大目に見る」ことにも必然性はなく、理由があるとしたらそれは、持つことから教えても困らないようにするという大人の都合なのではないでしょうか?

「綺麗なパスはなかなか難しくてできないから、綺麗じゃなくてもいいことにしよう=ダブルコンタクトがあっても反則を取らないでおこう」
のはずが、「綺麗なパスが難しいから、綺麗なパスっぽくするために持たせよう」「綺麗なパスまではたどり着かないから、持ってもいいことにしよう」「基準を緩くするんだから、ハンドリングのルールはどうでもいい」になってしまっているのではないかと思われます。

「持つことから教える」ことが意味すること

確かに、上級者はハンドリングだけで絶妙なボールコントロールができ、その微妙な手の使い方こそオーバーハンドパスの究極のゴールなのかもしれません。そういう思いが「初心者には、まずハンドリングを教える」「そのためには、持って投げるから始める」ということにさせているのかもしれませんが、初心者にとても難しいことを要求するばかりか、間違った感覚をつかませることになっているのは非常に残念だと思います。バレーをする子どもたちを犠牲にしているということではないでしょうか?

そこには「持って投げるを速くすればパスになる」という間違った認識があり、「筋力が足りず、まだ十分速くすることができない、発展途上にあるんだ」ととらえられているのかもしれません。しかし、ずっと持ったままのプレイヤーがとても多く、一部に「持つことも持たないこともできる」「審判の判定を見て切り替えることができる」別の技術としてどちらもできる選手がいるだけです。そのことが「発展途上という問題ではない」ことを証明していると思います。

持ってしまうと、ボールをとらえた位置と出す位置が変わってしまうので、「どこでとらえればどの方向に飛ぶか」という重要な感覚が身につけられなくなります。それはプレイヤーの成長にとってとても大きなマイナスになると考えています。「ボールの下とはどこか」「ボールはどうやって飛ばせるのか」という最も基本的な感覚を間違って学習してしまうということです。

ハンドリングの原理は「手がバネになる」ということで、それは「適度に固めて何もしない」ということです。そのような「受動的に起きること」を教えるのは難しくて、それを「能動的にやる」やり方として教えられる(教えなければならない)という勘違いだと考えています。 なので、教えるとかえって難しくなったり、間違ったことを教えたりということがおきます。少なくとも、「持って投げる」を速くしても「手がバネになる」というハンドリングの感覚はつかめません。

「小学生は筋力が弱いので、持たないと飛ばせない」のか?

 「持たせないと飛ばない」と思っている指導者は多いと思いますが、逆になぜ「持つと飛ぶ」と思われてしまうのでしょうか?

「持つ」ことは手(指と手首)の弾性エネルギーを使えなくしますから、利用できるエネルギーが少なくなり、より飛ばせなくなるはずです。それにもかかわらず「持った方が飛ばせる」としたら、飛んでくるボールのエネルギーが大きいため、一端それを吸収して止めた方が飛ばせるということかもしれません。つまり、体、筋力に対して相対的にボールが重すぎるということではないでしょうか?

ソフトバレー、ミニバレーのボールやビーチボールでオーバーハンドパスをさせてみれば、「持った方が飛ばせる」ということはなくなり、「弾く感覚」はつかみやすいということは簡単にイメージできるでしょう。

パスと持ちパスでは、ハンドリングだけではなく「体幹・下肢の力を使うタイミング」が違うので、「持って投げる」を体で覚えることは「飛ばすための体幹・下肢の使い方」を間違って学習してしまうことにもなります。ハイセットを飛ばすには一気に全身の力を使う、つまり「全身の各部位の力を使うタイミングの調和」が重要なのに、それを間違って学習してしまうということはとても大きな損失になると思います。

以上、小学生バレーの現状と「持たせるところから始める」指導が意味することについて説明してきましたが、それでは「どのような指導が可能なのか?」これについては次回、詳しく説明したいと思います。

小学生のオーバーハンドパスは「持つ」のを大目に見るべきなのか?(2/4) 「持たせなくても大丈夫」に続く

バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。